生産のスケーラビリティに依拠しないファブレスという競争~株式会社Cerevo

ビジスパ事務局 2011-05-26 13:00:00

 株式会社Cerevoは、ビジネスモデルからすると、工場を持たないメーカーと位置付けられます。つまり、生産スケールメリットやハード側での製造能力をマージン獲得の競争資源としていません。生産特化した海外(厳密には国内に依頼してもいいが、残念ながら海外発注するのが標準となってしまっている)のメーカーに作るところは依頼し、企画だけ社内で行うという言わば企画デザインの会社との位置づけです。

この手法のメリットは、生産側の設備投資リスクを負わないために、大きく売れた場合の巨大なマージン機会を放棄する代わりに、手元組織や資本を小さく出来ることにあります。つまり、ビジネスリスクを小さめに抑えられます。

同アプローチでの世界的な成功事例として近年挙げられるのは、言わずもがなでアップルです。同社は、企画デザインからは垂直性の高い設計をしていますが、ソフトウェアと製品デザインを除いた各種部材は一般調達の出来る標準品を用いています。一部特許のかかる癖のあるものは内製しているものもありますが、製品全体での割合はわずかです。

アップル社の利益の源泉を端的にまとめると以下のようになります。

1)企画デザインに企業資産を絞り込んでの資本サイズのコンパクト化
2)高いデザイン性による高い販売価格の維持
3)ソフトウェアも含めたユーザーの囲い込みと納得感醸成の上手さ
4)音楽配信の早期の大規模開始などサービスとハードの高い統合度
5)絞り切った製品ラインの大規模生産による調達及び製造原価の低減
6)グローバルにまとめて製品展開出来る組織販売体制

これらの要因が、高いマージンと規模の両立を可能としています。つまり、製造能力の高さや工場設備の優秀さではない勝負を仕掛けていると言えます。

株式会社Cerevoの立ち位置はこのアップルの手法に似ています。上記の要因と比較すると下記のようになります。

1)企画デザインに企業資産を絞り込んでの資本サイズのコンパクト化
2)目を見張るデザイン力はないが無駄なコストまではかけていないバランス感
3)ソフトウェアとハードの高い親和性による使い勝手のよさ
4)各種ネットサービスへのアクセスの容易性
5)製品ラインは展開余力の問題があるため絞り切ったのではなく結果論的
6)グローバルな販売体制は無い

というところで、志向は似たものの、実現レベルにはまだ差があるという状況です。また競争優位性に繋がっているのは、主に3と補助的な製品価格の妥当性に繋がるところにおいて2が該当します。

今後の成長余力の面で、海外に伸ばしたいとの話が出ているのは、6を実現することによりレバレッジがかかりやすくなり各種資産の効率性が平均して高まることと、その前段環境として、大手のネットサービスがグローバル志向を高めていることから対応機器として捉えると各国での販売条件が機能面では少なからず整備されている状況にあることに求められます。つまり、流通販売をクリアすれば仕様面での変更はあまり多くは必要ないことが期待されます。

今回のインタビュー(※)において、製品のデジタル化傾向が強まることで水平分業型の産業構造に近づいているとのやりとりがありますが、メディアサービスがインターネットの世界的な普及により一部が国際水平分業的になっている動きをメーカーとしてどのように捉えるかという環境適応戦略を模索する形とも捉えられます。


(※)ビジスパメルマガ「トップの決断」vol.008、vol.009で、株式会社Cerevo 岩佐琢磨代表取締役へのインタビューを掲載。

渡辺 聡
神戸大学法学部卒業後、大手SIベンダー、インターネット企業を経てソフトウェア、ネットサービス分野を軸としたコンサルタントとして独立。ソフトウェアサービス、SI分野からインターネットサービスまでを主にカバーしている。株式会社シンクーにて社外取締役(2007年~2008年末)。資金調達後の同社に対し、経営全般を支援。2008年5月、企業の経営支援、資本調達、またバイアウトやターンアラウンドを行う「株式会社 企(くわだて)」を設立。現在、同社代表取締役。ビジスパではメルマガ「トップの決断」を配信中。

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