本日 「テレワークの日」 を実行した理由

米野宏明(Hiroaki Komeno) 2012-03-19 18:00:00

本日 3月 19日を、日本マイクロソフトの 「テレワークの日」 として、本社だけでなく調布、大手町、大阪など全国の各支社のオフィスをクローズしてみた (弊社 ニュースリリース 参照)。一日のスタートの区切りとして、樋口社長にオンライン会議で朝の挨拶をしてもらった。当方はそのサポートとのちの取材対応のために午前中だけ出社し、午後は自宅に戻ってテレワークである。


 


<がらんとしたオフィス フロア>


この試みには様々な目的が設定されている。会社のオペレーションとしては BCP がまずもっての動機であった。が、実のところ、これは本企画を通すうえで当方が使った方便の 1 つに過ぎない。本当の目的は、従業員に柔軟なワークスタイルの価値を再認識してもらいその実践者として全社員にエバンジェリスト (伝道師) になってもらうこと、そして今回の成果をレポートにまとめ外部に広く公開すること、にあった。


当方は 「プロダクトマネージャー」 というロールで、製品のマーケティングおよび販売に責任を持つ立場にある。現在の担当は Microsoft Lync というユニファイド コミュニケーション製品で、ワークスタイルと密接なかかわりのある製品である。おかげさまでこの製品、ここ 1 年かなり強い引き合いをいただいている。しかしながら、本来製品が持つポテンシャルから比べると、まだまだなのだ。伝統的日本企業に長年染みついているワークスタイルは、大震災をもってしてもまだ十分な変化をみない。なかなか手ごわいのである。


日本マイクロソフトは昨年 2 月に本社を品川に移転して以来、大規模にフリーアドレス制を導入し、在宅勤務制度も拡大、かなり自由に自分の働く場所を選べるようになった。従業員満足度は高いし、従業員による生産性への評価も高い。Lync をはじめとしたプラットフォームが整備されているので、会社に来なくても生産性を落とすことがないのだ。しかしこのような話をすると、「それはマイクロソフトさんだからでしょ」 と言われる。もちろん、これは一面の真理ではある。日本マイクロソフトがテレワーク実践に有利だろうといわれるポイントは、乱暴に言うとこんな感じである:



  1. 年俸制で時間労働ではない

  2. IT リテラシーが高い

  3. 外資系なので 「そういう」 スタイルに慣れている

  4. IT インフラが整備されている

しかし、実はこれらはあまり真実をついているともいえない。


1 の年俸制であるが、一時のブームで年俸制を採用した大企業は決して少なくないはずだ。中小企業ではもちろんそんなこと言っていられない。当方も前の会社ではそうだったが、自分の働きが悪ければ如実に企業収益に反映されるわけで、自分の生活が懸かっているのである。つまりこいつは、無用な仕事を抱えることのできる一部の大企業のみの問題といえる。無用な仕事だから目を離せばきっと手を抜くに違いないのだ。有用な仕事なら、皆前向きに取り組むものだ。ということは ・・・ これ、そもそもモチベーション マネジメントの問題であって、テレワークとは無関係ということになる。これが理由でテレワークがダメだというならば、テレワークしてなくても最初からダメなのである。


2 と 3 は完全にデマである。当方はたまたま元エンジニアであるが、ノンテクのプロダクト マネージャーも実は結構いる。それにユーザーとしての IT ツールのリテラシーは、技術知識とは関係しない。データベースにめっぽう詳しいからと言って、Excel の使い手だとは限らない、ということである。また、確かに外資系だが働いているのはほとんど日本人だし、新卒率も少ない。当方も含め、ほとんどがドメスティックな企業から転職してきている。顧客はほとんどが日本企業と日本人だから、商習慣だって特殊ではない。当方は仕事柄本社とのやりとりが多いが、どちらかというとこちらのほうが例外的である。


4 は確かに、自社製品は自由に使える。PC の買い替えサイクルは平均 3 年。早いほうではあると思うが、びっくりするほど早いわけでもない。当方が普段持ち歩いているモバイル PC は実は自前なのであるが、OEM 搭載されているデバイス用ソフトウェアを除くと、主に以下のような構成である:



  1. Windows 7

  2. Interent Explorer 9

  3. Office 2010 (Lync 2010 含む)

  4. System Center 2012 Endpoint Protection

  5. Windows Live

  6. Skype

5、6 はプライベートのためのオマケで、4 までがビジネスのための基本構成である。バージョンの差異はあるだろうが、別に何か特殊なものを使っているわけでもなければ、自社製品てんこもりなわけでもない。もちろん、最新の製品のほうがセキュリティや可用性に優れているので、その面でのアドバンテージはある。しかし単一製品で実現できなくても、技術の組み合わせでどうにかなるものがほとんどなので、本気になればこれは大した障害ではない。


問題は、「テレワークできない」 理由の多くが、単一の責任者で解決できないことにある。経営、人事、業務、施設、営業、サポート、様々なステークホルダー間で明確な基準なく、歴史的に決定している事柄が実に多いのだ。当方が今回社内協業した相手は、社長および社長室、人事、施設管理、情報システム、広報、これがコアチームである。もちろん、各部門のトップには事前に合意をとっているし、全社サーベイに加え、特定部門におけるより深いサーベイを行うための調整もしている。たかだか 1 日のテレワークだけでも結構な数のステークホルダーの同意をとらなければならないのだ。これが標準的な日本企業においてはどうかと想像すると、確かに気が遠くなる。しかし逆に言えば、たかだかそれだけのことだ。別に越えられない高い壁があるわけではなく、なんだかもやっとしている、だけなのである。やってみれば当日は実にあっさりと成功するし、やってよかったという気分になれる。食わず嫌いということだ。


次のステップとして考えているのは、今度は 「みんなでやってみよう」 というきっかけを作ることである。何をやるかは今考え中。もしいいアイデアがあったらぜひご一緒に。やってみようというからには、まず自分でやってみるのが誠意であろうし、その結果がどうだったから次はこうしよう、というて提案ができるだろうというのが、今回の 「テレワークの日」 を設定した狙いなのである。

※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

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