世界のバックオフィスで牛力発電

飯田哲夫(Tetsuo Iida) 2007-11-03 12:20:57

夜11時、バンガロール上空。航空機は着陸態勢に入り、滑走路へ向けて高度を下げる。低空飛行に入り、やや機体の揺れが不安定になってくる。間もなく着陸だ。

と、その時、一旦は出力を低下させていたエンジンが、グヮーと凄まじい音を立て始める。と思うと、突然機首がぐぐぐぐぃと上を向いて上昇を始めた。いや〜な汗が出始める。明らかに着陸失敗やり直しだ。相変わらずエンジン音は凄まじく、機体は上昇を続けるが、説明のアナウンスはない。

機体が安定するとアナウンスが始まるが、ヒンディー語のためか何を言ってるのか判らず、更に不安が高まる。続いて英語のアナウンス。何と、着陸直前に滑走路の明かりが消えてしまったのだという。「むむむ、さすがインドー」とか言いたいところだがこれは笑えない。

しばし上空で待機というが、果たして明かりは戻るのか。緊張は継続するが、10分程度で明かりが戻り、無事に着陸したのであった。それにしても電力供給が不安定であると言われるインドであるが、そこの明かりだけは消さないでおいて欲しい。

世界のバックオフィスが抱える課題

インドは世界のバックオフィスと呼ばれるほどに、ITサービスの領域を拡大させている。それゆえに、そのインフラの遮断は単にソフトウェア開発が止まるに留まらず、世界のビジネス・オペレーションに影響を与えることとなる。

停電はやはり良く起こるようだが、地元紙によればその被害は居住エリアに集中し、産業エリアへの影響は押えられているらしい。しかし、産業の発展スピードに社会インフラが付いて行けていないのは事実である。オフィス・ビルの建設と高速道路の建設が平行して進められているが、どう考えても先に出来上がってしまうのはオフィス・ビルなのだ。

たまらないギャップ感

また、産業の発展速度と宗教上の慣習にも大きなギャップが生じてしまっている。交通インフラが整っていないために、当然のように道は渋滞するのであるが、その渋滞する道の真ん中を牛がゆっくり歩いていたりするのだ。また、首都ニューデリーで副市長が猿の集団に襲われて死亡するという事故が起きたのもつい最近の話だ(M田情報)。

これも教えて頂いた情報なのだが、極め付けは牛力発電である。滑走路の明かりが消えてしまうくらいなので、地方の電力供給は更に心もとない。しかし、OLPCという発展途上国の子供たちにパソコンを供給するプロジェクトの中で、その電力を供給源として牛力発電が研究されているのだという。とても力強い電力が生まれるとは思えないが。。。

経済の急成長がもたらす必然としてのこのギャップ感。これが現在のインドを象徴しているようで非常に興味深い。

このギャップが埋まる日

果たしてこのギャップは埋まるのだろうか。「コモンウェルスゲームズ」と呼ばれる、我々の知らないもう1つのオリンピックがある。これは、英国連邦に所属する53カ国が4年に一回開催しているものだ。日本は当然参加しないので、その存在すら気にすることはない。しかし、53カ国が参加する一大スポーツイベントなだけに、その開催国は社会インフラの整備に多大な投資を行うこととなる。

かつて、私がマンチェスターへ行った2002年は、まさにコモンウェルスゲームズがマンチェスターで開催された年であった。そのため、新しいスタジアムが建設されたり、駅が改築されるなど、マンチェスターの社会インフラが大いに整備されたという。

次のコモンウェルスゲームズは2010年。何とその開催地はインドのデリーなのだ。それゆえに、デリーでは高速道路の建設など、社会インフラの整備が進みつつある。インドの急速な発展に社会インフラが追いつく日、インド経済は更なる力を発揮することになるだろう。逆に、既に限界まで来ているこのギャップが更に拡大すれば、それが発展を阻害することも間違いない。

2010年が1つのターニング・ポイントになるのではないだろうか。インド行くなら2010年。

ちなみに滑走路の話はフィクションではありません。

※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

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