マイクロソフトがエンタープライズ ソーシャル市場に注力する理由

米野宏明(Hiroaki Komeno) 2012-12-10 15:00:00

先日、マイクロソフトのエンタープライズ ソーシャル市場戦略について、プレス向け説明会を開催した。40名ぐらい集まっていただろうか。ZDNet でもその模様を記事にしていただいた のでぜひご覧いただきたい。


またこのテーマで 12/20 (木) 午後に、弊社本社オフィスにてセミナーを開催することにした。タイトルは「イノベーションを加速するエンタープライズ ソーシャル」。マイクロソフトの自社事例などもベースにしながら、日本企業における展開の勘所などもご紹介予定なので、お時間が合えばぜひ参加いただきたい。



余談なのだが、今回のプレス向け説明会では、当本部のアメリカ人ボスを全面にたてたので、当初は英語のスクリプトなどいろいろ用意せねばならぬのだろうとゲンナリしていた。実はこの週は、別件でノルウェー人が 2人来ていて、会議や顧客訪問、夕食に付き合うなどバタバタだったし、さらに前日の火曜日には CFO Forum というイベントでの登壇もあり、準備に割ける時間が圧倒的に不足していたのだ。ちなみにノルウェー人と夕食をとったとき、ノルウェーの名物についての話になったのであるが、つい最近まで貧しい国だったから日本のように食文化は充実していないとか、動物や魚をそのまんまに近い状態で食べるなどと言っていた。さらに、魚を地面に埋めて発酵させて、脳と目だけ吸うんだぜ、などとも言っていたのだが、常にジョークを言っているようなやつなので、どこまで本当なのかは信用できない。ご存知の方がいたら教えていただきたい。


プレス説明会の準備の話に戻る。



その外人ボスに、とりあえず作った日本語まじりの寄せ集めスライドでオリエンしてみたところ、彼の頭の中でさくっと整理がついたようで、その場でディスカッションやフィードバックももらった。さすがビル ゲイツのスピーチライターだっただけに、とても頭がいい。短い言葉と時間で理解してくれるので、ディスカッションも捗る。正直、日本人のえらいさんより手がかからなくてとても楽ちんなのである。


さてヨタが過ぎたのでそろそろ本題に入ろう。


Yammer 買収と SharePoint 2013 リリース


実は、マイクロソフトはもう何年も前から、調査会社のレポートなどでエンタープライズ ソーシャル市場のリーダーと位置づけられてきた。その中心となるのが SharePoint という製品なのだが、今年になってさらに、専業プロバイダーである Yammer を買収し、この分野でのポジションをさらに強化したのである。そしてつい先日、12月1日より、企業向けボリューム ライセンスで新バージョンの SharePoint 2013 の提供を開始、エンタープライズ ソーシャル分野を主要な価値の 1 つに据えてご提案している。今回の発表では、この 2 つのソリューションの位置づけの違いと、ライセンス統合に関する発表を行ったのである。



日本国内のお客様においても、ここ 1 年ほど、エンタープライズ ソーシャルの展開についてのご相談をいただくことが多くなった。当方も、頻繁にお客様と直接ディスカッションさせていただいている。特にこの分野は、ステップとオペレーションがとても重要である。最終的なゴールは描きやすいしまあまあ万国共通なのだが、今自分たちがどこにいて、どこからどんな順番で始めるとゴールにたどり着けるのかは、一言でいえば企業文化に依存する問題である。


当方が営業やコンサルタントなら前提はここまででよく、あとはお客様とディスカッションしながら適切な解を見つけていくことになる。今も、客先に呼ばれて出かけていけば実際そうしている。しかし当方は本来マーケターなので、こいつをもうちょっとモデル化しておかねばならない。十分に受け入れられる最大公約数の市場の形とスキームを作って、それが収益をもたらすようにするのが当方のマーケターとしての存在意義であり、営業活動との違いである。


エンタープライズ ソーシャルは既存メディアの限界を突破するが代替するものではない


エンタープライズ ソーシャルは、企業や組織内という 1 つのソーシャル ネットワークの中に、新たな別のソーシャル ネットワークを構築することでコミュニケーションを活性化し、組織全体の生産性を向上しようというアプローチである。つまり、既存のプロセスを破壊するものでも代替するものでもないということに注意が必要だ。もちろん、結果的にそうなるケースはあるだろうが、それは既存のプロセスのほうに問題があったからである。


たとえばに、マイクロ ブログを多用することで、社内での電子メールのやり取りを削減しようという期待が実際にある。いわゆる電子メールのオーバーロード問題への対策は、「PC を使わないようにしよう」 という極端なものから 「社内では IM を使おう」 というデジタルなものまでさまざま登場してきたが、課題が明らかでありショック療法と認識しているのならばともかく、「PC を使うから余計な情報を見たり発信したりするのだ」 式の短絡的な発想では、真の課題を覆い隠してしまう。無駄なメールという目の前の問題は確実に解消できるだろう。しかしその裏で失われる生産性は計り知れない。


この件に限らず、人は何か新しいものが出てくると、それが古いものを代替すると考えがちである。ビジネス プロセスを重視しがちな企業において特に顕著かもしれない。これまではそれでもよかった。オフィス オートメーションに代表される、既存プロセスのデジタル化によるコスト削減と自動化は、IT 黎明期においては現に優先すべきアプローチだったし、成果も明確に出る。パーツをより効率的な別のものに入れ替え、ぎりぎりチューンアップして膿を絞り出せば、すっきりと美しいプロセスが出来上がる。しかし、もはやデジタル化にも限界があり、また外部環境が頻繁に変わる中でいつまでも同じプロセスが通用するわけはない。せっかくデジタル化したのだから、アナログだからこその制約を頑なに守る必要などないのだ。新しいものが新しい利用シーンを生み出すことで、それがワークスタイルやライフスタイルの変化をもたらし、その結果として古いもとのバランスが変わるのである。


ソーシャルは、電子メールや IM に代表されるような、特定の相手とのプライベートなセッションの中で、非同期またはリアルタイムにメッセージ交換するようなメディアはなく、またポータルに代表されるような、場所を起点とした情報伝達メディアでもない。相手や場所といった制約にしばられず、バイラルな情報伝達を行う、今までのものとは別のコミュニケーション手段である。ソーシャルによって新しくできるようになることは何か、既存のメディアとの重複は何でどちらを取るのかはたまた連携するのか、新しくできるようになったことがワークスタイルにどう影響を与え次に何が起こるのか、を考えていく必要があるのだ。


エンタープライズ ソーシャル市場に注力する理由


それで、ようやく本エントリーのタイトルにある 「マイクロソフトが注力する理由」 という話に到達するわけなのだが、エンタープライズソーシャルは、前述のような既存のコミュニケーション メディアの欠点を補完し、それらをより効果的に利用いただくためのアドインであることにある。最終的に目指すのは、組織の内部に様々なコミュニティが生みだされ、コミュニティに内における活発なディスカッションと、コミュニティをまたぐ知識の伝達が自発的に行われ、組織の価値にフィードバックされていく姿である。


何がどう変わるかは、現在のコミュニケーション システムをどのような思想のもとに展開し、どのように使われているかに依存する。米国企業と日本企業ではこの辺りの事情が違うし、しかし参考にできる部分もある。これ以上続けて書くとブログではなくなってしまうので、興味がある方はぜひ 12/20 のセミナーにご参加いただきたい

※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

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