ISO 20000の認証は役立つの?

itil 2006-03-10 10:31:29

2005年12月15日に、BS 15000が国際標準規格である「ISO/IEC 20000」として正式に発行されました。これを受けて、認証取得の企業が増加するものと予測されています。ここで、まずは、規格の名称について解説しておきましょう。

情報技術分野に関連した事項の標準化に関しては、電子情報分野に関する標準化の調整を行うIEC(Information Electrotechnical Commission:国際電気標準会議)と工業関連分野の規格統一や標準化を行うISO(International Organization for Standardization:国際標準化機構)が合同で審議を行うISO/IEC JTC 1(Joint Technical Committee 1:合同専門委員会1)で扱うことになっています。したがって、ITサービスマネジメントに関連したBS 15000の国際標準化はJTC 1で審議されました。よって、ISO/IEC 20000というのが正式名称です(以後は簡略化のためISO 20000と記述します)。

ということで、ITILの関連した国際規格が制定され2006年12月に発表されましたから、18ヶ月より有効ということで、2007年6月から規格が適用されることになります。BS 15000の認証をすでに取得している会社が世界中で存在しています。日本ではすでに6社が認証を取得していますが、認証取得数では韓国やインドの企業のほうが日本より多いという状況です。

ところで、『また認証を取らなければいけないのか、監査だけで年中追われているようだ。』という声も聞かれます。すでに、ISO 9000、ISO 14000それにセキュリティの認証も取っているので、ISMSがISO 27000に統合されるとそれだけでもすでに3規格、そのほかに業界が関連する規格に準拠し認証を取るとなるとさらに1つは増えるし、その上ISO 20000となると、コンサルタントと監査機関に支払うお金だけでも馬鹿にならないようです。そうすると当然のことながら、ISO 20000の認証を取得する意味は有るのか、メリットがあるのだろうか、ということが問われるようになると思います。

そこで、今回は、これらの疑問に挑戦してみたいと思います。挑戦という表現にしたのは、私自身はまだ認証にかかわったこともないし、認証に関連した資格も持っているわけではないので、私にとっては初めての論旨の展開となります。ITILの関連の規格であるBS 15000と、それに関連したBIP 0005(A Managers’ Guide to Service Management)から得た知識と経験をもとにして展開していこうと思っています。

■認証のメリットは誰が享受できるか

メリットというからには、そのメリットを享受できるのはいったい誰か、という点から考察してみましょう。まず、認証を取得した会社のプロフィールを見てみましょう。

今まで認証を取得している日本の企業は、システムソリューションの供給者すなわちシステムインテグレータが多いようです。あるいは、システム構築をした後のシステム運用も引き続き面倒を見ることをビジネスとしているMSPやASP企業が取得しているようです。つまり、ITサービスのサービス提供者といえるでしょう。

外国の認証取得した企業の特徴は、ワールドワイドにビジネスを展開している、いわゆるグローバル・カンパニーといわれているところが多いようです。業種も、電気製品製造会社、製薬会社、保険会社、証券会社など多種多様ですが、共通して言えることは、グローバルなビジネスをサポートするために必要なITサービスの重要性を認識している、といえるでしょうか。顧客が、大切なビジネスを実施できるようにするために、ITサービスの認証を必要としているということが考えられます。

ほかに取得している会社は種々ありますが、IT業界のビジネスに特化したサービスを提供している企業というのが、傾向的に把握できます。つまり、ネットワークサービス、インターネットサービス、アプリケーション開発などを専業としている企業です。ITサービスの供給をビジネスとしている企業で、言い換えれば統合的なソリューションを提供するわけではないが、得意な分野に特化し、他の企業より優れた面を強調できる企業といえるようです。

以上から、メリットを受けるのは以下です。

?ITサービスのプロバイダ(提供者)

?ITサービスの顧客

?ITサービスのサプライヤ(供給者)

■何に比較してメリットといえるか

メリットがどこから出てくるのでしょうか。何と比較してメリットと言えるようになるのでしょうか。ITILに戻って考えて見ましょう。ITILのコアの部分といわれている、サービスサポートとサービスデリバリがフォーカスしているところを見てみましょう。

サービスサポート:ビジネスへの悪影響を最小にする

サービスデリバリ:ビジネスの目的を達成できるようにする。

ビジネスが成功するように、ビジネスの効率を阻害しないように支援するということが求められていますから、顧客とITサービスのサプライヤとプロバイダがそれぞれの立場で、要件を把握できるということになります。

ビジネスを中心として考慮するようになり、それぞれが妥当な活動範囲で、得意とするサービス要件を提示できるため、顧客指向になりやすく、顧客満足による評価を目指す方向にサービスが向いていくようになるでしょう。サービスサポートは、カスタマーサティスファクションの向上を目指しているし、サービスデリバリはカスタマーリレーションシップを良好に保つことを目指しています。つまり、ビジネスを中心に位置づけることにより、顧客を重視した要件の定義を適切な範囲で、適時に、妥当な価格で提供できるようになるため、ITサービスの投資の無駄が軽減されるというメリットが出せます。

現状の混沌とした状況が整理され、会社の戦略に即したITサービスの戦術と運用が提供されることになります。そして、最終目標と目標値が設定され計測されるので、一連の活動がどのような効果を出しているかを明確に把握できます。ビジネスに関連した意思決定の支援材料には事欠かないということです。現在の混沌とした状態、会社のビジョンやポリーシーとかけ離れた重要業績評価指標(KPI)が何かの役に立つでしょうか。現状を打破すること、その方向を示せるということが、今おかれている状態と比較して、大きなメリットです。

■プロセス指向のメリット

ISO 20000はISO 9000をはじめとする種々の国際規格と関連が保たれているプロセス指向の手法がとられています。その根底にあるのは継続的改善活動にあります。継続的改善活動は、会社の文化そのものを変えていく原動力になります。つまり、マネジメントの変革、組織の変革、人材の変革を起こすことに繋がっていきます。その継続的活動を通じて、組織能力の向上、ステージアップが実現されます。その結果として以下のものが得られるということになります。

?マネジメントの変革からは『意思決定の改善』『経営方針の改善』

?組織の変革から『継続的改善の定着』、『競争優位性の確立』

?人材の変革からは『スキル向上』、『モチベーションの高揚』

しかも、プロセス自体が改善を反映しながら繰り返し使用できるわけですから、変革、改善に投入する労力も次第に減少していくでしょう。全体が最適化された状態を維持できるということは、次々とビジネスが価値を創出できるようなバリューチェーンといわれる世界がきっと待ち受けているはずです。

となると、認証のメリットを受けるのは、前述の3者だけではありませんね。ステークホルダ全員ということになってしまいますかね。ということは、認証機関とコンサルタントも当然含まれるようですね。

前田 隆

※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

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