イベントレポート - 早期導入事例にみる SharePoint の価値

米野宏明(Hiroaki Komeno)

2013-04-30 09:30

去る 4 月 26 日(金)、恵比寿ウェスティンホテルにて、日経 BP 社主催による 「最新 ICT で実現するワークスタイル変革の威力」セミナーを開催した。テーマは今期リリースした新しい Office、および Office 365 関連製品サービスによる、ワークスタイル変革ソリューションの紹介、である。基調講演として、カネカ様、トヨタ自動車様にそれぞれユーザー事例登壇いただき、またパートナー ソリューションを含む多数のセッションと展示も行われた。補助いすを出さなければならないほどの盛況ぶりだった。



天井高もあってなかなかいい会場。同僚はここで披露宴を挙げたらしい。


そしてトヨタ自動車様のセッションが最も参加者数が多かったのだが、実はその 1 時間前に、同じ会場でプレス向け説明会も実施している。トヨタ自動車様では、SharePoint 2013 を Windows Azure 仮想マシン (IaaS) で稼働させ、現在オンプレミス環境でサービス提供している Gazoo.com を移行しようとしている。Azure 仮想マシンはつい先日リリースしたばかりで、この組み合わせでの運用は世界初である。5 月末にカット オーバー予定なのだが、今回はその計画を初めて公開したのだ。数あるサービスの 1 つながらそのインパクトは大きく、GW 直前にもかかわらず多くのメディアに取り上げてもらった(。。。たとえば ZDNet Japan の記事。しかしタイトルが SharePoint ではなく Azure  なのがちょっと悲しい。。。)。プレス説明会なので、終了後写真撮影や囲み取材の機会があるのだが、来場したほぼすべての記者が講演者のまわりにどやっと集まっていた。最近あまり見かけない絵である。



席で記事を書いている人もいたが、多くの記者が囲みはじめる。
数社なら別室があったんだけども、これだけ入る場所はここしかなかった。


さてこのセミナーを実施するにあたり、先のトヨタ様ほかいくつかの導入事例を公開したため、せっかくであるから、このブログで次回以降、そのいくつかを紹介してみたい。ただちょっと分野が偏りがちなので、事例公開が間に合わなかった分野についても、名前は伏せつつ把握しているケースをベースに紹介できればと思う。また事例だけを紹介してみても、各社の事情は千差万別であるから、基本的な製品やソリューションの 「ビジョンと価値」 を中心に注目すべきポイントなどを紹介してみたいと思う。途中で気が変わるかもしれないが、以下のような内容を考えている:



  • エンタープライズ ソーシャル編

  • Web コンテンツ管理編

  • アプリケーション プラットフォーム編

  • エンタープライズ コンテンツ管理編

  • エンタープライズ検索編

  • ビジネス インテリジェンス編

システム導入における 「ビジョン」 の重要性


システム選定において前述の 「ビジョン」 がとても重要である。SharePoint 2013 早期導入ユーザーの方々は皆様一様にビジョナリーだった。


ソリューションとはユーザーの課題を解決するものだが、直面する課題にとらわれすぎると、刻々と変化するビジネス環境に場当たり的に対応することになりかねない。車や自転車の運転と同じで、近くばかり見ているとハンドルを取られてしまう。組織やビジネスを長期的にどうしていきたいのかという遠望、つまりビジョンが必要だ。少なくとも当社が Office として提供するのはある一定の完成度を持った製品およびサービスであり、これらが目指すビジョンが自社のビジョンに一致していればその機能を最大活用できるはずだし、正反対なのであれば採用すべきではない。もちろん両極端である可能性はかなり低いと思われるので、一致しない部分をどう扱うのか、が展開における考慮点となる。一致させるためにアドインを開発したりカスタマイズしたりする、というのが短期的な解決方法だが、コストやバージョン管理の問題が付きまとう。部外者からすると些細な問題と思えるようなものに膨大なコストをかけて開発するケースを見かけるが、ビジョンが不明瞭だとこうした開発に依存しやすくなる。


たとえば前期まで当方が担当していた Microsoft Lync には、IM、オンライン会議、IP 電話機能が統合されているのだが、この製品、既存のアナログ電話の代替とだけ考えると、いくつか不都合が見えてくる。典型的な日本のビジネスフォンでは、遠くのデスクで鳴っている電話を、自分の電話機で光っているボタンを押すだけでピックアップできる、という機能がある。Lync でも他人の電話をとる方法はあるのだが、ボタンが光る仕掛けではない。Lync 対応電話機の拡張ボタンを使ったり、インターフェースをカスタマイズしたりということで対応はできるが、しかしここまで来ると本末転倒である。


ほとんどのお客様では、Lync の導入検討のきっかけは、ノート PC にすべてのビジネス コミュニケーションを統合してモビリティを向上し、生産性向上や BCP の観点で、柔軟なワークスタイルを実現するというビジョンに共感いただくところから始まる。だからこの想定したフレキシブル ワークスタイルが実現すれば、遠くで鳴っている他人の電話をとるシーンなどなくなるはずなのだ。そもそも、これだけビジネスが細分化しスピードが求められている時代に、よく事情が分かっていない他部門の人間が顧客からのコールをとり、伝言を言付かってメモを担当者の机に貼っておくことに、実質的な価値などないはずである。もちろん、現状のスタイルをできるだけ変えたくないというエンド ユーザーの気持ちは理解できる。しかし、モビリティの本来の価値、伝言ゲームの実質的価値から考えれば、モバイル PC で本人がピックアップする確率を高め、それがかなわない場合には携帯やボイス メールへ転送して本人ができるだけ早くその内容を知り、最悪でも事情を知っている代理ユーザーやチーム メンバーに転送するほうが圧倒的に理に適っている。そもそも、固定電話機のボタンは、ハードウェアではそうした複雑なルーチンを組むことができないことから生み出された、技術的な制約に過ぎないのだから、そこに縛られる必要などない。エンド ユーザーにシステムのビジョンを理解してもらうことに重きを置くべきなのである。


次回以降で紹介していく事例は、SharePoint 2013 の早期導入、である。つまり、前例がない中で SharePoint 2013 のビジョンに共感いただき、遠くを見つめながら着手いただいたユーザーの方々だ。今日この段階で運用が開始しているということは、いわゆるベータ版の段階から計画いただいているのだ。その段階ではまだ安定性に欠けていたし、仕様も完全に確定していたわけでもない。それでもなおこのプラットフォームに賭けていただいたのは、個々の機能そのものではなく、SharePoint 2013 が目指そうとしているビジョンに対してなのである。裏を返せば、個々のユーザーの方々には、SharePoint 2013 が採用されたシステムに対して、明確なビジョンを持っていたのである。

※このエントリはZDNETブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNET編集部の見解・意向を示すものではありません。

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