三谷くんの1球

前川賢治(Kenji Maekawa) 2010-01-14 13:14:10

明けましておめでとうございます。お正月とその後の3連休が終わってから、職場は通常モードに切り替わり、2010年の業務がスタートした感じですね。

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3連休の最後の日、僕はまだお正月のダラダラモードが続いた状態で、朝から成人の日の番組をテレビで見ていたのだが、なんと今年の新成人は平成生まれではないか!
昭和が平成に変わったのは、僕が社会人になった後である。そのとき生まれた赤ちゃんが二十歳になり、それぞれの壁にぶち当たりながらも一歩ずつ成長していく姿をテレビで見ていると、よし自分も頑張ろう!と気持ちになり、お正月のダラダラモードから通常モードへ切り替える良いきっかけになった。頑張れ!平成生まれの新成人。

そんな頑張っている若者の姿を見ていたら、中学1年生のときにクラスメートだった三谷君のことを思い出した。

三谷君はバレーボールが好きで、中学生になってからバレーボール部に入ったのだが、身長も低くて太っているし、運動神経も良くないし、なにしろ何をやってもドン臭いのである。少なくとも、バレーボール部には似つかわしくない体型であった。しかも、彼にとって運の悪いことに、僕らの中学校はやたらとバレーボール部が強い学校で、全国大会の常連校であり、広島の県大会では常に優勝を争っているようなチームで、どう考えても三谷君が試合に出られる可能性はないように思われた。三谷君の万年玉拾いの座は、入部した時点で確定したようなものである。

しかし、三谷君は1日も練習を休むことはなかった。毎朝、朝練が終わって物凄い汗をかいてクラスに入ってくるのだが、僕らはちょっとドン臭い三谷君のことを馬鹿にして、「なんで玉拾いのお前がそんなに汗をかくんじゃい」などと冷やかしたものである。

ところが、3年生になって、クラスマッチのバレーボール大会で見た三谷君のサーブには驚いた。彼のサーブは無回転で飛んできて凄い変化をするのである。野球でいうナックルボールのようで、予想できない変化をするのだ。彼に聞いたところ、ボールのへそをうまく利用するらしいが、誰にも真似できない技であった。

果たして、三谷君は3年生で県大会のベンチ入りメンバーに選出された。そして、県大会の決勝戦で、試合の流れを決める大事な場面でピンチサーバーとして出場し、見事に相手のレシーブを崩してチームに流れを引き込んだのである。
僕はその試合をテレビで見ていたのだが、三谷君の努力が報われたことが自分のことのように嬉しかったことを覚えている。そして、自分は特に努力している訳でもなく、普通に毎日をこなしているだけのくせに、三谷君を馬鹿にしていたことを恥ずかしいと思った。

この年、我らが広島カープは「江夏の奇跡の21球」で日本一に輝いたが、僕にとって「三谷くんの1球」は「江夏の21球」と同じくらい強いインパクトで記憶に残っている。

ことさら自分をアピールする訳でもなく、地道に努力を続けられる人間を本当に尊敬するし、僕はそんな人間が大好きである。そして自分もそのような種類の人間でありたいと思う。

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前川@ドリーム・アーツ

 

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