SAPに続き、先週はOracle OpenWorld Tokyoにて、Ellisonがオープンソースについて強気な発言を行った。一つは、MySQLの買収に関して、もう一つはオープンソース全般のビジネスモデルに関して。
MySQLの買収について
MySQLへ買収を持ちかけたことは事実であると認めている。しかしながら、InnoDBやSleepycatの買収が、MySQLへの対抗策であるという点については否定したようだ。それにしても、CBR誌に引用されているこの発言、強気すぎて逆に勘ぐってしまう。
"Are we interested? It's a tiny company. I think the revenue for MySQL is between $30m and $40m, Oracle's revenue next year: $15bn," he added. "We bought some open source stuff, we bought Sleepycat, which is the most popular, it's actually much more popular than MySQL."
買収を仕掛けておきながら、そんな小さな会社、別にどうでもいいよ、といった感じである。
オープンソース全般について
Ellisonのスタンスは、こうだ。オープンソースは大手ITベンダーが支援することなくして、花開くことはない。こちらはZDNetからの引用。
OSSが商用ソフトウェアに置き換わることはない。OSSに対しては、開発者がボランティアで一生懸命開発に貢献しているのだという神秘的な概念を持つ人がいるが、Linuxを開発したのはIBMであり、Intelであり、Oracleなのだ。OSSが成功するための条件は、大企業がOSSに投資しなくてはならない。
さて、現実はどうか
私はオープンソースと関わる一方で、有償のビジネス・アプリケーションにも深く関わって仕事をしている。そうしたなか、エンタープライズ・ユーザーとのビジネスの大半が、オープンソースとは未だ無縁の世界にあることは事実である。そうした営業現場においては、オープンソースを脅威と感じるどころか、無償のソフトウェアに関心を持つことにすら価値が見出されない。
しかしながら、オープンソースに深くコミットしたディベロッパー達が、企業の枠を超えて協力し合い、ソフトウェアをどんどんと発展させる様を目の当たりにするとき、Ellisonの自信は果たしてどこまでが本当なんだろうかと考えてしまう。Ellisonも、オープンソース・ベンダーに買収を仕掛けている以上、その両面を見ているはずだからだ。
梅田さんの本から
梅田望夫さんの「ウェブ進化論」、この本で一番面白いのは、図解がほとんど無いところだ。梅田さんの言うとおり、Web2.0の世界は本に図が入りきらないのだ。本当のロングテールは長すぎてページに収まらず、「不特定多数無限大」も大きすぎてページに収まらない。そこをうまく数字の例えで納得させてくれるところが、この本は秀逸だ。
そんな例えの一つに、時間の話がある。みんなの時間を少しずつ集めると、すごいことになるという話だ。例えば、100万人集まると、一人4分48秒で1万人の企業に匹敵する労働時間を得ることができるという。そして、オープンソースに触れている箇所には、オープンソース開発者の人口が200万人に達したとある。そうすると、一人高々5分程度を費やすだけで、2万人規模の企業の価値創出に匹敵するだけの力を持つことが可能になるわけである。
もちろん、時間さえ集めれば良いという話ではないが、多くの人が一見無秩序と思われる共同作業を行ったとき、それが必ずしも組織化された労働に対し、品質において劣るものではないことは、既にLinuxやWikipediaなどで示されていることなのである。
エンタープライズ領域においては、オープンソースを遥か遠くのものと見るべきか、あるいは差し迫った現実として見るべきか、実体はその両面であるところがその難しさの本質だろう。
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