数値目標と価値目標

前川賢治(Kenji Maekawa) 2011-07-12 16:00:00

何とも暑い日が続く中で、どこに行っても節電対策でエアコンが止まっていたりして、「暑い、暑いぞ~」というのが口癖のようになっている今日この頃です。


社会の一員である僕らの会社でもやはり15%の節電対策を実施する必要がある訳で、6月まではオフィスのエアコンを入れてもらえず、暑がりの僕はほとんどミイラ化していたのですが、社内で最も電力を消費していたサーバールームを一つ閉鎖することで15%以上の節電目標をクリアできたので、今はエアコンを入れてもらえるようになり、普通に仕事ができるようになりました。


改めて考えてみると、サーバールームの中には、本当は既に必要なくなった機器や、他と共有できるサーバーや、本来クラウド環境に移行すべきサーバーが相当数あった訳ですが、各所管部署に確認したり、データを移行したりするのが面倒な上、現状動いている(と思われている?)システムは、余計なことをして問題が発生するようなことはやりたくないという心理が働くので、知らない間にどんどんサーバーが増殖していったというのが実情だったと思います。


今回の節電対策で業務管理部から、最も消費電力の高いサーバールームを1つ閉鎖できれば、15%の目標をクリアできるので、サーバールームが閉鎖できたらエアコンを使用しても良いと言われると、これは是が非でも何とかしようと思う訳で、これまでなら「そんなの無理だよ」と言っていたものが、実際には一カ月足らずでサーバーの統合・移行が完了して、現在は何事もなかったかのように業務が動いているのだから不思議です。


いろんな意味で節電はすべきだという認識はあったものの、政府や東電から発表される様々なデータや統計情報をみても、本当のところなぜ15%の節電が必要なのかはよく分からないところもありますが、理屈はともかく15%という明確な数値目標をクリアしなければエアコンが使えないという危機感で、これまでのしがらみをとり払うきっかけになったということは間違いないようです。



明確な数値目標というのは以下の点で、確かにツールとして有効な面があると思う。


・単純で覚えやすい
・みんなで目標を共有しやすい
・達成状況を把握しやすい


特に短期的な目標として数値目標を設定し、その目標が達成できたら何かができるというような条件が付く場合は、みんなで同じ目標を目指して協力することで、これまで無理だと言っていたことを意外にあっさり突破できたりすることもあるので面白いものである。


ただし、明確な数値目標を設定して、その達成状況をモニタリングしておけば一定の成果を継続して得られるかというと、そうでもないところが世の中は単純ではない。


どうも数値目標という奴は、時間の経過と共に擬態する性質を持っているようで、知らない間に本来の目的から主役の座を奪おうとする寄生虫のような一面もあるようだ。


すなわち、数値そのものは目的になり得ない訳だから、数値目標を生み出した本来の目的があるはずなのだが、いつの間にか数値そのものが目的化したり、レポートの中ではうまい報告を飾りたてて主役の座を奪ったりする場合があるので、常に価値目標の方が主役であることを忘れないように、意識的な取り組みや工夫が必要だろうと思う。


例えば、僕らの会社でも日々モニタリングされている数値目標の中で、ともすれば数値が擬態し、取り組みが形骸化しやすいものについて考えてみる。


■営業のセールスコール:
営業に対してセールスコールの目標値が設定された当初は、目標を達成できないことの方が多かったが、今では常に目標値がクリアされているという報告が週次ミーティングで報告される。知らず知らずの間に、カウント方法が狡猾になっただけということはないだろうか?


営業チームでは、実際の営業活動から9時間以内にレポートを登録すること、また、活動レポートが報告のための報告にならないように、営業マン本人がどう思い、どう感じたかを記入する「所感」欄を必ず記入するように指導しているようである。
確かに、活動の報告内容もさることながら、営業マン自身の主観から、温度感や匂いを感じることが多い気がする。


■イベントのアンケート集計:
イベントを開催した際のアンケート結果をグラフにすると、常に満足度が高かったということになる。イベントに来てくださる方も余程のことがない限り、「非常に良かった」か「まあまあ良かった」に○を付けるもので、「あまり良くなかった」や「不満」に○を付ける人は少なく、大抵の場合、満足度の高い集計結果となることは想像に難くない。


マーケティングチームでは、イベントには業務的に関係ない社員に対しても、順繰りでイベント運営の役割を割り振ることで、全員がその場に参加する必然性を作り出すように毎回工夫をしているようである。
確かに、どんなレポートで結果を知らされるよりも、普段は直接お客さんに会う機会がないスタッフが、お客さんが我々に対して期待を持ってくださっている空気を直接感じることで、価値目標を持てるようになると思う。


■品質管理の指標:
リリース判定会議などのレポートでは、大抵の場合、性能試験の結果やバグ収束率の推移など、すべての社内基準値を満たしていることが報告されるが、やたらと難しげな数値の説明がある場合は、基準値をクリアするためのトリックが隠されていることもあるので要注意である。社内の規定や基準値はあくまでもミスや漏れをチェックする仕組みとして最低限必要なハードルであり、自分が作ったものに対する思い入れもなく、規定や基準値をクリアすればよいと考えるならば、その人は開発業務に携わるべきではない。ミスやチェック漏れ以前の問題である。


このような場合、僕はものすごく不機嫌になり、皮肉を連発したり怒ったりする。
確かに、これは最も幼稚な対策である…



要するに、いつも良い結果報告がされるような数値というのは、数値目標そのものが形骸化している一つの兆候なのではないだろうか。


まだまだ僕らはあまり大きなことを言える立場でもないが、それでも、最終的にはどうしたらお客さんの役に立てるだろうか?どうしたらお客さんの期待に応えられるだろうか?ということを軸にしないと、どんな数値目標もいずれ嘘になると思う。


---------------------------------------------
前川@ドリーム・アーツ

※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]