日本IBMとサンがサーバー分野で提携するとは

飯田哲夫(Tetsuo Iida) 2006-07-17 10:00:42

さて連休。例によって釣りに行くが、全く釣れずに生活は既に平常。前回の大漁はやはり軌跡。

まぁ釣果は別として、海釣りでは「撒きエサ」なるものを使うことが多い。特に警戒心の強い魚を釣るときなどは、「撒きエサ」によって魚を引き寄せて、するするとエサを下ろして大物を釣り上げるのである。

このとき、釣り人が複数いたとすれば、エサを撒いている間は魚をおびき寄せるという意味において、釣り人達はお互いに協力関係にある。しかし、一度魚が寄ってくれば、その中にいる大物の数は限られているが故に、釣り人達は競合関係になる。

この協力と競合の機微、経営学においては、"Co-operation"と"Competition"を足して「Co-opetition(コーペティション)」と呼ぶ。さて、日本IBMとサン・マイクロシステムズがサーバー分野で提携するという奇異なニュースが報じられたが、このテーマを「コーペティション」というキーワードで考えてみたい。

日本IBMとサン・マイクロシステムズの提携

日本IBMとサン・マイクロシステムズは、サーバー分野においては宿敵である。これにHPを加えれば、3強ということになり、お互いに市場シェアを巡って熾烈な争いを展開している。それゆえに今回の提携には違和感がある。

では、どのような提携なのか。今回の提携は、日本IBMのブレードサーバー「IBM BladeCenter」に、サンの提供するオペレーティング・システム「Solaris 10」を搭載できるようにするというものだ。一方で、「Solaris 10」そのもののサポートはサンが提供する。

つまり、良く見てみると、お互いにレイヤーを分けた提携であることが判る。では、何故このようなことが可能になったのだろうか?

サーバー市場の変化

各社とも従来はサーバーのハードウェアに独自のオペレーティング・システムを搭載してきたが、近年その販売方法は変化の兆しが見える。WindowsベースのPCサーバーの販売や、Linux OSの積極展開など、オペレーティング・システムをハードウェアから切り離す動きが一般化しつつある。そして、サンは、自らが開発したSolarisをオープンソースとして公開し、第三者がその中身を見て他のハードウェアと組み合わせる開発が行い易い環境を作り出した。

つまり、ハードウェアとオペレーティング・システムのアンバンドリングが進み、従来のように密結合したシステムで競合するという状況が終焉した。新しい競争原理に基づいた戦略が求められるようになったとも言える。今回の提携もそうした動きの一環と言えるだろう。

コーペティションの考え方

「コーペティション」とは、相互に補完関係にある者同士が協力し合って市場を拡大し、市場が十分大きくなったところで分割しようという考え方だ。最終的には、競合関係になるとは言え、市場拡大では協力し合う方が、得られるものはお互いに大きくなるだろうというロジックである。

例えば、ゲーム機の市場。ゲーム機メーカーは、なぜゲームソフトも含めて全部自分だけで開発しないのか?そのほうがハードに加えてソフトの売上・収益も自分だけで独占できるはずだ。しかし、どのゲーム機メーカーも、ソフト会社を積極的に支援しているのが現実だ。それは、その方が市場が拡大するからに他ならない。顧客は多様はソフトで遊べるゲーム機に付加価値を見出すが故に、より多くのソフトメーカーが開発に携ってくれる方がゲーム機メーカーとしても良いのである。つまり、ゲーム機メーカーとソフトメーカーは、同じゲーム市場での売上を巡って自分の配分をより大きくしようという競合関係にあるが、相互に役割分担を明確にすることで、市場拡大を図っているわけである。結果として、全部自分一人でやるより儲かるわけだ。

日本IBMとサンの提携の意味

こうして見てくると、何故日本IBMがサンと提携するのかも見えてくる。つまり、ハードウェアはより多くのOSをサポートした方が、より多くの顧客のニーズに応えることが可能となる。つまり、市場が大きくなるわけだ。その後の収益の分け前は、今回の場合、日本IBMがハードであり、サンはOSのサポートサービスということになる。

しかし、このような提携が実現したのは、ハードとOSのアンバンドリングが急速に進んでいること、また、サンがOSを無償公開することで、新しいビジネスモデルへ移行しつつあることが背景にある。テクノロジー戦略の変化により、ビジネスモデルも変化する。そして、それが新しい協力・競合関係を生み出すこととなる。

なお、「コーペティション」の詳細は、この本を参照されたい。

ちなみに、私の釣りに関してであるが、協調関係においては成功するが、競合関係においては必ず負けるのである。

※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

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