成果主義と拙速な見える化に共通する落とし穴

米野宏明(Hiroaki Komeno) 2008-03-06 01:46:13

担当製品の Office PerformancePoint Server 2007 のラウンチ (ビジネスを立ち上げること、主として製品リリース前後のマーケティング活動を指します) が終わり、ZDNET ソリューションフォーラムを最後に落ち着くかと思っていましたが、ちょっと一息ついたらあっという間に 1 か月たち、またもやセミナーラッシュ到来。このブログのエントリーもちょっと間隔があいてしまうかもしれません。ちなみに、今週金曜日は Teradata Universe、来週 12 日は研究委員を務める日本 CFO 協会のスプレッドシート統制研究会14 日はマイクロソフト主催で PerformancePoint Server のセミナー、それが終わったら 4月 16日の Microsoft Conference 22 日の SharePoint Conference の配布資料を今月中に作成です。参加制限があったり有償だったりするものも交じっていますが、ご興味あるものがありましたらぜひご登録ください。

さて今回は、PerformancePoint Server がフォーカスする分野であるパフォーマンス マネジメントに関連して、特に大企業ではもはや当たり前となりつつあり、かつ多くの問題をはらんで見直しの機運にあるといわれる成果主義と、近年もてはやされる見える化アプローチの拙速な導入に共通する落とし穴について考えてみました。

本エントリー内では成果主義の厳密な定義を追及することに意味がないので、ここでは年功序列による組織の硬直化に対処するために導入された評価方法、ぐらいの広さでとらえてください。ご存じのとおり、バブル崩壊後に企業の高コスト体質改善のための手段として成果主義への移行が盛んとなりました。詳しくは他のジャーナルや Wikipedia あたりに譲るとして、成果主義の問題点として、評価サイクル (通常 1 年以下でしょう) より長い視野での活動が軽視される、評価基準があいまいだと不満がたまりやすくなる、格差拡大により下位層のモチベーション維持が難しくなると、いったことが挙げられているかと思います。しかしもちろんこれらは職種によって事情が異なります。成果がはっきりしている職種、たとえばかつての私の仕事である証券営業や、保険のセールス、清涼飲料水の自販機設置の営業など、同じ、もしくは差別化要因がほとんどない商品の販売競争を行っている人の場合、多くは月や日の単位でノルマが設定されており、それを達成できるかどうかのみで評価されます。私がいたころの証券会社は厳密な成果主義ではありませんでしたが、ノルマを達成できないことによる精神的なプレッシャーは相当なもので、それが日々訪れるわけですから、金銭には結びついていなくても実質的には成果主義のようなものでした。保険などの販売はほぼ完全に歩合、つまり直接金銭に結びつく成果主義です。

このような会社の営業所に共通する要素があります。ドラマなどで見たことがあると思いますが、ホワイトボードに営業マンの名前と数字や花のマークで成績書き出されている、あれです。そう、これらの会社では昔からアナログな見える化がおこなわれていました。会社から強制された仕組みというわけではなく、営業所長が営業マンを鼓舞するための運用、いわば現場力の向上のための見える化です。しかしこの方法が有効なのは、成果の尺度がはっきりしていて、かつ個々人の成果への貢献もまたはっきりしている場合に限定されます。自部門内や他部門とチームで仕事をする事務職の人の成果への貢献度を測るのは非常に難しいですし、成果そのものの定義すらできないかもしれない。間接的に売上に貢献していることは想像できるけれども、何%貢献しているかなんて誰も定義できませんし、あまりに遠いところの成果を無理やり自分の評価尺度にされても、じゃあがんばろうかという気にもなれないでしょう。

組織にとって成果が重要なのは当然なのですが、それをそのまま人材評価にするところには無理があるというより無責任すぎます。組織はその人にどうあってほしいかを先に提示する必要があります。それはつまり戦略です。

たとえば成果主義の会社であるマイクロソフトでは “Pay for Job” という言い方をします。仕事に対して対価を払うということです。私なら Product Manager という仕事ですが、その中でもいくつかレベルが分かれており、相応の仕事の質が、かなり細かい条件で分野ごとに定義されています。そしてそれぞれに対して自己評価と上司の評価を行い、ディスカッションし、製品や業務ごとに定めた他の目標の達成度合いなども加味して、最終的な評価と自己開発目標などを決めていきます。このような仕事の定義は会社の戦略により変更されるようになっており、これにより、結果だけではなく、組織が求める仕事の質、つまりは組織戦略への貢献度による評価がされるようになっています。この仕組みがある上で、数々の指標が見える化されています。これらの指標は個人の成果を直接的に評価するためのものではなく、あくまで戦略そのものの成果を測るためのものとしてあつかわれます。個人は自らの仕事の質を高めることにより戦略への貢献を約束し、指標はその約束を受けた側、すなわち戦略を与えた側が持つべきものです。

成果主義も見える化も、まず組織が従業員に戦略やプランを提示することから始めなければなりません。もちろん、組織活動はPDCA ですから、月や年単位で繰り返されていくものです。それが、マネジメント視点での効果的なプランのための成果のモニタリング、という発想になり、見える化が前向きな活動をもたらすという勘違いを引き起こします。言うまでもなく、マネジメント サイクルはただのループではなく、上にも下にもぶれる可能性のあるスパイラルです。単なる成果の監視から始めてしまえば、下向きのスパイラルが発生しやすくなります。動き出したスパイラルを止めるのは大変、やはり最初が肝心なのです。

米野宏明@マイクロソフト

※ 本エントリーの内容は筆者個人の見解に基づいており、マイクロソフトの見解を示すものではありません。

※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

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