「スーパーマーケット・バンキング」の逆襲と「青物」の定義

飯田哲夫(Tetsuo Iida) 2008-08-10 01:07:01

いよいよ青物の季節が到来し、久々の大漁。釣りから帰ってスーパーへ魚を買出しに行く必要も無かったのである。さて、スーパーマーケットと言えば、英国のテスコ(TESCO)がロイヤル・バンク・オブ・スコットランドと共同出資で設立したテスコ・パーソナル・ファイナンスの株式を買い取って完全子会社にするのだという(日経MJ 8/8)。

記事によれば、直接の原因は、やはりロイヤル・バンク・オブ・スコットランドの財務状況の悪化らしい。

英国のリテーラーは一時一斉に金融ビジネスへ参入したものの、それほどうまくは行っていなかったようだが、金融機関の体力が弱まる中、改めてノンバンク・セクターの存在感が強まりつつあるようだ。

サブプライムのもう1つのインパクト

サブプライム問題は、欧米の金融機関の体力を減衰させ、日本などサブプライムの影響が少ない国の金融機関の存在感を相対的に大きくした。もう1つの効果として、非金融セクターからの金融サービスへの参入を活発化させたのではないだろうか。

欧米諸国においては、銀行が貸出審査を強化したために、一般個人に加えて、中小企業や個人事業主などもソーシャル・レンディングに流れる傾向があり、これがネット金融ビジネスの拡大に寄与している。また、金融機関への不信感を抱く個人がパーソナル・ファイナンシャル・マネージメントの機能を提供するSNSサイトなどを盛り上げている。そして、今回のテスコのケースは、リテーラーが再度金融サービスを強化する機会を与えることになった。

リテーラーの強みとは

よくスーパーマーケット・バンキングの強みとして挙げられるのは、利便性、店舗コストの低さ、日常生活との密着などである。実際にテスコもその店舗ネットワークは強みの1つであろう。それゆえ、便利な上に高金利というのがスーパーマーケット・バンキングの売りとなる。しかし、それだけでは顧客を十分に惹き付けられなかったのも事実である。

ただし、強みをもう1つ挙げるとすれば、リテーラーのブランド力が強い英国においては、そのブランド・エクイティが金融サービス参入の最大の武器となり得る。英国では、日本と異なってほとんど全ての商品ラインにおいて、リテーラーのプライベート・ブランドが存在し、かつそれらが棚の大部分を占有している。マークス・アンド・スペンサーに至っては、プライベート・ブランド商品しか取扱っていないのである。それだけ、リテーラーのブランドが信頼されているのである。

特にテスコはポイントカードによるロイヤルティ・プログラムの成功が書籍化(「Tesco顧客ロイヤルティ戦略」)されるほどなので、そのブランド力は非常に強い。そうした中で、単なる利便性や低コストではなく、そのブランドの持つ信頼感を打ち出した金融サービスを提供するようになると、金融機関にとっては脅威となるかもしれない。

金融機関の信頼感が相対的に低下し、利用者からの距離が遠ざかる中で、消費者に近い立場にありながら強い信頼感を持つブランド、つまりは日々食べるものですら任せられるブランドが金融サービスを提供するようになると、今までとは違った展開もありえるだろう。

私も釣りに行ったら魚を安定供給できるブランドになりたい。野菜は結構安定供給なんだが。。。

念のために言っておくが、私が「青物」というとき、それは野菜ではなくて、魚のことであるので、間違えないように。

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