「AppStore」で魚は売れるか

飯田哲夫(Tetsuo Iida) 2006-12-17 21:09:48

さて忘年会シーズン。先週は年齢の近い者同士で本音モードな宴会が新宿で開かれた。すると参加者の一人がCMでやってた「ライフカード」ならぬ「ライクカード」を取り出した。使い方は同じ。そこには人生の選択を迫る様々な言葉が書かれている。みな順番に引いていくのだ。その引いたカードが各人の置かれている状況に実にマッチしている。そして私の引いたカードは『暴走』。まぁそういうわけで来年も大変だ。

「AppStore」間もなく開店

さて、Salesforce.comが、AppExchangeの新サービス「AppStore」を発表した。AppExchangeというプラットフォームを活用したビジネスモデルがいよいよ明確になったということである。これまでAppExchangeには、アプリケーションがリスティングされているものの、Salesforce.comが取引そのものに関わることはなかった。

「AppStore」はソフトウェアを販売する企業から、販売完了時にマーケティング費用として手数料を徴収する。また、課金などの決済サービスも別料金にて提供する。マーケティング費用は、販売額の10%と20%の2パターンがあり、前者はソフトウェアカテゴリーにて優先的な表示を行うもの、後者はカスタム・マーケティングがセットとなったものである。また、決済サービスには販売額の20%が課金される。

決して安いとは言えないが、スタートアップ企業の課題であるマーケティング関連の費用が販売額に応じて課金されることは、アップフロントでの効果の不透明なマーケティングに莫大なコストを掛けるよりも効率的である。では、どうやってその存在を知ってもらうかと言えば、Salesforce.comのブランド力と複数のアプリケーションがリスティングされているというクラスター効果を活用することとなる。いわば、ショッピングモールのようなものだ。

「AppStore」の意義

ソフトウェア企業が買収によって大型化することで多様性が失われ、中長期的にはイノベーションが起きにくい環境へと変わりつつある。そうしたなか、SaaSモデルとその提供プラットフォームの存在は重要性を増す。それだけに、Salesforce.comの「AppStore」への期待は高い。「AppStore」が新興ソフトウェア企業のインキュベーションを支援することになれば、ソフトウェアの多様性が増し業界の活性化に繋がる。

しかしながら、現状AppExchangeにリストされているソフトウェアの多くは、Salesforceのアドオン的な機能が中心となっている。それはある意味当然のことで、Salesforce.comというブランドの元に集まってくる顧客は、Salesforceと関連したソフトウェアを探しているのが普通だからだ。「AppStore」の持つマーケティング効果やクラスター効果もCRMに関係の深い領域でこそ極大化するはずだ。

「AppStore」で魚屋を開けるか

仮にCRMと全く関係ない領域のソフトウェアを「AppStore」にリストしたところで、洋服のアウトレットに魚屋を開くようなもので成功するとは思えない。もしもSalesforce.comが、Salesforceに関連するソフトウェアを購入する顧客しか呼び込めないのであれば、Salesforceは参加企業へ課金するよりも、むしろSalesforceを補完することに対して報奨金を支払うべき立場とも言える。

それゆえに、Salesforce.comの次なるチャレンジは、オンデマンドCRMの企業からオンデマンド・プラットフォームの企業へといかに脱皮するかという点にある。Salesforceの新規顧客獲得も徐々に減速しつつあるということであるから、タイミング的にも新しいビジネスモデルへと移行するのに適した時期であるということになる。是非期待したいところだ。

※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

SpecialPR

  • ビジネスの継続的な成長を促す新たなITのビジョン

    多くの企業においてITに求められる役割が、「守り」のコスト削減から「攻め」のビジネス貢献へとシフトしつつある。その中でIBMが提唱する新たなビジョンEnterprise Hybrid ITとは?

  • デジタル変革か?ゲームセットか?

    デジタルを駆使する破壊的なプレーヤーの出現、既存のビジネスモデルで競争力を持つ
    プレイヤーはデジタル活用による変革が迫られている。これを読めばデジタル変革の全体像がわかる!