韓国人ゲーマーの死

飯田哲夫(Tetsuo Iida) 2005-08-15 23:23:06

Reutersの伝えるところによると、インターネットカフェにて50時間オンラインゲームをプレイし続けた韓国人ゲーマーが心臓発作で死んでしまったという。その韓国人がどんなゲームをしていたのかは不明であるが、オンラインゲームの世界でもMMOG(MassiveMultiplayer Online Game)と呼ばれる同時参加型ゲームは、プレーヤーをのめり込ませることで有名だ。それは、単にビジネス的な観点のみならず、今回の件が象徴する社会的問題という点でも興味深い。

MMOGとは参加型の仮想世界であり、そこには他の住人(ゲーム参加者)とコミュニケーションを取りながらの社会生活が存在している。先の韓国人は、オンラインゲームに費やす時間を増やすために仕事をやめたというが、リアルとバーチャルの世界が逆転していく人々が増えている。2004年のデータだが、Cnetの伝えるところによると、米国におけるMMOG参加者は2003年時点で既に240万人で売上が2億900万ドル、そして2008年の予測が参加者520万で、売上5億5600万ドルであるという。

MMOGの経済効果はゲーム業界の売上には留まらず、アイテムをリアルマネーで売買する市場がオークションサイトで成立したり、ゲームアイテムを獲得するための単純労働をオフショアリングするなどということまで起きている。オンラインゲームの世界を社会の縮図と見てそれ自体を研究する学者も存在する。この世界では著名なインディアナ大学のEdward Castronova教授のブログサイト"Terra Nova"では、オンラインゲームの世界のGDP算出を行って、それがエストニアとジャマイカの間くらいの規模になっていると報じている。また、以前にはオンラインゲーム"Second Life"の中に投資銀行と証券取引所を設立しようとしている人へのインタビュー記事も掲載されていた。

つまり、オンラインゲームの世界は、実験的社会であり、そこでは人々が社会生活を送り経済活動が営まれている。そしてその拡大と刺激は、リアルの世界には及ばないにしても、人々をリアルの世界から引き離すだけの力を持つに至っているわけである。

バーチャルの世界をあくまで二次的なものとして捉えるというのが常識的な判断ではあるが、我々の見る世界も所詮脳が作り出した虚像であることを考えれば、その境界は我々が思っているほどには明確ではないのかもしれない。果たしてゲームを50時間プレイし続けて死んでしまった韓国人を他人事と思って済ませることができるであろうか。

※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

2件のコメント
  • e-Tetsu

    脳とコンピュータを直結する技術は、身体障害者向けを中心として実用的な開発は結構進んでいるという記事を読んだことがあります。その技術をゲームに転用することの是非は別とすれば、バーチャルとリアルの境界が更にはかないものとなることは間違いなさそうです。

    2005年08月27日

  • Kengo

    リアルとバーチャルの区別って言えば荘氏の『胡蝶の夢』を思いだしますね。最近では映画『MATRIX』で話題になりましたが、この話は映画やゲームと相性が抜群です。

    『MATRIX』のように外部から脳に対して電気的刺激を与える装置はまだ実現していませんが、そんな装置無しにこの韓国人の精神世界では、バーチャルの方が余程リアルに感じられていたのかも。

    バーチャルで成功して、幸せな最期だったんじゃないかと
    想像したりします。
    (長くやってるだけでヘタレなプレーヤーだったかもしれませんけど。)


    エンタープライズニュースと何の関連もないコメントですいません。

    2005年08月24日

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