商用ソフトとオープンソース、リスクが高いのはどっち?

飯田哲夫(Tetsuo Iida) 2006-09-03 00:57:39

Sunの藤井さんが「OSSに関するユーザの視点」と題するエントリーで、ニュートーキョーの情報システム室長へのインタビュー記事を取り上げていた。ニュートーキョーは自ら開発した業務ソフトウェアをオープンソースとして公開したのだが、インタビューではその理由を次のように説明している。

「システム開発に自信がなかった。開発会社が開発したソフトウェアを検収するのも怖いし、開発会社がなくなったり、担当者が移動するなどのリスクがあり、維持するのも怖い。検収しなくて済む方法がないかと考えて、OSSを選んだ」

確かに商用のソフトウェアの場合、収益面での判断から、開発やサポートの方針が変わったり、要員の入れ替えなどが行われ、場合によっては開発会社そのものが倒産したり、買収されてしまうこともある。これはユーザー側のロジックではなく、提供する側のロジックで行われる判断であり、商用ソフトウェアのリスクである。

同様のリスクについて事例を挙げて説明しているのがOpen Tech Pressの「プロプライエタリ・ソフトウェアが基幹アプリケーションに向かない理由 」と題する記事。こちらは、ハード障害でソフトウェアの再導入を行った際、ライセンスキーの再発行を開発元に依頼したら、当該バージョンのサポート停止と高額のアップグレード費用を請求されたという話。こちらは、開発元の買収も絡んでいた。

商用ソフトとオープンソースの開発ロジック

商用ソフトは、ソフトウェアから収益を上げることを狙って開発される。それ故に、収益性が悪化すればビジネス的な判断によって収益性改善の手を打たねばならない。ここでどのような手を打つかにより、ユーザーに大きな迷惑がかかることもある。

一方、オープンソースに関しては、その開発者の参加動機は様々であるものの、よりユーザーを向いて開発が進められる可能性が高い。例えば、Java開発フレームワークのSeasar2であれば、その狙いはユーザーである開発者により開発し易い環境を提供することに主眼が置かれている。また、先ほどのニュートーキョーの例であれば、ユーザー企業自らが開発にコミットしているのだから、よりユーザー指向が強くなる。

商用ソフトのリスク

だからといって、オープンソースならばユーザーは常に安心して使えると言うわけではない。しかしながら、ソフトウェア企業の買収が頻発する現在、それがユーザーの期待を裏切る結果となればオープンソースという新たな選択肢がより力を増すことになることは間違いないだろう。

ユーザーが商用ソフトに強くロックインされていればいるほど、その商用ソフトを持つソフトウェア企業を買収することから得られるメリットも多い。しかし、そのメリットが顧客のデメリットの上に成り立っているとすれば、顧客は商用ソフトのリスクを強く認識することとなるだろう。

インテレクチュアル・キャピタル

これまた藤井さんに薦めて頂いた「Innovation Happens Elsewhere: Open Source As Business Strategy」という本の序文に、次のようなことが書かれている。

Today, financial capital is no longer scarce: human and intellectual capital are.

つまり、財務的な資源よりも人的な資源の方が、よほど不足していると。しかし、企業が確実に集められるのは財務的な資源の方である。一方の人的な資源は、日々流動性を増し、むしろオープンソース・コミュニティのような社外に集約してゆく。商用ソフトウェアの領域は、オープンソースというオルタナティブを見据えて、その存在意義というものをしっかり見据えていく必要があるだろう。

***

さて、今週金曜日(9/8)に開催される翔泳社主催の「エンタープライズOSS 2006」に登壇させて頂く予定です。OSSのエンタープライズ利用の実際について、事例を交えてお話します。

※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

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