学歴ロンダリングは効果ある?

ビジスパ事務局 2011-05-20 10:00:00

2年前ほど前から、学歴ロンダリングという言葉をよく聞くようになった。
ロンダリングと言えばマネーロンダリングが有名だが、要するに、より高い大学の修士課程に進学することにより、最終学歴を上書きする行為だ。
ロンダリングなんてまったく意味が無いという意見がある一方で、院で真面目に勉強していればそれなりに有効だという声もある。実際のところ、企業はロンダリングをどう見ているのだろうか。広い意味では、社会人になってからの海外留学もそうだと言えるが、ここではあくまで、学部からの他の国内大学院への進学を対象として考えてみたい。

結論から言うと、普通の人事担当なら、きちんと履歴書の出身学部を合わせて評価するので、文字どおりに東大院とか東工大院卒という扱いに格上げされるわけではない。合コン相手や田舎のお母ちゃんには喜ばれるかもしれないが、キャリア的に見れば、完全に学歴をロンダリングできているわけではない。

ただし、理系のロンダリングに関して言えば、他にもっと重要なメリットがある。

メーカーの技術職採用は、今でも学校推薦制度が多い。上位~中堅大学が推薦制度を維持したがっているので、会社の採用方針とは関わりなく幅広く残っているのだ。そして、大学にもよるが、推薦枠がある大学の場合、勝手に自由応募での採用は行えないケースが少なくない。

彼らがそこまで学生の進路を管理したがるのは、大学と企業の信頼関係を維持するためだ。企業は、大学の実績をもとに、求人枠をプレゼントして優先的に採用する。大学は、一定水準の(成績や熱意のある)学生を推薦することで、来年度以降も引き続き枠を確保できる。両者の関係を維持する上で、信頼関係の維持は重要なのだ。

さて、ここで、たとえば偏差値55くらいの普通の私大から東大工学部の院に進んだ学生がいたとしよう。彼が教授の推薦を貰い、東大に送られた求人枠に応募した場合、企業はどう判断するだろうか。

「学部は東大じゃないからダメです」とは、信頼関係上、思ったとしてもなかなか言えないものだ。しかも、競争率100倍以上となることも珍しくない自由応募枠と違い、競争率1.0倍割れも珍しくない学校推薦枠での話だ(学生のメーカー離れもあり、必ずしも全大学が求人枠数を推薦してくれるわけではない)。箸にも棒にもかからないレベルなら仕方ないが、「自由応募なら絶対にパスしてないだろうな」というレベルの人材が、割と普通に錚々たる大企業に受かってしまうケースは珍しくない。

というわけで、メーカーの技術系職種に、学校推薦制度を利用して就職するのであれば、ロンダリングは極めて有効な手段である。

ひょっとすると「そんなのはインチキだ」とか「いずれ規制されるんじゃないか?」とか思ってる人もいるかもしれない。たぶん、今後も理系のロンダリングに関しては、今まで通りズルズル行ってしまうと思われる。というのも、実際のロンダリング経験者についての社内での悪評のようなものを、筆者は聞いたことが無い。個人的な印象では、むしろ地道に頑張っているなという印象すらある。

はっきりいえば、既に学校推薦制度は形骸化しつつあって、少なくとも大学の側で、きちんとセレクションをした上で推薦している学校は多くない。成績や資質など考慮せず、早いもの順やくじ引きで推薦者を決めるのは良くある話。とても修士レベルにない教え子を、平気で推薦してくる上位校は珍しくない。そういう現状で、他大学から一人でやってきて2年間頑張った生徒を「大学が違うから」と言う理由だけで排除する動機は、今後も企業はもたないと思われる。


ポイント:
理系から理系の院に進学し、技術職での推薦枠を利用するのであれば、学歴ロンダリングは少なくないメリットがある。ただし、あくまで学校推薦という新卒採用の一段階においての話であり、文系や自由応募を検討しているケースには当てはまらない。


※同じ技術系でも、研究職への応募はハードルが高く、ロンダリングはほぼ通用しない。

城 繁幸
人事コンサルティング「Joe's Labo」代表取締役。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種メディアで発信中。代表作『若者はなぜ3年で辞めるのか?』『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』『7割は課長にさえなれません 終身雇用の幻想』等。ビジスパではメルマガ「『サラリーマン・キャリアナビ』★出世と喧嘩の正しい作法」を執筆中。

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