今回の「一言もの申す」は、富士通が注力するコンサルティング事業の戦略についての発表会見を機に、「事業戦略を発表する企業は数値目標を明示せよ」と申し上げたい。
富士通コンサルティング事業の真の狙いとは
まずは、富士通の話を紹介する。同社は6月26日、コンサルティング事業の戦略について都内で発表会見を開いた。2024年2月にコンサルティング事業ブランド「Uvance Wayfinders」を立ち上げ、2025年4月にはリーダーシップチームを中心とした専門組織を新設して、このほど事業戦略を発表した形だ。

富士通 執行役員副社長 CRO コンサルティング担当の大西俊介氏
今回の発表内容と専門組織の新設については、それぞれリンク先の情報をご覧いただくとして、ここでは会見でオープニングトークを行った同社 執行役員副社長 最高収益責任者(CRO)コンサルティング担当の大西俊介氏の発言を紹介する。
「Uvance Wayfindersを立ち上げて1年4カ月ほどが経ち、富士通が進める変革の動きと共にUvance Wayfindersの取り組みも拡充を図ってきた。オープニングトークとしてぜひお伝えしたいのは、私自身がこの事業責任者として当初からこだわってきた3つのポイントだ」
「1つ目は、子会社のような形ではなく、グループとして11万人の社員が働く富士通本体の中で活動するコンサルティングチームであることだ。これにより、将来的にはこの巨大な組織の最前線でお客さまとさまざまなやり取りを行っているところにまで、コンサルティングのケイパビリティーをしっかりと浸透させていきたい」
「2つ目は、当初からグローバルに事業展開していくことだ。当社に限らず日本企業はまず日本からスタートしがちだが、われわれは当初からグローバルの主要拠点で組織を設け、グローバルチームとして活動している。このグローバルでの事業推進に今後も一層注力していく」
「3つ目は、今後コンサルティング事業をさらに推進していくために、グローバルチームに本物のリーダーを迎える必要があったことだ。この点については、4月に新設した専門組織によって新しいリーダーシップチームが出来上がった」
上記の大西氏の発言を聞いて感じたのは、同氏が描くコンサルティング事業の狙いは、富士通がビジネスおよびマネジメントにおいて進めている変革をさらに後押しし、加速させることにあるということだ。コンサルティングを新規事業として立ち上げるといったレベルのものではない。
ただ、Uvance Wayfindersなので、建て付けとしては富士通のデジタルトランスフォーメーション(DX)支援事業「Fujitsu Uvance」(以下、Uvance)を一層推進するためのサービスだ。だが、Uvanceこそが同社のビジネスモデル転換の成否、もっと言えば同社の存亡をかけた取り組みだけに、それを後押しするコンサルティング事業が非常に重要な役割を担うことになるのは明らかだ。同社におけるUvanceの重要性については、2024年9月19日掲載の本連載記事「富士通はビジネスモデルを変えられるか」で解説しているので参照していただきたい。
今回の会見を聞いて、富士通におけるコンサルティング事業の意味や狙いについては改めて理解したつもりだが、筆者が気になったのは、事業戦略の発表会見においては本来欠かせない数値目標が示されなかったことである。