「オヤジ言葉」に、歴史有り

前川賢治(Kenji Maekawa) 2009-10-22 11:00:55

僕は趣味で下手くそなバンド活動をやっているのだが、その仲間には若い連中も多く(ライブの後で挨拶されたメンバーのお母さんが僕と同い年だったときはかなりショックを受けた)練習やライブの打ち上げで飲みに行くと、僕はメンバーに随分とオヤジ扱いを受ける。

先日も食事に行った際に、僕が「スパゲティ!」と注文すると、みんなの注文をまとめてくれた女の子に「オーケー、マイケルはパスタね。」と言い換えられてしまった。(ちなみに、バンド仲間から僕はマイケルと呼ばれているのである。汗;)
彼女に言わせると「スパゲティ」はオヤジ臭い単語で、「パスタ」と言うのが正解らしいのである。スパゲティとパスタは何が違うのだと思うが、彼女的には、「ジーパン」は「デニム」が正解で、「ズボン」は「パンツ」が正解なのである。ズボンがパンツだとすると下着のパンツは何と呼ぶのだ?パンツの下に穿くパンツとは世の中に混乱を招くだけではないか?と反論を試みるが、まるで相手にされない。

そういえば、コンピュータの世界でも入力記号の読み方に、カッコいい読み方とダサい読み方がある。例えば、ピリオド(.)のことをインテリプログラマは「ドット」(英語の発音の良い人だと「ダッ」に聞こえる)と読むが、僕ら叩き上げプログラマは「ポチ」と読む。また、波線符号(〜)のことをインテリプログラマは「チルダ」(英語の発音の良い人だと「ティルデ」に聞こえる)と読むが、僕らへっぽこプログラマは「にょろ」と読む。

記号の読み方で思い出したが、僕らが入社した当時、大型汎用機でジョブを実行するためにはJCLを紙のパンチカードに打ってコンピュータに読み込ませる必要があり、先輩から「このJCL切っといてね」などと頼まれることがよくあった。
JCLの行の先頭にはスラッシュ2つ(//)を入力するのが決まりで、これは普通「すらすら」と読むのであるが、一人だけ「しゃらしゃら」と読む先輩がいた。恐らく斜線とスラッシュを組み合わせた「斜ラ」のつもりだったのだろうが、新人の僕には何のことか分からなくて「しゃらしゃら」って何ですか?と聞いてしまったことがある。(そもそも「JCLを切る」などという言葉が今や死語となったが、端末のことをテレビと呼ぶおじさんが結構いた時代の話である。)

なにしろコンピュータがまだ特別な存在であった当時は、今と違って普通の人がコンピュータ用語を使うことはなかったので、それまでに聞いたことのないコンピュータ用語に加えて、ルー大柴のようにやたらと英単語や略称が挟まれる先輩達の会話は、まるで宇宙語のようで僕には全く理解できなかった。世の中の一般的な会話で使われているような英単語でさえ、恥ずかしながら当時の僕はその単語の意味すら知らなかったのである。参加した会議中に出てきた意味の分からない単語を書き出すだけでノートが一杯になった。そんな僕を見て当時の部長は、「お前は本当に学生時代に勉強してなかったんだなぁ」とあきれていた。

そんな20数年前の僕が、その言葉の意味すら知らなくて恥ずかしい思いをしたものの一つに「モチベーション」という単語がある。今は誰もがよく使っている言葉ではあるが、当時は普通の会話の中で「モチベーション」なんて滅多に使われていなかったと記憶しているのだが、僕だけが知らなかった可能性は相当高い。そんなお馬鹿な僕も、数年後にはいかにも最初から英語が堪能であったかのようなハッタリをかまして仕事をすることになる訳だから世の中とは恐ろしいものである。

しかし、最近では普通の会話の中でやたらと「モチベーション」という言葉が使われるようになった。そんな若い人達のモチベーション談議を聞くにつけ、自分のモチベーションが上がらないのは自分自身の問題であって、誰かが何かをしてくれないことが問題であるかの如く自分以外の原因を探し出すべきことではないぞ。と思ってしまうのは、新人類と呼ばれ、「やる気がないんならさっさと辞めろ!」と怒鳴られていた僕らも、いつの間にか一人前のオヤジになったということだろうか。
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前川@ドリーム・アーツ

 

※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

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