[前回より続く]
(2) IPを使ったアプリケーションとの連動の具体的な提案は間もなく出てくる
「せっかくIP方式を導入したのに、それを生かすアプリケーションが無い」という声を良く聞くし、実際これまではその通りであった。今後SIP方式のIPテレフォニーが普及するにつれ、このあたりの事情も大きく変化することが予想される。その理由は2つある。1つは、SIPのアプリケーション開発はハイパーテキスト言語を使用するので、これまでWEB上のさまざまなアプリケーション開発を行っていた技術者たちが簡単に開発技術を習得できるということだ。無数のアプリケーション開発技術者により、われわれ電話屋には思いつかない、新しいアプリケーションが生まれる可能性が高い。第2に、企業の業務系システムとの連動が今後は容易になるということだ。
日本語で「アプリケーション」と言うとPCの画面上で目に見えるアプリケーション・ソフトウェアを思い浮かべがちである。しかし、企業にとって、テレフォニー分野におけるアプリケーションとの連動によるメリットというのは、PCの画面に見えるソフトとの連動によるものとは限らない。裏方で動いている業務系システムとのテレフォニー連動により既存業務を効率化できることも大きなメリットだ。
裏方のシステムと電話を連動させた業務の効率化といえば、コールセンターは元々はその一種である。最初に開発されたコールセンターの仕組といえば、電話を受け付ける多数のオペレーターに均等に電話がかかってくるようにするACD(Automatic Call Distribution)機能というものであった。つまり電話のアプリケーションの一つであるコールセンターも、初期の段階では見た目は普通のオフィスと変わらず、電話の置かれた机にオペレータが着席していただけで、特に目に見える特別なものがあるわけではなかったのだ。ところが、コールセンター業務を効率化させるための様々な仕組がどんどん発展し、今日では顧客データベースや受発注システムなどバック・オフィスのシステムと連動し、コールセンター用のアプリケーションとして、PCの画面上に見えるソフトウェアも数多く存在するのだ。
今までは、このバック・オフィスのシステムと電話設備を連動させるのにはCTI(Computer to Telephony Integration)という仕組を使っており、この仕組を使って実際にバック・オフィスのシステムと連動させるには高度な専門知識が必要であり、連動のための開発も大掛かりなものであった。このため、電話と接続することが主目的であるコールセンター以外では、なかなか一般の企業がバック・オフィスのシステムと電話設備の連動を気軽に実現するのは困難であった。ところが、SIP方式により、より簡単に連動実現ができるようになり、コールセンターでなくともアプリケーションとの連動が容易になるのだ。
[次回に続く]
(加藤 浩明)
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