駅で突然350人がDANCE!えっ!それって、広告なの?

ビジスパ事務局 2011-03-03 13:30:00

 朝のラッシュアワー。駅を行き交う人々。そこに、突然ノリの良い音楽が。ひとりの男が音楽に合わせて踊り出す。と、2人、4人、10人と、最初の男のまわりの人々も、訓練された振り付けで踊り出す。次々と奏でられる曲。優雅な曲やアップテンポの曲や。あっけに取られる人や、ついつい楽しくなって一緒に踊り出しちゃう人も。

ダンサーはついに350人にも膨れ上がる。やがて、クライマックスを迎え音楽が止むと、三々五々、四方八方に散っていくダンサーたち。今見た「分かち合わずにはいられないイベント」を、携帯で電話したりメールしたりしている人々。最後に、Life's for sharing(分かち合うべき人生or毎日を分かち合おう)とのメッセージが表示され、T-Mobile社のロゴマークで終わる。

ロンドンのリバプール・ストリート駅を舞台にしたこの映像は、YouTubeで視聴され続けている。
観てみたい方は、こちら


この3分ほどの映像は、T-Mobile社のテレビCMとして2009年の1月に放映された。その年のカンヌ国際広告祭では、グランプリこそ逃したものの、FilmとDirectのゴールドなど合計8個もの賞を受賞している。

T-Mobileは英国3位の携帯キャリア会社。Life's for sharing(分かち合うべき人生or毎日を分かち合おう)という新しいスローガンを体感してもらうための作品だ。このCMを企画した会社によれば、「"Life's for sharing"。我々は、それをただ人々に伝えるのではなく、証明しなければならかった。」という。だから、「我々は、人々がただシェアせずにいられなくなるような記憶に残るライブイベントを創り出そうと決めた」。

そうして、制作スタッフは、事前にライブ・ダンスイベント出演者をWEBで募集、10,000人をオーディションし、350人を選出。8週間の準備の末に、10の隠しカメラで撮影。その後、24時間で編集し、テレビCMとして放映した。その結果、大きな話題を呼び、T-Mobile社の売り上げは、前年同期比52%もアップしたという!

 
■キーワードは、「ソーシャル」。広告も、"伝える"から"つなげる"へ。

昨年あたりから、広告界を席巻している感のあるキーワードに「ソーシャル」がある。

ソーシャルには「社会的な」とか「社会奉仕の」といった意味もあるが、今回のは、「社交の」の方の意味だ。この意味のソーシャルが広告界で注目されているのは、TwitterやFacebookに代表される"ソーシャル・メディア"が爆発的に広まったから。特にFacebookは登録者が5億人を超え、これを人口と考えると、中国、インドに次いで世界第3位と考えられるというのは、有名な話だ。

テレビ局や新聞社が「伝える」ことを受け取っているだけの時代から、ソーシャル・メディア上で「つながる」ことを楽しむ時代になると、広告の姿も自ずと変わってくる。従来、広告は、企業が伝えたいメッセージを、「企業から人へ伝える」ものだった。だが、今や、人と人を「つなげ」、メッセージが「人から人へ伝わる」ような広告が必要となって来ている。T-Mobileもそうしたソーシャルの流れの中で、人が人へ伝えたくなるライブイベントを創出することで、Life's for sharingというメッセージが「人から人へ伝わる」ようにすることに成功している。  

これを私生活に当てはめてみよう。

同じ会社や同じ学校の人とのつながりだけではなく、ソーシャル・メディアでつながることで、思いもよらなかったつながりが生まれている。ソーシャル・メディアは、もちろんデジタルを中心としたものだ。だが実は、「人と人とのつながり」という、とてもとても「アナログ」なもので出来ている。

「必要な情報」という点で見ても、「人と人とのつながり」は大きなチカラを持っている。もちろん今や、「情報」といえばインターネットというイメージもある。インターネットの登場により、人がアクセスできる情報の量は、10年前の400倍以上になっているというデータもある。だが、いったん何かのカテゴリーの情報を深く欲しいと考えると、「人と人とのつながり」に勝るものはない。

インターネット上の情報ほど便利なものもない。相当なところまで、オンラインで調べることが出来る。それでも、そのうえで、最後は、コミュニティなのだ。「人と人とのつながり」、ソーシャルな情報ではないと分からない部分は、まだまだある。

オンラインのソーシャル・メディアの在り方が、リアルの「社交」のカタチまで変えつつある。これからの「ソーシャル」=「新しい社交」。仕事でも私生活でも、はずせない要素だと思うよぉ。  


オルスタット佐藤
多くの国際広告賞審査員を経験した国際派クリエイター。海外広告に関する知見は日本でもトップクラス。広告会社勤務の傍ら大学講師も勤める。「広告界で培った知見、広告の持つ技やスキルは、畑違いの仕事や私生活にも活かせる」というのが持論。ビジスパでは、謎の優秀広告を紹介するメルマガ「“謎の広告”探偵団 - 世界の広告スキルを学んで、仕事を私生活を充実させよう! -」を配信中。

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