SharePoint 2010 がもたらす BI 革新 - 第 1 話 : Excel Services によるワンストップ BI システムの展開

米野宏明(Hiroaki Komeno) 2010-02-01 09:00:00

2010年上半期中に一連の Office 2010 製品群の一部として SharePoint 2010 の提供が予定されています。このご時世にも関わらず、SharePoint 2010 の製品紹介セミナーを開けばことごとく満席になってしまうほど大きな関心をいただいています (残念ながらあと数名で満席になりそうですが 2/18 SharePoint BI を取り上げるセミナーを実施予定 ですのでご興味ございましたら & 間に合いましたらぜひ)。そしてこの新製品、企業における BI のワークスタイルを大きく変える重要な機能を搭載しています。ポータル、ECM、検索など多彩なコラボレーション機能を統合した SharePoint 2010 ですが、ここでは BI 関連機能に絞り込み、数回に分けてキーとなる要素を紹介していきたいと思います。

SharePoint 2010 で編集可能になった Excel Services

1 回目の今回は、”Excel Services” です。Excel Services は現バージョンの SharePoint Server 2007 から搭載された機能で、Excel スプレッドシートを HTML レンダリングしてポータル上に表示するものです。Excel アプリケーションやアドインなどは不要、ブラウザさえあればシートの内容を Web に表示できる便利な機能なのですが、SharePoint Server 2007 ではレンダリングされたシートへの直接書き込みはできませんでした。ところが SharePoint 2010 では Office Web Apps というブラウザ版の簡易 Office アプリケーション (ExcelWordPowerPointOneNote の各ブラウザ版が含まれる) のサービスを利用し、Web 画面上のシート上に値や関数の書き込みができるようになります。ここで Excel Services Office Web Apps に含まれる Excel Web App の違いは何?」 と疑問を持たれる方もいらっしゃると思いますが、Excel Services では、Excel Web App には含まれないデータベースへの接続やシングルサインオン、API の公開など、業務プロセス内で利用する際に有用な機能を持っています。ここに書き込みのインターフェースとして Excel Web App を統合することで、企業ニーズに耐えうるブラウザ版 Excel を実現しているのです。



[ブラウザ内に表示された編集モードの Excel Services]

ワンストップ BI システムの実現

もちろん Excel Services の編集機能は通常の Excel アプリケーションの機能性には及びませんが、書式変更なども含む基本的な編集操作は十分に行えます。これで、いろいろな可能性が広がります。たとえば、業績レポート表示および印刷 シミュレーション コミュニケーション 1 つの Web 画面上で簡単に行えるようになります。Excel アプリケーションできれいに作ったグラフや表などもそのままブラウザ画面に表示できるわけですから、ダッシュボード的なビジュアルな画面を Excel の知識だけで簡単に作成できるのです。正体は Excel ファイルですから、Excel で開けばきれいに印刷できます。またその画面上のテーブルやグラフのフィルターをインタラクティブに操作したり、特定セルの値をパラメータに使って関数処理したりすることで、リアルタイムにシミュレーションを実行することも出来ます。コメントなどを隣のセルに直接書き残すこともできます。Excel ライク、どころか Excel そのもののブラウザ版ですから、ほとんどの方がトレーニングなしで簡単に使えるでしょう。

また SharePoint なので、他の Web パーツとの連携もできます。これについての詳細は後の回に譲りますが、他のビジュアルなパーツから Excel Services の所定のセルに文字や数字を渡し、Excel の関数を使ってその値をキーに別のテーブルから系列データを取得してグラフを描画する、というようなこともできます。つまり、Excel だからこそ、コーディングの知識のないビジネスユーザーでも、簡単な Web アプリケーションを作れてしまうわけです。BI は意思決定支援の仕組みであり、意思決定の目的は適切な行動であり、その行動が企業価値を生み出していくわけですから、定量分析後の行動支援のための多種多様な仕組みを Excel Services SharePoint で自動化すれば、入口から出口までカバーする、ワンストップ型のシングル アクセス ポイント BI システムを作り上げることができます。

Excel 2010 の革新

Excel Services にスプレッドシートを提供することになる Excel 2010 自体でも、BI 関連機能が拡充されました。特に主要な拡張は以下の3つです。1 つ目は 「スパークライン」 です。これは選択したセル範囲のデータの推移を折れ線グラフにして1つのセルの背景として表示するものです。「折れ線グラフでいいのでは?」 と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、商品別業績表など大量の行がある場合、あるいは特定の系列の値だけが突出して大きい場合などは、複数の系列を 1 つの折れ線グラフにすべて放り込むと、非常に見づらいグラフになってしまいます。そこでスパークラインを使って、行ごとに時系列推移を視覚的に確認できるようにし、数値だけでは把握しづらい傾向をすぐに理解できるようにしたのです。



[条件付き書式やスパークラインで大量のデータを素早く把握]

2つ目は 「スライサー」 と呼ばれるボタン型のフィルターです。ボタン型なので、クリックするだけで複数のグラフやテーブル (シートをまたがっても OK) に同じフィルターをかけることができます。これは特に Excel Services を利用する場合に威力を発揮します。反応速度や大きさの問題で、ブラウザ画面上でグラフやテーブルの標準のフィルターを操作するのにややストレスを感じる方もいらっしゃると思いますが、スライサーがあれば、分析に不慣れな方でも簡単に操作できます。なお、Ctrl や Shift キーを使えば複数のボタンを同時に押せますし、1 つのスライサーで複数のテーブルやグラフ (シートをまたがっても可) にフィルターをかけることもできます。



[スライサーで複数のテーブルやグラフを素早くフィルター]

3つ目は What-if 機能です。ただし これは Excel に従来から搭載されているゴールシーク機能ではなく、ピボット テーブルから SQL Server Analysis Services 多次元データベースに直接値を書き込む機能を指しています。明細レベルだけではなく集計レベルに対して値を書き込むと、等額や等率、あるいは数式に従ってトップダウン配賦してくれますので、予算編成やシミュレーションなどに使っていただくことができます。これは PerformancePoint Server 2007 に搭載されていたプランニング機能 (厳密には多少手法が異なりますが) の一部を Excel 2010 が標準機能として取り込んだものです。

Excel は最も多くの方にご利用いただいているビジネス ソフトウェアだと言えますし、企業には Excel の鬼のような方がたくさんいらっしゃいます。しかし、Excel ファイルは通常 Excel アプリケーションで開いてみるまで中に何かが書かれているのか分からないという性質によって、日頃のビジネスにおいて生成され、蓄積されているシート上の有用なナレッジの多くが埋もれたままになっています。SharePoint 2010 Excel Services なら、あらかじめポータル上にペタリと貼り付けておくことができますし、電子メール メッセージの中に埋め込むことなどもできます。このような仕掛けを通じて、組織内に埋もれている情報資産をもっと広く開放することが出来れば、ただそれだけのことでも、企業価値はぐんと向上するのではないでしょうか。

本エントリーに記載する機能および画面デザインは、開発途中にあるベータ版製品に基づく内容です。今後断り無く、変更される可能がありますので、あらかじめご了承下さい。

 

※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

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