CAのITILへの取り組み

itil 2005-10-26 10:02:42

 さて、今回はCAがITILへどのように取り組んできたかをお話します。

 過去のネタを探そうとPCの中身をいろいろ探っていたらこんな資料が出てきました。数年前に私がお客様用に作成したプリセールス資料です。この頃はまだITILという言葉が浸透する以前で、お客様にITILのことを話してもピンとこないころでした。資料のタイトルは「CAが考える情報システム部」。内容はというと、現在(その当時)の情報システム部は「惰性的なサービスを提供している」「経営者へのアピール手段がない」「利用頻度が低いサービスや資源への投資をしている」という状況。そしてユーザーは「情報システム部門から提供されているサービスはタダという認識」「情報システム部が提供しているさまざまなサービスを認識していない」「ITサービスは存在して当たり前」などなど。資料前半の締めくくりの言葉は「存在しているのが当たり前の情報システム部はやめましょう」でした。

 そして資料は理想的な情報システム部の話に入っていきます。どのように変革していけば理想の情報システム部になれるのでしょうか?その資料には「ICSPになりましょう」と書いてありました。その当時、私はお客様へ訪問するたびにこの言葉を連呼していました。お客様の反応はいろいろありました。「ICSPってナニ?」と興味津々に質問してくる方もいれば、「またアルファベットを並べたIT業界が好きそうな略語か・・・」とちょっと嫌悪感を示す方もいらっしゃいました。

 さて、「ICSPになりましょう」とはどのようなことでしょうか?「ICSP」とは「Internal Corporate Service Provider」の頭文字を取った略語で、社内情報サービス提供者を意味しており、ICSPになりましょうというのは「利用者の生産性を向上・コストの削減・利用者、企業へ価値のあるサービスを提供する部署になりましょう」ということです。ここで目指していたのはビジネスを助けるためのIT環境を構築することです。ITILという言葉が浸透するまでの間、ICSPという言葉を使って理想の情報システム部を語り、その後に「この資料の詳細はITILという情報システム部の教科書のようなものに記述されています」と話していました。

 2003年になり、我々CAがitSMF Japanに加入した頃にはITILという言葉が一般的になってきました。CAはITILの中核を担うITサービスマネジメント(サービスサポート・サービスデリバリ)に注目するようになりました。そしてITILの実装工数を劇的に削減させるというコンセプトをもとにITILソリューション第一弾が完成しました。このソリューションにはヘルプデスクや構成管理、変更管理をカバーする製品が含まれ、ITILの核となるCMDB(構成管理データベース)を標準で提供することが可能となっています。この当時、他社ではポイントソリューション、つまり一点集中型のソリューションを展開していたようですが、我々CAはITサービスマネジメントの広い範囲をカバーし、さらには製品間での連携がスムーズに実施できるという強みがありました。

 その後、展開するソリューションも「サービスサポートソリューション」「サービスデリバリソリューション」「チャージングソリューション」「IT資産財務管理ソリューション」と大幅に増えてきました。

 この頃はITとビジネスを融合させるべきと考えて活動していました。現状のIT環境でもお客様のビジネスは進みます。現に情報システム部が維持・管理している現在のシステムでビジネスが成り立っているのですから。しかし現状維持ではなく、お客様の収益を向上させるためにはどうしたらいいのか、ITがよりビジネスに不可欠な存在になるためにはどうしたらいいのか、ITによってビジネスを加速させるためにはどうしたらいいのか? という課題の答えを探しながら活動していました。これらの課題の答えは1つではありません。お客様の環境はさまざまです。IT環境の透明性を第一の目標に掲げる企業、可用性を第一の目標に掲げる企業などなど。どの部分に注力する企業なのかによって答えが違うのです。ITILという教科書を参考に個々のお客様のニーズに合った答えを探すのが我々の永遠のテーマなのです。

