PerformancePoint Services とグラフ Web パーツ (SharePoint 2010 がもたらす BI 革新 - 第 3 話)

米野宏明(Hiroaki Komeno) 2010-02-27 23:56:46

2009年4月に、それまで別製品であった Office PerformancePoint Server 2007 が、ライセンス上は Office SharePoint Server 2007 に取り込まれました。SharePoint 2010 では “PerformancePoint Services” として機能的にも統合され、別モジュールではなく組み込みサービスの 1 つとして動作するようになります。また SharePoint 2010 には、新しいグラフ Web パーツが登場し、多種多彩なグラフを作成することができるようになりました。

PerformancePoint Services によるビジネスの俯瞰と問題の特定

PerformancePoint Services はその名が示すようにパフォーマンス マネジメントを支援するツールです。PerformancePoint Server 2007 と同様に、”Dashboard Designer” というグラフィカルな定義ツールによって作成された多層階層構造で集計ができる業績評価スコアカードや、対話操作が可能な分析グラフ、およびそれらを組み合わせて作られるダッシュボードを提供するサービスで、これらの要素は Web パーツとして SharePoint 2010 のポータル上で表示されます。パーツ間でのデータ受け渡しにも対応しており、スコアカードの特定の KPI (Key Performance Indicator) をクリックしたときに、関連するグラフが表示されたり特定の値でフィルターされたり、あるいは Excel Services をはじめとするその他のツールに対してその値を渡したりすることもできます。PerformancePointダッシュボードの構成方法や実例などについては、3月16日にマーケティング調査会社のインテージ、SI会社のインテックと3社共同で実施する「マーケティングダッシュボード」セミナーの中で紹介しますので、お時間合うようでしたらぜひご参加ください (すでに多数お申込みいただいており、製造、流通、サービス業のIT部門の方もしくはビジネス部門の意思決定者の方に限定させていただいておりますので、主催者と同業の方はお断りする可能性がかなり高いですがあらかじめご容赦ください)。

[PerformancePoint ダッシュボードと直接ドリルダウン・クロスドリル操作ができる分析グラフ]

[データがマッシュアップされたBing Mapとスコアカードのダイナミックな連携]

前バージョンとは異なり、スコアカードやグラフなどの定義情報を SharePoint 2010 のリスト内に保存することで柔軟な管理ができるようになったこと、PerformancePoint Server 2007 の前身の 1つである “ProClarity” に搭載されていた分解ツリー (Decomposition Tree) という新しいインタラクティブ分析グラフを搭載するようになりました。これはVisioが搭載しているピボット ダイアグラムと似た機能なのですが、絵の上で、集計全体から分析軸を使ってドリルダウンを進めていくことができるものです。

[分解ツリーによる集計データの構造分析]

必要な部分のみをドリルダウンしていくことができ、また分析対象を変えたときもそれまでの分析構造を引き継いで一気に末端までドリルダウンしてくれますので、ピボットテーブルやピボットグラフを使うよりも、さらに直観的に素早く目的のデータにたどり着けます。

ところで別製品だったころから、「SQL Server の BI とどう使い分けるの?」 というご質問をよく受けていましたので、ここで改めてその違いと向き不向きをご紹介します。PerformancePoint のスコアカードの最大の特徴は、その構造の柔軟性と汎用性にあります。他のツールではなかなか出来ない KPI の多重階層構造 (親子関係を持ち、子から親へ値を集計 = ロールアップができる) や、複数データソースからの値の取得、それらをビジネス ユーザーが簡単に作成できる Dashboard Designer が特徴的な機能です。

SQL Server Analysis Services にも KPI 機能が実装されているため、アウトプットだけ見れば似たようなものを作ることができます。しかしクエリ式の入力が必要など、ビジネス ユーザーが気軽に触ることを前提としてはいません。設定がデータベースにバインドされるため、ユーザーごとに閾値の設定を変えるようなことも簡単ではありません。組織全体で共通で、スコアリングのルールが頻繁に変化しないような業務プロセス監視などには最適ですが、より広範囲な数字を扱うパフォーマンス マネジメントには PerformancePoint のほうが適切です。

OWC を代替するグラフ Web パーツ

SharePoint 2010 には PerformancePoint Services の他に、新しいグラフ Web パーツが標準搭載されています。このパーツは、かつての Office Web Component (OWC) を代替する位置づけで登場したもので、SQL Server Reporting Services にも組み込まれているグラフ描画コンポーネントを使っており、ビットマップ、JPEG、PNGなどの形式のピクチャーとしてサーバー上でレンダリングした結果を表示します。OWC は 32 ビットの ActiveX コントロールだったため、ブラウザのセキュリティレベルを下げないと都度警告のポップアップが表示されたり、64 ビット環境では動作しなかったりという問題がありました。新しいグラフ Web パーツは OWC 以上に豊富なパターンのグラフをピクチャーにレンダリングして表示しますので、特別なアドインは不要です。

[SharePointに新たに搭載されたグラフ Web パーツ]

[多彩な種類のテンプレートが用意され、色やフォントなども詳細に設定可能]

これら大きく進化した可視化機能、分析機能を使用することで、重要な情報を確実に伝えるためのリッチで正確な表現が可能になります。特に BI を全社レベルで展開しようとしたとき、忙しい現場の従業員はどうしても目の前のことに集中しがちで、行動を冷静に振り返り、将来に思いをはせるような分析には時間を割かない傾向が強くなります。そしていつまでたっても慣れることがないデータ分析は、敷居が高く自分の仕事ではないもの、ととらえられてしまいます。

しかし、スコアカードであらかじめ問題点が絞り込まれており、またそれに連動するグラフなどによって分析のための下準備が整っていれば、表示されるグラフから何かを読み取ったり、それを手がかりにもう 1、2 段階気になる問題を掘り下げていったりすることも、ごく簡単に出来るようになります。ツールを押しつけてもなかなか使ってもらえるものではありませんが、こうして形がある状態で目の前に見えるものがあれば、徐々に現場の探究心がくすぐられ、BI ワークスタイルが変わっていくと思うのです。残念ながら、というべきなのか、たった1人の経営者の生産性が20%上がるよりも、現場社員全員の生産性が2%上がるほうがたいていの場合、企業収益の向上により貢献します。組織全体の情報の流れをよくすることで組織全体の生産性を上げることが、情報システムが果たすべき本来の役割です。したがって大方のユーザーにとっては、BIはツールではなくシステムであるべきなのです。

※ 本エントリーに記載する機能および画面デザインは、開発途中にあるベータ版製品に基づく内容です。今後断り無く、変更される可能がありますので、あらかじめご了承下さい。

※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]