「iPod touch」の「ロック解除ソフト」が意味すること

飯田哲夫(Tetsuo Iida) 2007-10-21 15:05:43

さて、13歳のハッカーが「iPod touch」のロック解除ソフトを開発し、「iPod touch」にサードパーティソフトのインストールが出来るようになったという。このニュース、記事の冒頭で触れられているハッカーが「13歳」であることや、ハッカーが「コンピュータサイエンスのクラスを履修していない」ということよりも、iPodがハック対象となるという事実の方が興味深い。

Appleの伝統的ビジネスモデル

Appleといえば、その斬新なデザインや、斬新なビジネス展開を我々は思い浮かべるが、iPodのビジネスモデルは極めて伝統的な顧客ロックイン戦略に基づく。つまり、iTunesで販売される楽曲は非公開のフォーマットで生成されており、それはiPodでしか聞くことができない。それゆえに、iPodの購入者はiTunesにロックインされる。

また、iTunesで購入したデジタル資産が増えれば増えるほど、iPodから他のデジタル・デバイスへ切り替えることのスイッチングコストが高まる。つまり、ユーザーのAppleへのロイヤリティは長持ちするのである。これは、昔のLPレコードやCDなどが、標準化されたメディアであり、どのメーカーのプレーヤーでも再生できたこととは大きく異なる。

iPodのビジネスモデルは、一昔前のソフトウェアベンダーが主軸としていた戦略でもある。つまり、オペレーティング・システムで囲い込み、そのオペレーティング・システムで稼動する関連ソフトウェアを補完関係にあるベンダーから多く購入してもらう。すると、顧客はそのオペレーティング・システムにロックインされてしまい、継続的なビジネスを生み出す。しかし、ソフトウェアの領域においては、仮想化技術やオープンソースの台頭により、このモデルは崩れつつある。

なぜハックするか

なぜハッカー達は、iPodをハックするのか。それはiPodが魅力的で閉鎖的なデバイスだからだ。それゆえに、iPodをいろいろな目的に使いたいと思うし、その中を覗いてみたくなるのである。マス・コラボレーションの効能を説いた『ウィキノミクス』も、iPodに関してはこう述べている(pp.215)。

クローズドなiPodのアーキテクチャーをオープン化する動きは、今のビジネスモデルと今後の製品戦略を危うくするものなのだ。

一方で、同書は、最近プログラマブル製品に力を入れるレゴが、ユーザーが「ハッキングする権利」をソフトウェア・ライセンスに明記していることを挙げ、アップルと強く対比させている。つまり、レゴはアップルと異なり、仕様を公開し、ユーザーによる改良を許容することで、レゴの価値を高めるという方法を取っているという。

iPodへの対抗軸

寡占化が進むソフトウェア・ビジネスの領域では、大手ソフトウェア・ベンダーに対する対抗軸はオープンソースであった。つまり、公開された無償のソフトウェアをマス・コラボレーションの力によって盛り立てていく方法だ。これを意図的に活用しているのがSunMicrosystemsと言える。

iPodが魅力的であることは事実である。そしてかつてソニーやMicrosoftが独占してきたマーケットを切り崩す様は爽快としか言いようがない。しかし、結果的にアップルが取っている戦略は、従来型の囲い込みであり、音楽メディアに関するユーザーの利便性は選択枝が減ったという点において退化したとも言える。

当面iPodとiTunesが市場を占有する状況は続くだろうが、それがどのように崩れるのか、あるいは崩れないのか、その変化をウォッチするのも興味深いものである。

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と思ったら、iPhone/iPod touch向けのSDKがリリースされることがアナウンスされていました。失礼しました。続きはまた今度、としたいところですが、競合他社にとってはますます厳しいことになるかもしれませんね。

ところで、釣れました。

※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

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