 ここまで読んでいただいて、CAのITILに対する取り組みが変わってきた事にお気づきでしょうか? 初期の頃は情報システム部をメインに取り上げ、価値のあるITサービスを提供しましょうと伝えていました。そしてその後はビジネスをメインに取り上げ、ビジネスを加速させるITサービスを築きましょうと。皆様のITILに対する認識が変わるのと同じスピードで、我々CAのITILに対する取り組みが変わってきています。

 さて、今、CAは変わろうとしています。もしCAをご存知の方なら、「またか」と思われるかもしれません。CAをご存知でなければ、そもそもあまり関心はないかもしれませんね。しかしこの変化は、私たちCAを含む情報サービス産業の事情と、大いに関係があることなのです。

 ITILに注目が集まるずっと以前から、CAは、一般に「運用管理」と呼ばれている分野のソフトウェアをお届けしてきました。「運用管理ツール」や「運用管理ミドルウェア」など、呼び方はさまざまです。しかし私たちは、「マネジメントソフトウェア」と呼んでいます。

 「管理」という言葉には、守りというか、受身というか、どこか守備範囲の狭い、堅苦しいイメージがあるようです。ITが導入当初に望まれていたとおりにきちんと動く、これは確かに重要なことです。ただそのために、運用をがんじがらめにしてしまって、柔軟性に欠けたり、利便性が損なわれたりしたら、IT本来の目的である企業や組織の活動支援、という点からすると、矛盾してしまいます。ITは、「望まれた」とおりのサービスを提供する存在であるべきです。

 「マネジメント」には、支え、見守り、助け、改善していくといったような、より前向きで能動的な意味合いが含まれています。日本語にすると「経営」。ただ、より実践的な意味合いとなると、なかなかよい訳語がないもの。そこで、マネジメントソフトウェアとしました。ただの言葉に過ぎませんが、「マネジメント」という言葉の持つ力は、私たちCAが製品に込めた願いを、よく表しています。

 またより具体的な取り組みとして、私たちのソフトウェア自体に、ITILの理念を取り入れようという、非常に野心的なプランがあります。

 そもそも、把握していないものをマネジメントすることはできません。そこでITILのConfiguration Management(構成管理)やChange Management(変更管理)の基盤となっているのが、CMDBです。包括的で、一貫性があり、正確で最新の情報を反映したCMDBの構築・維持は、ITILを実践する上で不可欠です。

 CAはこのCMDBの概念を応用して、マネジメントに関わるあらゆる情報を集約し、連携させ、効率的に活用するアーキテクチャを採用しました。すでに一部は提供開始していますが、その他もまもなく登場します。

 CAはプラットフォーム中立なソフトウェアベンダという特長を生かし、お客様のITIL実践を最大限支援するためのソフトウェア製品をお届けしたいと考えています。しかし、技術の果たす役割は、お客様にとっては一部でしかありません。つまり、実践に向けたお客様自身の取り組みであったり、プロセスであったり。こうした点も非常に重要です。そこで、教育、アセスメントといったサービスもご提供することでも、お客様をご支援しています。itSMF Japanでの活動も、お客様や業界への啓蒙普及活動の1つです。

 ITILは、ITの実践的な運用を中核としたマネジメント・フレームワークですが、企業や組織にとってのITを考えたとき、ITはその活動を支援し、利益を生み出し、社会的価値を実現していくための手段にすぎません。「ITサービス」という考え方は、こうしたITの位置付けをよく示したものです。

 現在は、最適なITサービスの実現だけでなく、企業や組織の視点に立って、その意思決定を支援し、ITサービスを最適化させていく、という取り組みも始めています。これは、今後お話することにしましょう。

 企業や組織にとって、情報サービスそのものが差別化の切り札だった時代がありました。インターネットバブルの時代も通りました。一方で、多くの技術は標準化が進み、誰もが手に入れられるようになっています。ITのイノベーションは、今後も続いていくでしょう。しかし今後は、そうした技術をいかに取り入れ、自社や自組織の戦略にどう活用していくのかが問われています。

 ITサービスマネジメントのフレームワークとしてITILが脚光を浴びている現在は、まさに「マネジメント」時代の到来。そんな実感が湧いてきます。

(国和徳之、榎本浩)

※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

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