携帯電話の機能と電子ブロック

前川賢治(Kenji Maekawa)

2008-01-18 21:50

 ちょっと前の話しですが、インターネットサイトのgooが「携帯電話の機能でほとんど使用していないものランキング」のアンケート結果を発表しました。それによると、

1位:ワンセグ関連のAV入出力機能

2位:Word/Excel/PDFビューワー

3位:お財布機能

4位:キャッチホン

5位:テレビ番組ガイド

などの機能はあまり使われていないとのこと。鳴り物入りのAV機能、PC機能、お財布機能の三つは人気がないようです。

 最近の携帯電話のカタログを見ると、どの機種も機能はテンコ盛り。すべてを必要とする利用者がそれほど多いとも思えませんから、どうしても使われない機能が生じてしまうことは仕方のないことかも知れません。機能が限定されたシンプルな携帯を探すほうが難しくなっているくらいですから。

 ただ、機能を作り込んでいるメーカーからすると、もっと使って!というのが切実な思いではないでしょうか。徹夜して開発した機能がランキングに登場したとなれば、担当者としてもがっかりしてしまいます。

 僕も経験がありますが、作る側としては機能はどんどん増やしたほうが比較的楽なんですね。商品が横並びになっていればなおさらです。次のモデルでは機能を大幅に削ります、なんて開発会議で言おうものなら、あちこちの部署から非難が飛んできます。ですが、お客様の立場からは、自分が使う機能以外は要らないよ、ってなことになります。

 そのギャップを埋めるのは何だろう、と考えたときに、子供の頃に流行った「電子ブロック」が思い浮かびます。トランジスタや抵抗などの部品が組み込まれた透明なブロックを組み合わせると、ラジオやウソ発見器ができあがるという優れモノでした(余談ですが最近復刻されて品切れが続いているようです)。

 今、ソフトウェアの作り方が、このような「電子ブロック」的なものに変化しつつあります。ひとつはSOAと略される「サービス指向アーキテクチャ」。考え方自体は、昔からあるけれども、ソフトウェアの機能を「サービス」という単位でまとめて、サービスを柔軟に組み合わることで全体の機能を作り込んでいこうという方法。スクラッチから開発する手法に比べて、ビジネスのスピードに合わせた迅速な開発が可能になるとされています。

 もう一つはSaaS(Software as a Service)。従来はASP(Application Service Provider)と呼ばれていた形式に近いものですが、ウェブを通じてアプリケーション機能を提供しようという仕組みです。複数のSaaSを「マッシュアップ」(混合)することで新たな可能性が生まれると期待されています。

 ということで、携帯電話も、「電子ブロック」や「サービス」を組み合わせるように、機能ごとにオーダーメイドで買える時代が来るかもしれません。携帯電話に限らず、お客様の立場で考え、究極的にひとりひとりが違う機能の製品を使うことを想定すると、開発、販売、価格の設定、サポートなど、すべてのプロセスを見直さなければならなくなるかも知れません。でもそれは、すごい世界になるようにも思いますが、果たしてどうなるでしょうか。

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前川@ドリーム・アーツ

※このエントリはZDNETブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNET編集部の見解・意向を示すものではありません。

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