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Oracleのアイデンティティ

飯田哲夫(Tetsuo Iida)

2005-09-25 11:22

Oracleは、データベース・ベンダーなのかアプリケーション・ベンダーなのかと問われれば、一連の買収劇からデータベース・ベンダーからアプリケーション・ベンダーへと移行しつつある、というのが自然な見方である。しかし、その試金石はOracleの計画する"Oracle Fusion Middleware"がDB2やSQL Serverなどの他社製データベースをサポートするか否かの判断にある。

Oracle Fusion Middleware

"Oracle Fusion Middleware(OFM)"は、Oracleの一連のアプリケーション群の連携、そしてそれらのSOA化を実現するものとして位置づけられる。Oracleは、OFMでIBMのアプリケーション・サーバーであるWebSphereをサポートすることを発表したが、それをDB2にまで広げるかの判断は保留している。Larry Ellisonも、

「Oracle Fusion Middleware(OFM)で、IBM DB2やMicrosoft SQL Serverなどのデータベース製品をサポートするかどうかを考えているところだ」(ZDNetより引用

と煮え切らない。しかし、PeopleSoftやJDEdwardsの既存顧客の中には、当然DB2など他社製データベースを利用している顧客もいる。また、先ごろ買収したバンキング・システムのベンダーであるi-flexは、同社システムのDB2対応を行ったばかりなのである。

データベース・ビジネスとアプリケーション・ビジネス

データベースのビジネスから見ると、アプリケーションは補完関係にある。つまり、あるデータベースをサポートするアプリケーションの数が多ければ多いほど、そのデータベースの価値は高まる。ネットワーク効果が働くわけだ。それゆえに、データベース・ベンダーは、アプリケーション開発を行う企業に対し、そのベンダーが提供するデータベース上でアプリケーションが動くように働きかけを行う。そして、それが自社のデータベースだけであって欲しいと願うのである。

一方、アプリケーション・ベンダーからすると、よりマーケット・シェアの高いデータベース・ベンダーの提供するデータベースから対応を行いたいというニーズはある。しかし、一定のマーケットシェアがあるデータベースならば、複数のデータベースへの対応を行うことは一般的である。その方が利益を極大化できるからだ。

Oracleのアイデンティティ

さて、その議論をOracleに当てはめてみよう。Oracleがデータベース・ベンダーであるならば、買収した一連のアプリケーションはOracleのみをサポートする、ということとなる。一方、Oracleがアプリケーション・ベンダーならば、買収した一連のアプリケーションは、Oracle以外のデータベースもサポートする、ということとなる。

Oracleがアプリケーション・レイヤーに踏み出したことは、垂直統合であるがゆえに相互矛盾を抱えざるを得ない。それゆえに軸足をどちらに置くかを明確にすることが、買収効果を最大化するためには重要である。しかし、どちらに軸足を置くにしても悩ましい判断となることは間違いない。

データベースに軸足を置けば、補完関係にあるアプリケーションのユーザーをOracle陣営に取り込むことが可能となり、さらにデータベースの売上を伸ばすことが可能となるかもしれない。しかし、それは買収したアプリケーションのマーケットを狭めることとなり、また、データベースそのものが更にコモディティ化するなかで、Oracleの選択肢を狭めることとなる。

一方、アプリケーションに軸足を置けば、これまでのビジネスドメインを切り捨てることとなり、当然リスクは高いものとなる。また、一部の株主からは反発を受ける可能性もある。そして、何よりもこれまでの成功体験からの心理的な脱却の難しさがあるだろう。参考までに、ZDNetで報じられたアナリストの発言を引用しよう。

ある匿名のウォール街アナリストは、OracleがProject Fusionで複数のデータベースをサポートする可能性は低いと予測し、「Oracleがサポートを決定することはまずないだろう。データベース分野は、同社の収入のおよそ80%を占めているのだから」と指摘した。

その判断の意味するところ

他社製データベースをサポートするか否かは、目先の収益の追求や顧客の圧力のみのよって決めるべきではない。なぜなら、この判断はOracleのビジネス・ドメインを決するものとなるからだ。さて、Larry Ellisonは、Oracleをどのような会社にしたいのであろうか? データベース・ベンダーなのか、それとも、アプリケーション・ベンダーなのか。

※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

4件のコメント

e-Tetsu
コメント有難うございます。難しい選択なだけに意見も割れましたね。アプリケーションもやってるデータベース・ベンダーなのか、データベースもやってるアプリケーション・ベンダーなのか。扱う製品が同じだったとしても、この違いはかなり大きいだけに、オラクルがどうでるか楽しみです。
2005-10-02
きも子
OracleのDBベンダーというアイデンティティはゆ
るぎないものなので、当初は、他社DBをサポートし、
IT資産の減価償却完了やリプレースのタイミングで
OracleDBに切り替えを促すのでは?と思っています。

買収にかけた費用の回収という意味だと、

1.買収で囲い込んだ顧客からの新たなビジネス
2.既存ビジネスとのシナジー

が必要で、1を実現するためには、当初は他社DBを
サポートし、顧客を囲い込み、次に既存ビジネスとの
シナジーを考える。その1つとして、将来的には、可
能なものは、価格などである程度のインセンティブを
与えてOracleDBに切り替えてもらう。そんな感じだ
と個人的には思っていますが。。。

どうなるのでしょうかねぇ?
構造改革がIT業界にも起こると面白いですね!
2005-09-28
Kengo
Oracle Fusion Middleware(OFM)が他ベンダーのDBをサポートすることによって、既存のORACLE-DBを他社DBにリプレイスする誘因となる場合、、これは確かにORACLEにとって大きな賭けだなとは思います。

しかし、Oracle Fusion Middleware(OFM)が新規DBの購入を促すもので、導入する際ORACLE-DBと他社DBが競合が発生する可能性があるという議論であれば、それほどORACLE-DBのビジネスにマイナスには働かないんじゃないでしょうか?

この時点でOracle Fusion Middleware(OFM)が売れているって事ですし、さらに、DBの販売機会自体を増加させているわけですし。ORACLE-DBを使ってくれたらボーナスポイント感覚です。

新たな成長マーケットを目指して買収しまくったんですから、初志貫徹して欲しいものです。男の子として。
2005-09-27
いけだ (@_@)
個人的には、ZDNetで報じられたアナリストの発言とは逆ですが、「買収した一連のアプリケーションは、Oracle以外のデータベースもサポートする、ということとなる。」という方向に進むべきだと思います。
この世界、下手な囲い込み政策を敷いたが故に消えていったベンダーは数多くあるわけですし。
2005-09-27

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