喉元過ぎても熱さを忘れないように

前川賢治(Kenji Maekawa) 2011-08-12 10:30:00

先日、東洋経済新報社主催で「東日本大震災からの教訓」(~想定外の危機を乗り越えるための事業継続計画・マネジメント~)というセミナーを行いました。予想以上に申し込みがあり、大変多くの方にセミナーに参加して頂きました。会場では、皆さんが東日本大震災後の対策を真剣に考えていらっしゃることを改めて実感しました。


震災から五か月が経過しましたが、その間に僕たちもいろんなお客さんから、震災が発生したときに実際に社内で何があったか、何がうまくいって何がうまくいかなかったか、またその反省を踏まえて、今後どうしようと思っているかなどの相談を受ける機会が多く、一つ一つのアイディアについて、なるほどなぁと思うと同時に、特に災害時の初動フェーズの対策については、企業同士で「競争」するところではなく「協創」すべきテーマなのではないだろうか、それぞれが個別に対応策を練って準備するよりも、みんなの知恵を集めて、具現化した仕組みを共同で使用できるサービスとして提供できれば良いのではないかと考えるようになりました。


それで、災害時の初動フェーズにあたる緊急事態管理については、個別にお客さんの要件をシステム化やパッケージ化するのではなく、お客さん同士でもITシステムの範囲を超えたディスカッションを継続でき、みんなの協働・協創で対策を「育成」していくBaaS (Best-practice as a Service) という形でサービスを開始できるように、現在準備を進めているところです。



今回の大震災前でも、1995年の阪神淡路大震災の経験から、社員の安否確認を行う仕組みが必要であるということで作られた第一世代の安否確認システムやその他の災害時プランが、多くの会社で導入されていました。しかし、今回の東日本大震災が発生した際に実際はどうであったかについて、お客さんから聞いた話の一部をご紹介します。システム以前に考えておくべきことの方が多いと思いますが、ここではシステムに関係することの一部だけをご紹介します。




  • 安否確認システムから配信されるメールが携帯電話に届かなかったため、安否確認ができなかった。(安否確認システム自体は使用できたのだが、メールで安否確認システムのURLを通知するようになっており、直接アクセスする方法が分からなかったため)

  • 電話の自動応答で安否を確認するシステムは電話が通じないので使えなかった。さらに、自動応答システムは安否の確認ができるまで自動的に再コールするので、翌日の明け方になって寝ているのにジャンジャン電話がなって大変不評であった。

  • 社員に緊急時の電話連絡先(自動応答システム)などが書かれている災害時カードを配布していたが外出先から携帯電話が使えないので全く意味がなかった。

  • 中央で安否情報を集中管理するのは無理があった。普段から自分が一緒に仕事をしているグループ内で安否を相互に確認し合えるSNS的な仕組みが現実的ではないか?TwitterやFacebookが有効だったのもうなずける。

  • 安否情報は管理者のみが確認できるようになっており共有されていなかったため、何度も何度も別々に電話がかかったりして大変不評であった。また、現場では安否の状況がリアルタイムに把握できず不安が広がった。

  • 実際に被害があったのに機械的な自動応答のシステムに被害状況を報告するのはなんとも悲しい気持ちになる。

  • 出張先から家族に連絡が取れず不安であった。社内の仲間が自分の家族の安否を確認して状況を代理登録できる仕組みがあり、自分の家族の安否が確認できていたらどんなに安心できただろう。

  • そもそも地震が発生した時点で緊急時モードのスイッチを入れる判断ができなかった。または、震度5以上の地震が発生した場合は、自動で安否確認のメールが送信される仕組みになっていたが、今回は何度も何度も震度5以上の余震が発生した。

  • 普段使っていないシステムを緊急時にうまく使えなかったので、やはり日頃の訓練が必要であると実感した。

  • 災害時だけでなく普段の緊急連絡ツールとしても使えるようにできないか?または、グループウェアのスケジューラなど普段使いのツールに連携できないのか?

  • 業務用のポータルが通常業務の情報集約に最適化されているため、災害時には災害時用の情報が集約された災害時ポータルが必要である。

  • 帰宅指示や自宅待機など随時決定される情報を全社員に伝える仕組みも災害時ポータルに欲しい。この場合、連絡・通知の宛先は災害時用に最適化された内容(地域など)で指定できるようにしてほしい。

  • 災害時ポータルは普段使っていなければ、いざという時にアクセスする方法が分からないので、普段は業務以外の情報(社員の家族に関係する情報や福利厚生の情報など)を発信する場として使っておけるようにしたらどうか。

  • 社員の安否だけでなく、各事業所、営業所の被災状況、稼働状況や取引先の状況を一元的に共有するシステムがあればよかった。

  • 特に被災地では一方通行でもよいので、会社に情報を投げられるTwitterのような手段が欲しかった。会社で自分の状況を見てくれているということだけでも精神的にも安心できる。

  • まずは雑多な情報も含めて現場の社員から上がってくる一次情報をすべてタイムラインで表示できて、簡易に情報を投げられる口を用意したい。(災害時専用 Twitter)

  • 現場の判断で決定した内容を登録する専用の掲示板があれば良いのではないか?他部署の判断や活動を自部署の判断材料にすることで自律的な行動を促進できる。

  • 現場判断での活動が記録されておらず、伝票その他が後から確認できない状態であった。通常の承認処理を通さない現場判断での出金などを記録しておける仕組み、あるいは通常とは違う簡易な承認処理システムが必要である。

などなど…



豊かな美しい自然を持つと同時に、地震その他の自然災害と共生しなければならない宿命を背負った日本において、想定外の事態を経験した上で得た教訓や知恵をみんなで共有し、システムに限らず、それぞれの会社での事業継続計画に活かせる場を「日の丸BCM」というBaaSとして提供できればと思っています。


---------------------------------------------
前川@ドリーム・アーツ

※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]