スパム対策が国境を越え、OECDが政府、企業との連携強化へ

呉井嬢次(Johji Kurei)

2006-05-14 15:19

 OECDがスパム対策に動き出した。スパムによる経済的な損失は、OECDにとって脅威と認識しており、OECD加盟国政府に対して理解を求めている。10年以上前から存在するスパムが、今になって問題視されたのか、やるべき対策を放置するのは得策ではない。

スパムとは何か

 簡単にスパムについて説明しよう。電子メールを頻繁に使うようになると、受信した電子メールの中に見覚えのない送信者からのメールが紛れ込むようになる。そうした中身には、出会い系サイトへの誘い、薬や違法ソフトの販売などが多い。このように勝手に送りつけてくるメールの総称をスパムメール(またはスパム)と呼ばれる。

 SPAMのような無駄なメールが増加すると、いろいろな問題が起きる。まず、スパムは不特定多数に大量の電子メールを送るので、インターネットではネットワークに占める負荷が増加する。そもそもネットワークにはデータが流れる上限が決まっており、ホームページの閲覧、IP電話、チャットなども一緒に同じネットワークを利用している。スパムがネットワークを占有すれば、他のサービスの遅延が起きる。

 また、利用者の多いプロバイダ、大学、企業では、大量のスパムを受信する。1通あたりわずか100バイトでも、毎日数十通がそれぞれ1000人に届くと、メールを保管するハードディスクは一杯になる。これを避ける為に、スパム対策としてのディスクの増設が必要になる。スパム対策費用の負担は、当然ながら受信側となる(最終的に利用料金の値上げにつながるだろう)。最後に、スパムを受信した者には、削除する手間が増える。他にも弊害はあるが、このような理由から、スパムは厄介な問題となっている。

なぜスパムは無くならないのか

 宅配や郵便物であれば、1通あたり送料を送信者が負担する。1通80円として、1000人に送るなら8万円だ。これに対し、ADSLでインタネットに常時接続している場合、電子メールの送信コストはかからない。厳密に言えば、毎月のプロバイダ利用料金がかかるので数千円となるが、1ヶ月間で500万人以上にスパムを送ることができる。つまりスパムでは1通あたりの送信費用はゼロに近い。

 スパムを送信する人は、スパム専用ソフトを使っている。インターネットではスパム専用ソフトも販売されている。送信相手の電子メールリストのファイルを指定すれば、後は自動的にスパムを送ってくれる。こうしたスパムの手軽さもあり、増え続けているのだ。

OECDがスパムを脅威とする理由

 スパムは10年以上前から存在したが、なぜ今頃になってOECEはスパムを脅威と認め、対策に動き出したのだろうか。最大の理由は経済犯罪に影響を及ぼす可能性が高まっていることだ。OECDはサイバー犯罪に対する取り組みを進めているが、日本を含むOECD加盟国でも、サイバー犯罪に対する理解はあるものの、法的な整備はなかなか進んでいない。インターネットの安全を確保することを期待する人が大勢いる一方で、法案に反対する人が多い為だ(現在でも不正アクセス禁止法に反対するホームページはたくさんあるが、ハイテク犯罪の抑止効果につながっていることは犯罪統計からも明らかだ)。

 その一方で、スパムを使ってフィッシング詐欺による被害は各国に広がりをみせている。興味深いことに、普通の人より情報セキュリティを多少知っていると思っている人が被害に遭っている。それだけスパムに関連する技術レベルは高くなってきている、とは断言できないが、脅威は増大していることは間違いない。OECDが各国政府、企業に連携を強化しているのは、この為だ。OECDは昨年にもスパムに関するレポートを発表している。昨年では発展途上国におけるスパムの影響を報告していたが、今年の発表では一歩踏み込んだ内容となっていることがわかる。

スパムを防止する方法

 最近ではスパム対策ソフトが販売されているので、パソコンにインストールするのがお勧めである。また、一部のプロバイダーは、スパム駆除サービスを提供している。両者は自動的にスパムを削除してくれる。また、スパムに対しては、もっと迷惑を被っている人達は別な方法をとっている。過激な方法としては、スパム専用ソフトウエアの脆弱性を見つけ、スパムの発信を強制的に中止させたり、スパム送信用アドレス自身を不能にさせる方法もある。過激な方法は勧めないが、スパムの問題を解決する方法は複数あり、放置せず、対策の中から自分にあった方法を選択することが大切だ。

OECD
http://www.oecd.org/

※このエントリはZDNETブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNET編集部の見解・意向を示すものではありません。

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