オーティファイ、要件とテストの属人化をAIと人の総合力で解消

加納恵 (編集部)

2025-07-03 10:27

 AIを活用したノーコードのテスト自動化ツールなどを提供するオーティファイは7月2日、事業戦略説明会を開催した。開発プロセス全体の生産向上を目指す新たな戦略を発表すると同時に、サービスの刷新や進化版の内容について説明した。

 オーティファイは2016年に創業。2019年からソフトウェアテストの自動化に関する事業を開始し、現在、約20カ国の企業で採用が進んでいる。2024年には「Human」をテーマにリブランディングを実施。ソフトウェアテストの自動化を主要な事業に据えていたが、リブランディング以降は、ツールの提供に加え、顧客の内製化やAI活用による生産性の向上まで、コンサルティングを含めた支援をしている。

 オーティファイ 代表取締役 最高経営責任者(CEO)の近澤良氏は「日本のIT業界における課題は人手不足。IT人材は常に業務に追われており、人材の確保が急務であることは以前から声高に言われてきた。そうした中、AIの適用が進み、コードの大部分をAIが作成する時代に突入した。しかし、AIを上手く使えるか、使えないか、また適用できるものとできないものがかなり明確に見えてきた」とAIの現状を説明する。

オーティファイ 代表取締役 最高経営責任者(CEO)の近澤良氏
オーティファイ 代表取締役 最高経営責任者(CEO)の近澤良氏

 こうした状況を踏まえ「ソフトウェアの開発プロセスでは、『このコードを書いてほしい』など、閉じられたスコープにおいて、AIはかなりの効果を発揮するが、要件定義とテストの部分は人手に依存しているところが大きい。このボトルネックになっている要件定義の部分にもAIを適用し、全体の生産性を大幅に向上させるサービスを用意していきたい」と今後の戦略を明かした。

開発のボトルネックになっている要件定義の部分にもAIを適用する
開発のボトルネックになっている要件定義の部分にもAIを適用する

 サービスについては、2024年にリリースした「Autify Genesis」の進化版となる「Autify Genesis 2.0」を発表したほか、ノーコードテスト自動化ツール「Autify NoCode」の進化版となる「Autify Nexus」、テスト自動化導入支援・品質保証サービス「Autify Pro Service」の刷新などを用意する。

サービスの刷新や進化版の内容について発表した
サービスの刷新や進化版の内容について発表した

 Autify Pro Serviceは、AIによるテスト構造化と現場自走化を支援するもの。2024年にリリースしたサービスでは「多くのプロジェクトにおいて80%以上の自動化を実現できた」(近澤氏)としており、今回、AIネイティブな品質保証(Quality Assurance:QA)伴走サービスへと刷新した。

 AIと品質のプロの力で、開発組織の品質保証体制を抜本的に再設計することが狙い。ツール導入やテスト設計支援にとどまらず、開発現場でAIを活用しテスト業務を自走できるよう再現可能なプロセスと改善サイクルの定着まで、(1)業務の棚卸しと標準化、(2)AIの業務活用整備、(3)AIによる改善サイクルの定着、自律推進――の3つのフェーズで支援する。

 Autify Nexusは、2019年にリリースしたAutify NoCodeをオープンソースや新たなフレームワークの台頭、大規模言語モデル(LLM)の進化といった市場環境の変化に合わせてアップデートしたもの。AIエージェントが自然言語を使ったチャットを通じて、テストを作る、自動化する、運用するといった一連の作業を担う。

 仕様書を基にテストを作成できるほか、AIによるテストの自動修復にも対応。クラウド/ローカル/オンプレミスなど幅広い実行環境での使用が可能だ。

 既に先行ユーザー向けに提供しており「ローカルで回せるので、テスト実行数無制限でどんどん回せる」「QAチームと開発チームで気軽にシナリオを作れる場になりそう」などの声が挙がっているとのこと。「QAチームと開発チーム、コードを書く人と書かない人との溝を埋める点でも、かなりお役立ちができている」(近澤氏)とメリットを挙げる。

 今後は、テストの設計から分析までをAIで一気通貫にしていくための機能を実装していく予定。「テスト自動化だけを切り出してやってきたAutify NoCodeから、AIを使い、自動化だけでなく、設計やさらに幅広い工程に対して、AIエージェントでカバーしていくのが、Autify Nexusの進化のビジョンになっている」(近澤氏)とした。

 一方、仕様書からテストを生成し、自動化するAutify Genesisに対し、Autify Genesis 2.0は仕様とテストを起点に大規模システム開発を効率化・高速化するAIエージェントシステムだ。

 仕様とテストの不整合に起因する問題を解決し、属人化・ブラックボックス化した大規模システムのコードから仕様書を生成。一気通貫でテストシナリオを作成し、検証を回せる状態にするという。

 「Autify Genesisを提供する中で、きちんとした仕様書があれば高い品質のテストを生成できることが証明できた。ただ、仕様書が一部分しかなかったり、全てを網羅していなかったりという現状があることも分かった」(近澤氏)と見えてきた課題を明かす。

 Autify Genesis 2.0は、ソースコードを解析し、仕様書やそのほかのドキュメントを作成することで、テストを生成する。「開発に関わる全てのコンテキストを理解していくことで、要件定義やテストといった、人への依存度が高かった業務のボトルネックの解消に取り組む」(近澤氏)とした。

 近澤氏は「IT人材の不足を、人に依存しすぎない、属人化しすぎない状況を作るAIネイティブなプロダクトで、複雑なエンタープライズシステムの開発に無限のスケーラビリティーを提供していきたい。私たちはAIが全てを代替するとは全く思っていない。人とAIの総合力、人の生産性を高めるためのAIツールでこの開発を次のレベルに押し上げていく」とした。

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