みんなの銀行が新たな事業方針、BaaSのさらなる拡大や法人顧客の開拓などを柱に

國谷武史 (編集部)

2025-07-04 17:03

 ふくおかフィナンシャルグループのみんなの銀行は7月4日、都内でメディア向けの事業説明会を開催した。新たに「みんなの銀行 2.0」と題する事業方針を表明し、バンキング・アズ・ア・サービス(BaaS)のさらなる拡大や法人顧客の開拓などを柱に位置付ける。

みんなの銀行 取締役頭取の永吉健一氏
みんなの銀行 取締役頭取の永吉健一氏

 説明会では、まず取締役頭取の永吉健一氏が2021年5月の事業開始から4年目となった2024年度事業を振り返り、パートナーと同行それぞれのサービスを組み合わせた独自性の高い個人向け金融サービスの広がりを報告した。例えば、同年10月にパーソルテンプスタッフと更新系API連携による給与の前受けサービス(提供開始は2025年5月)を発表するなど、新たに7社のBaaSパートナーの基本合意書を締結。各社との多様な新サービスを順次展開している状況にある。

BaaSパートナーの状況(説明会資料より)
BaaSパートナーの状況(説明会資料より)

 同行自体としても、2024年5月に開設口座数100万件を達成し、2025年5月末時点で130万件にまで拡大した。同行は、1980年代生まれ以降の「デジタルネイティブ世代」をメイン顧客に位置付ける。現在は顧客の68%が15~39歳を占め、全国分布も首都圏が34%、関西圏が18%、グループの拠点となる九州圏が14%だという。永吉氏は、「既存の銀行の顧客は大半が40代以上だが、当行は10年後の未来の顧客を育てるというコンセプトであり、その目標通りに(40代未満の)若いお客さまを獲得できている」と述べた。

顧客基盤の状況(説明会資料より)
顧客基盤の状況(説明会資料より)

 預金額は2025年3月末時点で約331億円、当座貸し越し額が同23億4000万円、貸出金(ローン)が同228億円となり、銀行業本来の事業としても順調に成長していることを示した。従業員数も300人を超え、直近1年で66人の増員となった。「半数近くがエンジニアやデータサイエンティストなどであり、システムやサービスなどを内製開発することで、できることが増えている」(永吉氏)とした。

 永吉氏は、同行にとってこれまでの4年間が事業基盤の構築やBaaSという新しいビジネスモデルを展開していくステージであり、全国のデジタルネイティブ世代の顧客獲得やBaaSパートナーとの拡大で成果を得られたとした。ふくおかフィナンシャルグループとして2027年度末を目標とする「第8次中期経営計画」を策定したことを踏まえ、同行でも「みんなの銀行 2.0」を策定し、2027年度末までを「APIエコノミーで広がるデジタルバンクの第二創業期」と位置付ける。

新事業方針の全体像(説明会資料より)
新事業方針の全体像(説明会資料より)

 永吉氏は、過去4年間で同行がデジタルネイティブ世代の顧客ニーズを踏まえたユーザーインターフェースやユーザー体験(UI/UX)とAPIを通じたBaaSによって伝統的な金融サービスを“Re-Design”したと述べる。新方針では、これを進化させる金融の“Re-Define”を打ち出し、顧客ニーズに即した独自サービスの強化、法人顧客の開拓を通じた顧客基盤の拡大、BaaS事業のさらなる広がりに取り組むという。

 独自サービスの強化では、ローンサービスや複数口座の保有、ウェブ3ウォレットおよびステーブルコインのビジネス展開などを挙げる。ここでは同日、Solana Japan、Fireblocks、TISとの4社でウェブ3ウォレットとステーブルコインの事業化に向けて共同検討を開始すると発表した。また、7月中旬から24時間対応の口座開設でマイナンバーカードによる公的個人認証を導入し、セキュリティを確保して申し込みから最短5分で口座開設をできるようにする。

市場でのポジショニング(説明会資料より)
市場でのポジショニング(説明会資料より)

 法人顧客やBaaS事業の拡大は一体的に推進する。永吉氏によれば、全体で24社のBaaSパートナーの個人顧客総数が1億2000万人(単純合算)に達するとし、引き続き多様な業種のBaaSパートナーと独自性の高いサービスを広げていくことが同行の収益化につながるとした。また、ECなどのプラットフォームを持つBaaSパートナーには、個人顧客だけでなくプラットフォームに参加する法人も存在する。永吉氏は、こうした法人が同行にとって潜在的な顧客になるとし、まずは中小企業や個人事業主を中心に法人口座の提供や預金・為替取引などのサービスを企画、将来的に資金管理や与信関連などにも広げる構想だという。

ビジネス拡大の方向性(説明会資料より)
ビジネス拡大の方向性(説明会資料より)

 永吉氏は、BaaSのビジネスモデルが非金融系企業からも大いに注目されるようになったと述べる。全国展開する企業からの問い合わせが多い中で、最近ではグループ拠点の九州の企業からもニーズが生まれているとし、福岡銀行などグループ各社の連携による「地域型BaaS」の展開も検討していくとした。

 また5月には、同行がアクセンチュアやGoogle Cloudらと共同開発するフルクラウド型コアバンキングシステムが三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)に採用されたことも発表された。同行は2023年にシステムの外部販売を開始したが、MUFGの採用が初めてになる。永吉氏は、「開始当初は海外でデジタル銀行へのニーズが高く、東南アジアなどで営業活動をしたが、採用実績を問われると当行しかなく展開が難しかった。そうした経緯からMUFG様での採用はこれ以上にない(素晴らしい)実績。システム外販の追い風になると期待したい」とコメントした。

従来の勘定系システムとフルクラウドシステムの違い
従来の勘定系システムとフルクラウドシステムの違い

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