囲い込まないビジネス - サンとWeb2.0とオープンソース

飯田哲夫(Tetsuo Iida) 2005-12-04 12:23:26

Schickがヒゲソリのホルダーを無償で配布するのは、顧客囲い込みのためだが(前回のエントリー参照)、サンがソフトウェアを無償化するのは、必ずしも囲い込みのためではない。なぜなら、サンのCOOであるJonathan Schwartzが、収益の生み方は後で考えると言っているからである。既に見込まれるサポート・ビジネス以外の何かがあるのだ。

ソフトウェアの更なるオープン化

11月30日、サン・マイクロシステムズは、既にオープン化されているSolarisに加えて、サーバー関連製品、開発ツール、N1管理ソフトウェアをオープンソース化すると発表した。

しかし、サポートは有料であることから、一見、利用者の数を増やすことでサポートビジネスで収益を上げることを目論んでいるように見える。

が、ZDNetの記事で引用されているJonathan Schwartzの言葉は、必ずしも狙いがサポート・ビジネスのみに限定されていないことを示唆している。

「何よりもまず、利用者の裾野を広げることを目指している。顧客層の拡大から利益を得ていくための適切なサービスについては、その後検討する」

果たして「その後検討する」という言葉にはどんな意味が込められているのだろうか?

Solarisのオープン化がもたらしたもの

InformationWeek誌がSchwartzの発言として報じたところによると、Solarisはオープン化後、既に340万のダウンロードを記録した。しかしながら、うち3/4はサンのSparcサーバーではなく、Intelサーバーで動いているという。しかも、サンの競合であるHP製サーバーが利用されていることも少なくないようだ。

There have been 3.4 million downloads of Solaris since the move, he said, with three-quarters of them running on Intel-based hardware rather than Sun's own UltraSparc servers.(InformationWeek)

つまり、Solarisのオープン化自体は、必ずしもサンのみに恩恵をもたらしているわけではなく、競合他社へも恩恵をもたらすこととなっている。また、ZDNetは、サンのサーバーソフトウェアが、必ずしもIBMやBEAに比して人気が高いわけではないとも指摘する。

では、オープン化のメリットはどこにあるのだろうか?

囲い込まないから生まれるビジネス

そもそも我々は、ソフトウェア・ビジネスというと、どうやって囲い込むかという観点で議論することが多い。それは、UNIXのOSでもそうだし、データベースでもそうである。より多くの顧客を囲い込むために、そのプラットフォームで動くビジネスアプリケーションを増やそうとするのだ。

しかし、オープンソースとは、囲い込まれないことによって価値が生まれる。より多くのフィードバックを取込みながら成長することに、その原動力を持つからだ。そう考えると、Schwartzが「適切なサービスについては、その後検討する」ということの意味が見えてくる。

つまり、サンは、ソフトウェアをオープン化することで、顧客の囲い込みを狙っているわけではない、と解釈することが出来る。むしろ、囲い込まないからこそ実現できる「何か」をその後に仕掛けるつもりなのではないかと。

もしそれが実現すれば、それは、エンタープライズの世界でのWeb2.0を体現するようなものになるのではないか、などと期待してしまうのだが、サンがそんなアイデアを持っているのか、いないのか、私には判らない。Schwartzの「その後検討する」の中身次第なのである。

ネットワーク効果の新しい解釈

さて、サンのオープンソースへの取組みから、Web2.0なエンタープライズ・ビジネスの世界が少し見えてくるような気がする。ネットワーク効果という考えは、従来からビジネスでは重要な概念であるが、その重要さはWeb2.0でも変わらない。

しかし、これまではネットワーク効果を顧客囲い込みに活用していたのが、これからは顧客を囲い込まないために活用するところが大きく異なる。顧客を囲い込まなくても成立するビジネスモデルがあるならば、顧客を囲い込まない戦術が、囲い込む戦術を圧倒的に凌駕する。なぜなら、顧客は基本的には囲い込まれたくないから、囲い込まない戦術の方がより大きなネットワーク効果を得られる可能性が高いのである。

ちなみに、SchickはWeb1.0ということになり、自分はWeb1.0な顧客である。

※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

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