世に出回る投資信託を斬る!:日興ハイブリッド3分法ファンド毎月分配型

ビジスパ事務局 2011-07-07 10:00:00

今回はなぜ売れているのかわからない投資信託を紹介します。「日興ハイブリッド3分法ファンド毎月分配型」です。

2010年10月に運用を開始、残高3000億円になったら買い付けを一時停止するということですが、既に6月7日時点で、2251億円という驚異的な売れ方をしています。しかし、この投信、中身を見れば見るほど、売れていることが恐ろしいことと感じます。

まず商品名になぜハイブリッドとついているのかがよくわかりません。ハイブリッドとは「雑種」とか「混血」などの意味があります。ハイブリッドカーという言葉なら、みなさんもよく聞いたことがあるでしょう。あれはガソリンと電気の両方を兼ね備えた自動車を指しています。

金融の世界では、株と債券の両方の性格を兼ね備えているものをハイブリッドプロダクトといいます。性格が曖昧なので、どういうときにどんなリスクが発生するのか、どういう動きをするのかを想定することが難しい上、流動性が低いので値段がつきにくいので売りたいと思ったときに売れないことがあります。このような複雑な商品を扱うのは、プロ中のプロの世界です。

さらに3分法ということなので、3つの資産に投資していることがわかります。結論から言うと、この3つの資産が強烈にゲテモノで、どれ一つとっても「ワォ!」と叫びたくなるものです。今までキワモノの王者だった某社の「ハイイールド債券ファンド」を簡単に凌駕してしまいました。

まず、3分法の一つがハイイールド社債(高利回り社債)。モデルポートフォリオを見ると55%と半分以上を占めています。特徴は金利が高いこと。なぜ金利が高いかというと、組み入れている社債のほとんどが米国の信用度の低い新興企業や財務体質の悪い企業が発行している債券(ジャンク債)なので、高い金利をつけないとだれも買ってくれないからです。それでも米国では活発に取引されていて認められている金融市場なので当然入れてもいいのです。入れてもいいのですが、せいぜい1~2割程度と考えるところをどーんと入れている。

ちなみに、ジャンクとは紙くずという意味。これが格付け別構成比にはっきりと出ています。4月末現在では、BBが15%、Bが60%、そして何とCCCが20%以上も組み入れられているのです。投資の基準となる格付けの世界では、BBBまでが投資適格債、BB以下は投機的債券となるので、通常ならBBBまでのもので構成します。とはいえ、運用者側から見れば、割安なBBをどの程度いれるかというところに投資妙味があります。

不動産を例に説明してみましょう。たとえば住所で東京の大手町という地名がつくところはとても高い。ところが、大手町から少し歩いて橋を渡った神田錦町になると安くなる。便利さでは何も変わらないのに川を超えただけで、神田錦町という名前になるだけで安くなる。神田錦町が格付けの世界ではBBです。不動産投資の場合、大手町とほぼ同じ価値の神田錦町の土地をどの程度買えるのかそこに運用者側の腕が試されるのです。

しかし、このハイイールド債は投資妙味のあるBBより下のBがメインで、CCCまでもが入っている。CCCとなると、不動産の場合は誰もが見向きもしない、不便な、イメージの悪い地域なので、いざ売りたいと思ったときに売れない可能性が高くなります。

2つ目が優先証券です。これは限りなく株に近い、株と債券の間に位置するハイブリッドです。この優先証券が入っているからハイブリッドという名前をつけたのかもしれませんね。銀行や保険会社が自己資本比率を充実させるために発行していますが、2013年からは制度が変わり自己資本として認められなくなる可能性があります。そうなると金融商品としての流動性がなくなる可能性があるので、普通なら投資先としては選べない、非常にリスクの高い商品です。しかし、なぜこれが入っているのか、答えは金利が高く、値段が安いからです。

3つ目が不動産等関連商品です。REITは米国のもので約6割、そしてMLPが約4割となっています。またこのMLPがすごい。あまり聞いたことがない名前だと思いますが、これは油田やガス田を掘ったりするエネルギーのインフラ事業で、その投資判断にはきわめて高度な専門性と経験が求められます。それは最終的に油田などが出てこないことには話にならないものだからです。

そもそもこの「日興ハイブリッド3分法ファンド毎月分配型」には2つのコースがあって、最もお金を集めているのが「新興国通貨戦略コース」です。これは金利の高い通貨を買って、金利が低い通貨を売るという、つまりロングショートをしています。レバレッジをかけているのと一緒でリスクが非常に高いと言えます。

商品内容を見ると、「なんじゃこりゃ」という言葉しか出てこなくて、ある意味あっぱれとも言えます。

参考までに、販売手数料は3.675%、信託報酬は1.995%です。販売会社は投信を売って手数料を稼ぐのが仕事です。そのためにも売れるものでなければいけません。売るためには人気の毎月分配型にしないといけないし、かつその分配金が高いものではないといけません。だから、毎月170円も分配金が出るこの投信をつくったのでしょう。しかし、どう見ても個人が手を出すような中身ではありませんし、この170円がいつまで続くのか疑問です。何も知らない個人が買っているのではないかと危惧してしまいます。 

中野 晴啓
2006年セゾン投信(株)を設立、2007年4月より現職。米バンガード・グループとの提携を実現させるなどにより、2本の長期投資型ファンドを設定、販売会社を介さず資産形成世代中心に直接販売を行っている。現在、全国各地で講演やセミナーを行い、社会を元気にするための活動を続けている。 公益財団法人 セゾン文化財団理事、NPO法人 元気な日本を作る会 情報発信局長。 著書 『いそがない資産運用のススメ。』(共著)秀和システム『運用のプロが教える草食系投資』(共著)日本経済新聞出版社 『積立王子の毎月5000円からはじめる投資入門』中経出版など。2011年6月にダイヤモンド社より著書『投資信託は、この8本から選びなさい。』発売。
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1件のコメント
  • SYYA

    コメントは表面的には正しいように見えるが、結論ありきで書かれている感が否めない。そもそもハイイールド債券に限らず、クレジット商品への投資は高いクーポンからクレジットコストを差し引いた上でリスクフリーの債券と比べてアルファが出ることに妙味があるわけであって、そうした投資機会を見出すのが運用会社の仕事でしょ。相場の上げ下げはあっても、地雷を踏まないで元本が戻ってくれば良いわけですよね。それに、格付けに振り回されて”投資不適格だからリスクが高い”と思い込んでいる投資家さんがいてくれるおかげで割安なまま放置される銘柄が出てくるわけで、魅力的な投資機会も生まれるというわけです。
    優先証券は満期がある(なくてもコール日が設定されている)から”限りなく株に近い”という表現は明らかに間違いでしょ。過去のリスクとか計算できないのかな。リーマンの時に確かすごい触れたけど結局大きく戻ってきたでしょ。それ以外はほとんど債券とリスク変わらないし。規制で認められなくなっても、変わらず認められる優先証券もあるの知ってますよね。今でも2013年以降の制度変更が明らかになった今でも発行続いていますよ。
    MLPの説明も同じ。なんかどの戦略も素人が運用しているかのような表現ですね。どの市場にも必ずリスクは存在しますよね。それを抑えながらリターンがあげるのがプロの仕事。だから報酬も払っている。このファンドだけじゃなくて、短期間で相場がブレれば時価総額も実力以上に上がったり、下がったりする。
    中野さんも素人じゃないんだから、もう少し落ち着いた見方で文章を綴ったら、もっといいと思うんですけど。。。

    2011年07月29日

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