業務アプリケーションのオープンソース化とビジネスケース

飯田哲夫(Tetsuo Iida) 2005-07-17 12:39:19

オープンソースの流れは、LinuxやMySQLなどの基盤系ソフトウェアの領域から業務アプリケーションの領域へと向かいつつある。InformationWeek誌は、"Open-Source Exuberance"と題する記事の冒頭で、Documentumの共同創業者John Newtonが、オープンソースビジネスへ転じてAlfresco Software Inc.というコンテンツ管理ソフトの会社を起こしたことを紹介している。基盤ソフトも既存ビジネスに大きな影響を与えるように、業務アプリ領域でもオープンソースは大きな地殻変動を巻き起こすことになるのか。

ビジネスモデル

記事によれば、業務アプリケーション領域のオープンソース・ビジネスに有能な人材とベンチャー・キャピタル資金が流入しているという。そのビジネスモデルの典型的なものは、まず投下資金によってソフトウェアを開発し、それを無償で提供する。そしてそれをダウンロードした企業に対して、周辺サービスやメンテナンス・サービスを行うというものだ。Newtonは以下のように述べている。

More than half of the $2.5 billion spent annually on content management is for services, Newton says. It's the dependence on services revenue that makes content management such a strong opportunity for a company employing an open-source model.

つまり、ソフトウェア関連収入で儲けると割り切っているわけである。こうして見ると、オープンソースのビジネスは単なるキャッシュフローの組み換えとも解釈できる。つまり、ソフトウェア開発への初期投資をライセンスフィーとして早期に回収するのか、サービスとして中長期で回収するのか、の違いである。クスマノの『ソフトウエア企業の競争戦略』でも語られているように、多くのソフトウェア企業は成長期にはソフトウェア・ライセンスが売上げのほとんどを占めるが、成熟期になるとサービス売上の比率が高まり、場合によってはそのほとんどがサービス収入となる。

顧客企業が初期投資を嫌気するならば、ライセンスを無償にしてサービスフィーを払ってくれるユーザーベースを増やせれば、サービス収入の増加速度はライセンス販売をする場合よりも早くなる。それによって、早期に初期投資を回収していこうというロジックである。

ビジネスケース成立の条件

では、オープンソース化してしまえば、既存ベンダーを出し抜いて必ず成功できるのか。到底そんなに甘いものとは思われないが、狙いを定める上でのいくつかのポイントがありそうである。

Alfresco Softwareのケースであれば、コンテンツ管理ソフトの領域では、総売上の半分以上をサービスが占めることがポイントであった。ソフトウェア開発への投下資金をサービスで回収しようとするならば、当該領域においてサービス収入が付随する必要がある。それゆえ、サービス収入の比率がそもそも高い領域では、資金ショートに陥る前にビジネスが軌道に乗る可能性も高い。

第二に、当該アプリケーションの領域が成熟して過度に複雑化していることもオープンソースにビジネスチャンスをもたらす。そうした領域では、過剰な機能を搭載したアプリケーションがライセンス価格を押し上げ、スモールビジネスには全く手の届かないものとなる。InformationWeek誌におけるSugarCRM CEO John Robertsの言葉を引用しよう。

SugarCRM CEO John Roberts says he launched the company when vendor consolidation began to stifle innovation in the CRM market. "The barrier to entry into this market wasn't building a better application, but rather who could spend 70% of their revenues on sales and marketing. So we started looking at open-source business models," says Roberts 

クリステンセンの『イノベーションのジレンマ』を思い起こさせるが、顧客ニーズに忠実に機能向上を図りすぎたがゆえに、必要十分な機能のみを備えたオープンソースにチャンスが訪れるというわけである。

そして第三に、ユーザー側にオープンソース・コミュニティーへ関与していく下地が存在することである。これがなければ、オープンソースのオープンソースたる所以はなく、有償ソフトウェアとはキャッシュフローが異なるだけということになる。ソフトウェア開発への関与という点では、大手顧客と中小顧客で規模の分断が大きい場合に当てはまる可能性がある。ソフトウェア企業は当然、収入の過半をもたらすであろう大手顧客の声をソフトウェアに反映させるが、それが中小顧客のニーズと一致している可能性は、大手と中小での分断が大きいほど低い。そうしたセグメントにおいては、オープンソースコミュニティーへユーザーが関与してくる可能性が高いと言えるだろう。

さて、今回はここまでとして、次回には何故ソフトウェアの領域におけるオープンソース化の流れが止まらないのか、ビジネス的な観点から考察してみたい。

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