考古学はマネジメント学だ ~もし若者が考古学者になりたいと思ったら~ <2>

ビジスパ事務局 2011-09-07 10:00:00

ドラッカーは1931年、22歳のときフランクフルト大学で国際法・国際関係論の博士号を取得しました。ドラッカーは博士号を持っているかどうかについて、「博士号なんてちっとも貴重なものでなく、不必要な人にはいらないものだ。しかしこれを持っていることで仕事が進むとなれば取ればいい。博士号なんてその程度のもので、持っているからと言って威張れるものではない」と言っています。私も同感です。私は助教授から教授になるとき、徹底的にいじめられまして、最後に「博士号も持たずに教授になろうとすることが問題だ」とさえ言われました。それから2年後に取得し、無事に教授になりました。ハードルを作って私を刺激してくださった意地悪な人々に今では感謝しています。

発掘現場での著者発掘現場での著者

ドラッカーはナチスの権力掌握を予想し、1931年ごろからヒットラーに何度も取材していたことも知られています。その後英国の新聞社のアメリカ特派員となり活躍しました。これ以降『「経済人」の終わり-新全体主義の研究』をはじめ『産業人の未来』『現代の経営』など次々と本を出版しました。65歳、1974年の『マネジメント-課題、責任、実践』がベストセラーとなり、その後たくさんの本を刊行し2005年に95歳で亡くなりました。1934年にロンドンで日本絵画展を観て日本文化に興味を持って以来、大の日本ファンだったそうです。私は数あるドラッカーの著書の中で『マネジメントフロンティア-明日の行動指針』『非営利組織の経営-原理と実践』『ポスト資本主義社会-21世紀の組織と人間はどう変わるか』の3冊が好きです。

ドラッカーは資本主義社会の真っただ中を生き抜き、社会主義と資本主義のぶつかり合い、ヒットラーの国家主義もつぶさに見て、新しい21世紀以降のイデオロギーを考えていたと思います。多くの人はドラッカーは経営の神様というところで置きっぱなしにしていますが、実は経営の主たることはマネジメントで会社経営だけではないのです。

ドラッカーのマネジメント論を読んでいて「これって考古学にも応用できる」と思ったのです。そして「もしドラ」を読んで、もっとその想いは強くなったのです。

高校野球で最も重要なのは、甲子園に出て全国一になることなのでしょう。それを女子マネージャーが成し遂げられるという発想のすごさを「考古学で世界一になるためにドラッカーのマネジメント論をきちんと研究するとできる」に利用してみようと思ったわけです。

「2番じゃだめなんですか、1番じゃなければ・・・」といった政治家がいましたが、オリンピックであろうとも国内のスポーツであろうとスポーツは1番じゃなければだめなんです。2番になって「自分をほめてあげたい」なんて言うのは自己弁護か自分に甘いとしか言えません。1番と2番じゃメダルの色以上に差があるはずです。第一、2番狙いで何かをやったら2番どころか10番にもなれません。普通1番を狙っても、3,4番になるのが精一杯なんですから。

ツタンカーメンの黄金のマスクツタンカーメンの黄金のマスク

私は世界一のエジプト考古学者になろうと子供のころから思っていました。「考古学で世界一になるってどういうこと?」と聞かれます。はじめは、「ハワード・カーターが発見した、ツタンカーメン王墓を超える発見をした考古学者のことを言うんです」と言っていましたが、今は「一つや二つの大発見よりも、いくつもの大発見がコンスタントにできる考古学者で、なおかつその論文が考古学の分野だけではなく、その他の学問分野でも、またマスコミにも引用、利用される回数が最大である考古学者が世界一の人と言います」と修正しています。

一発屋じゃだめなんです。継続性、持続性がなければいい考古学者になれませんし、後輩や弟子もついてきません。考古学は一人ではできません。いろいろな分野の人が集まってチームを作るわけですから、人間関係も非常に重要なファクターです。ハワード・カーターのように融和性がない人は現在では世界一のエジプト考古学者とは言われないのです。


(※)本稿は、考古学を進めていく中でドラッカーの言うマネジメントがどう生きているかを示していく連載「考古学はマネジメント学だ」からの抜粋になります。

本記事は第2回。第1回はこちら


吉村 作治
10歳の時に読んだ、『ツタンカーメン王のひみつ』に魅せられ、エジプト考古学者となる。現在は早稲田大学名誉教授、工学博士(早大)。1964年に早稲田大学入学後、カイロ大学考古学研究所留学。念願のエジプト発掘を始め、早稲田大学人間科学部、国際教養学部教授を経て、日本初の完全インターネット大学、サイバー大学を創設し初代学長を務めた。現在、毎月エジプトに出かけ、その合間に執筆活動、講演、テレビ出演、お祭り参加等、日本中を飛び回っている。
「ビジスパ」にてメルマガ「吉村作治の週刊e-パピルス - エジプト考古学者のマネジメント学 -」を執筆中。

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※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

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