ITILで使われる手法を理解する 〜故障樹解析 (FTA: Fault Tree Analysis) 〜

itil 2006-10-12 20:03:19

ITILの中には、種々の解析手法や分析手法を使用することが推奨されています。これらのツールは、用途と目的を正しく理解して使用すれば、有用な情報を得ることができます。これらのツールは、大別すると次の3段階に分類できるでしょう。

1.計画や企画段階での検討用の手法

2.現在の状況を把握する計測、把握する手法

3.発生した事故や事件を検証解析する手法

今回は、どのフェーズでも適用できる故障樹解析について解説していくことにします。

実をいうと、故障樹解析をきちんと理解している方々は、意外と少ないのに驚いたのです。ツリー構造の解析手法だということは、ほとんどの方が理解しているのですが、図を描いていただくと、単なる枝分かれの図になってしまうのです。系統図法も立派な手法ですが、どうも一緒のイメージをもっている方々が多いようです。

故障樹解析の特長は、ブール代数で表記できるということです。したがって、解析結果を定量的な確率として得ることができます。計画段階で論理的な可能性として把握しておけば、予測していることの定量的な評価が行えることにつながり、リスクを把握することが容易になるといった利点があります。また、何か進行中、運用中に新たなイベントが発生したときのリスクについても、シミュレーションを実施したりすることで比較的容易に把握でき、予防的な対策を用意できるといった、先手を打つのに役立つこともあります。

この解析手法は、スリーマイル島の原子力発電所の事故原因の解析調査のときに開発されたと聞いています。イベント・ツリー分析とかイベント・ツリー解析ともいわれています。基本的には確率的に、イベントが連鎖していく様子を捉えることができると手法であり、論理式や集合論的に扱うことを可能にしています。繰り返しになりますが、この手法の非常に便利なところは、論理式を扱えるということです。ブール代数といわれたりブーリアンといわれたりします。数学的な論理演算で表記できるし、電子回路のような演算素子を用いた図式化する方法もあります。この図式化された表記方法が故障樹解析です。

基本的には、4つの論理ゲートと4つのイベントで表記できます。まず論理ゲートについて解説しましょう。

ORゲート:

論理和(オア)とも言われます。入力事象がひとつ以上発生すると、結果の事象につながります。

ANDゲート:

論理積(アンド)とも言われます。入力事象が全て同時に発生した場合に、次の事象が発生することになります。

XORゲート:

排他的論理和(エクスクリュージブ・オア)とも言われます。入力事象のただひとつのみ発生し、他の事象が発生しないときにのみ、次の事象が発生することになります。

INHIBITゲート:

抑止(インヒビット)とも言われます。入力事象が全て満たされなかった場合に次の自称の発生に繋がる。

このゲートがイベントの間に記述され、イベント間の相互依存を論理的表すことができるようになっています。続いて、イベントについて解説します。

●基本イベント:故障樹の終端になる事象

●結果イベント:事象の論理演算の結果得られる中間的な事象

●条件付イベント:ある条件を満たしたときにだけ成立する事象

●トリガーイベント:他の事象を引き起こすトリガーとなる事象

ということです。

故障樹解析の参考図は、“ITIL サービスデリバリ(赤本)”のP267、または“ITIL 入門(2006年版)”のP166を参照してください。同じ図が載っていますので参考にしていただければ幸いです。

このように論理的な構成をとりながら、種々の事象を把握できていくことからいろいろな分野に適用されています。リスクマネジメントでは、定性的な分析段階で、論理的な解析を行い、それらの発生確率を捉えることで、定量的分析まで到達することができるという利用方法もあります。また、事故の事後解析では、基本イベントを把握していくことと、それらの事象の相関関係、相乗効果を把握することによって、連続的に発生するイベントが、どのようにして事故に繋がったかを検証することができます。これによって、主因、誘因、トリガーを特定していくことができるので、事故を教訓として、予防につなげるときの有効な対策、解決策を見出すことにつなげることができます。

ITILでは種々のツールや手法が出てくるのですが、詳細に解説しているわけではないので、つい名称を覚える程度で済ますことが多くなってしまいます。非常に有用なツールもありますし、ITIL以外でも使用できる汎用的な手法も多く出てきています。主要な手法について、何回か連続して、解説していくことにします。手法をうまく使うと、企画や現状分析に大いに役立つものです。それでは次回の手法の解説をご期待ください。

前田 隆

※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

SpecialPR

  • デジタル変革か?ゲームセットか?

    デジタルを駆使する破壊的なプレーヤーの出現、既存のビジネスモデルで競争力を持つ
    プレイヤーはデジタル活用による変革が迫られている。これを読めばデジタル変革の全体像がわかる!

  • ビジネスの継続的な成長を促す新たなITのビジョン

    多くの企業においてITに求められる役割が、「守り」のコスト削減から「攻め」のビジネス貢献へとシフトしつつある。その中でIBMが提唱する新たなビジョンEnterprise Hybrid ITとは?