オラクルのトランスフォーメーション

飯田哲夫(Tetsuo Iida) 2007-07-08 16:55:19

うちの庭というかテラスにグレープフルーツの小木がある。5年くらい前に食べ終わったグレープフルーツの種を植えたものであるが、5年経っても50センチくらいにしかならない。何故かと言うと、毎年アゲハチョウが卵を産み付けるので夏の半ばには葉が全て無くなって光合成が出来なくなってしまうからなのである。

アゲハチョウのトランスフォーメーション

なぜ、アゲハチョウの幼虫を駆除しないのか。それは、その人生の凄まじさゆえである。木が小さいので鳥に見つかって猛烈に食われるし、蛹にハチが子供を生みつけて、蛹の中から別の生き物がゴロッと出てきたりする。それにしても不思議なのは「トランスフォーメーション」というやつである。

終齢幼虫が木から這い降りてきて、蛹になる場所を決める。そこに糸で体を固定して脱皮をすると蛹になる。まぁそこまでは良いのだが、その蛹の中でその組織が一旦ドロドロと溶けて、あのアゲハチョウの形に再構成されて出てくる、というあのメカニズムが凄いのである。未だそのプロセスは良く判っていないそうだが、イモムシを溶かして蝶を創るという、その匠の技に心を打たれるのだ。

オラクルのトランスフォーメーション

ところで「トランスフォーメーション」と言えば、オラクルである。日本オラクルは2007年5月期決算の発表でも好調振りを証明して見せたが、その成長の牽引力の1つは、過去数年に渡り積極的な買収が行われてきたビジネス・アプリケーション分野である。オラクルは、データベースをコアとしつつも、ビジネス・アプリケーション・レイヤーへ、あるいはLINUXを核としたOSレイヤーへと領域の拡大を図りつつある。

一方、7月6日に開催されたという日本オラクルの戦略説明会によれば(ZDNet記事より)、日本オラクルはソフトウェアビジネスに関し、「自社保有」と「SaaS」の複合型を目指していくとしている。オラクルがこれまでに買収してきたソフトウェアビジネスは、基本的には自社保有型ソフトウェアの雄の数々である。例えば、Siebelもオンデマンドモデルでのサービス提供を行っていたとはいえ、Salesforce.comに比すれば圧倒的に自社保有型のソフトウェア企業であった。

これをSaaSとの複合型へと転換していくことは、2つのビジネスモデルを融合していくことに他ならず、これは領域の拡大ではなく、質の革新であり、まさに「トランスフォーメーション」と言えよう。そして、これは他のソフトウェア企業やITサービス企業が傍観していれば良いというものではない。終齢期を迎えた幼虫が必ず挑戦しなければならないリスキーなプロセスなのである。

新種の生物ネットスイート

一方、やや気になるのは、オラクルCEOのLarry Ellisonがその株式の過半を持つ米ネットスイートを上場させようとしていることである。ネットスイートはオンデマンド・ソフトウェアの企業であり、「トランスフォーメーション」というリスクを経なくても、元々新種として最初から存在している生き物なのである。

オラクルとネットスイートにはビジネス領域における競合関係も指摘されているが、Larry Ellison氏がネットスイートを上場させる意図はどこにあるのだろうか。オラクルはあくまでハイブリッドであり、ネットスイートは完全なオンデマンドとして、ターゲットは異なるという考え方が1つ。斜に構えた見方をすれば、「トランスフォーメーション」というリスキーなプロセスに挑戦するオラクルに対するリスクヘッジとしてのネットスイート、というのがもう1つ。

うちの庭の「トランスフォーメーション」は、夏が最盛期である。

※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

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