金融ビジネス2.0 - おたくの家計簿見せなさいよ!!

飯田哲夫(Tetsuo Iida) 2007-06-17 10:30:43

以前、「金融ビジネス2.0 - 俺に投資しろ!!」でソーシャル・レンディングを紹介したが、今回はCNETで「Wesabe」(ワサビと呼びたいけどワサベ)が取り上げられていたので、ソーシャル家計簿を話題にしてみたい。

そもそも家計簿はソーシャルではないし、。とてもパーソナルな事なので、他人のものを見てみたいが自分のは見せたくない。クレジット・カードの明細なんて、生活スタイルが思いっきり出てしまうので誰にでも見せられるというものではない(それだけにマーケティング上の価値は非常に高いわけだが)。以前紹介したソーシャル・レンディングの「Prosper」では、毎月どんな風にお金を使っているかを赤裸々に語る人たちで溢れていたが、それでもクレジット・カード明細を明らかにするわけではない。

ソーシャル家計簿

ところが、ソーシャル家計簿サイトである「Wesabe」では、参加者が銀行口座のステートメントやクレジット・カードの明細などをソーシャル家計簿サイトにアップロードしてしまうのである。

とは言っても、個々人の明細が他人に明らかにされることはない。つまり、自分にも他人の明細は判らないのだが、その集合知は明らかとなる。自分の食費が他人と比べてどうなのか、自分が買い物をした店を他の人がどう評価しているのか、みんなどんな目標を立てて生活しているのか、など。

ソーシャル家計簿では、勘定科目の役割をTagが果たす。ある支払が、食品なのか、生活用品なのか、外食なのか、自分で決めたTagを割り振ってやる。すると、もちろん自分の支出の割合などはTagを元に作成されたグラフで一目瞭然となる。更に面白いのは、Tagを通じて他の参加者との比較ができるのである。また、他の参加者の様々なアドバイスを参照することも出来る。

もし、これだけの情報を把握することができたら、金融機関のみならず、あらゆるリテール・ビジネスにとっては宝の山とも言えるような情報が集積することとなる。何といっても、ユーザーが進んで情報をアップロードしてしまうところがすごい。しかも、全ての消費行動がつぶさに記録されているのである。

標準化のなせる業

かつて口座情報を集約しようと思うとアカウント・アグリゲーションという機能を持つサービスを利用するのが一般的であったが、最近では事情が変わってきているようである。インターネット・バンキングがこれだけ普及した今、ステートメント情報などをダウンロードできるサービスは一般的になりつつある。なので、それを家計簿ソフトに取り込んで統一的な管理を行えば、ローカルで全てを把握することも容易である。

そして、それにあともう1クリック足してあげれば、それがソーシャル家計簿へアップされるのである。「Wesabe」では何と5,000金融機関が既にサポート対象になっているという。といっても実体はMicrosoft Moneyなどの標準的なフォーマットをいくつかサポートしているのが実体だろう。なんと金融機関のリストの中にはみずほ銀行が含まれていた。(早速試してみたら、文字化けして取り込まれてしまったが。)

その担い手

ソーシャル・レンディングもそうであったが、このソーシャル家計簿サイト「Wesabe」も、お金のコントロールを取り戻そうというスローガンの下にサイトの運営が行われており、どうにも金融機関とは対峙するようなポジションを取っている感じだ。2.0系の金融サイトは、個人のお金、そして知恵を集約することで、これまで金融機関に払ってきた手数料や金利をできるだけ削減しようという志向性が強い。

しかし、その場合においても金融機能そのものが不要となるわけではない。集める、使う、殖やす。全て他者との関係で成り立つのであるから、誰かと誰かが仲介されなくてはならない。しかし、コミュニケーションのパラダイムが大きく変わり、情報の非対称性に関わる力学が大きく変わろうとしている今、金融機能はこれまでの担い手から徐々に離れていこうとしているということだろう。

金融ビジネス2.0

とはいえ、これまでの担い手が消え去る必要は無い。しかし、これまでの担い手が変化していくことは必要であろう。また、変化しなければ、あるいは新しい担い手が現れるのも必然であると言える。Web2.0は既に言葉としては使い古されたかもしれない。しかし、それはリアルなビジネス領域にWeb2.0が浸透し始めた証拠とも言える。金融ビジネス2.0はまだ始まったばかりだと思う。 

※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

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