メガベンダーはなぜ変化に対応できないのか

冨田 秀継 2011-02-10 20:06:30

 「アキハバラを眺めてみると、消費者向けロボットで目新しいものが見当たらない。日本ではロボットが文化を推進しているという雰囲気がなく、少し色あせているように感じた」

 米GartnerのMark Raskino氏(Gartner Fellow兼Vice President)の言葉に、筆者は「秋葉原はもはやそんな街ではないのです」と言いかけたが、これは本質的に何も回答していないに等しく、誠実な答えとは言い難いと感じていた。「漫画やアニメも含め、ロボットがぼくたちの生活や文化をけん引しているという感じはほぼ無いですね」と応答するのが精一杯だった。

 Raskino氏は「アナリストの視点から見ると非常に異常な風景だ。アキハバラであれば、どんな新しいデバイスでも売っているのではないか」と言葉をつなぎながら、自動掃除機「ルンバ」で知られるiRobotの製品開発戦略について話を続けた。

ルンバが生んだ新たな価値、ルンバが得た競争力

Mark Raskino氏米GartnerのMark Raskino氏

 「iRobotのCEOにインタビューしたことがあるが、彼らは“哲学”が違う。ロボットの高度で複雑な部分を理解する上で、iRobotのエンジニアは異なったアプローチを取っている――それはロボットをマルチタスクではなく、シングルタスクに絞って開発している点にある」

 日本では、いかに人の表情を真似られるか、いかに人と同じように動くかで、ロボットに対する注目度が変わる。しかし、iRobotは、ルンバにフロアをクリーニングするだけの機能しか持たせなかった。エレガントなロボットを作ろうとはしていない。「主婦にとっては床がキレイになりさえすればいい」とRaskino氏は言う。

 iRobotは、シングルタスクというアプローチでロボットの複雑性を解消するだけでなく、コストも削減した。「従来500ドルかかっていたコストを、200ドルまで削減した。それが市場での競争力になった」とRaskino氏は評価する。

メガベンダーはなぜ変化に対応できないのか?

 かつて(あるいは今も?)イノベーションの代名詞であったGoogleを題材に、Raskino氏はこう言う。

 「第2のGoogleが出現した場合、それは別の惑星から来たような存在だろう。もはや人々がそれをテクノロジと見なさないようなテクノロジを持つスタイルだ。全く新しいタイプの価値を生み出すという点で、ITは非常に面白い」

 ロボットの複雑性を解消して新たな価値を生み出し、コストを削減して市場での競争力を得る――さまざまな分野における価値のシフトは今後、増えることこそあれ減ることはない。しかし、大企業は迅速に動き出せないケースが増えている。

 「(IT系の)メガベンダーは、ライセンスやメンテナンスから入ってくる継続的なキャッシュフローに依存している。そして、オリジナルのコンセプトを創造できない状況にもある。スピンアウトやスピンイン、買収を繰り返すことで、オリジナルのアイディアを得ようとするが、それ故に巨大になり動きが遅くなってしまう。負けが分かっているのに戦い続けている企業もあるが、過去の収益源に依存するために動きが遅くなるのだ。次に起こる大きな動きに反応できない、察知できないというわけだ」

 「大企業だからこそ、市場の大きなシフトを予見できることもある。IBMがサービス主体の企業に変革したのは非常に素晴らしいことだが、それは非常にまれなことだ。大企業は(IBMほどの)インサイト(知見)を持って動けない」

 「別な言い方をすると、Ciscoは“ヒューマンネットワーク”という言葉をよく使う。しかし、そうは言いつつも、現在もネットワーク関連製品を販売しており、Cisco自身、ヒューマンネットワークをきちんと把握できていない。一方でFacebookはそれを実現した。シスコが行っている価値の創造は、Facebokが実現したそれと全く異なる。このように迅速な変革はコントロールしがたいのだ」

 変化が常態化している今、変革をコントロールする術はないのだろうか。CIOおよび情報システム部門へのアドバイスは、「ITの価値が存在する場所に変化が起きている」を参照されたい。

※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

1件のコメント
  • god_in_the_sun

    企業も組織も、巨大化すれば、方向転換が、難しくなるものでしょう。
    競争力の確保のために、合併などで、巨大化する企業が、後を絶ちません。
    でも、巨大なタンカーなどを見れば分かりますが、嵐などで、沈みにくいでしょうが、環境の変化による方向転換も、停止さえも、時間がかかります。
    少々の嵐では、沈みにくいでしょうが、沈み出せば、止めるのは、難しくなります。
    分不相応な巨大化は、恐竜の例を見ても、やがて、崩壊することは、明らかでしょう。
    小回りが利いて、沈みにくい大きさがあるはずです。
    何事も、バランスを忘れて巨大化しては、遠からず、沈没するものでしょう。

    2011年02月11日

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