先月は5年ぶりに大連のオフィスに出張しました。5年前と比べると、大連の街を走っている車の種類が少し変わったような気がします。ベンツ、BMW、レクサスといった高級車が目立って増え、なんだかみんないい車に乗ってるなぁという印象を持ちました。ただし、運転の荒さだけはあまり変わっていないようで、タクシーに乗っていても、思わず「危ない!」と叫びそうになるような無理な割り込みには閉口します。
東京~大連の飛行時間は3時間程度ですが、それでも機内で落ち着いてあれやこれや考えを巡らせることができるので、じっくり頭の中を整理できたり、ちょっとしたアイディアを思いついたりして、出張の移動時間というのも、手を止めて考える時間ができるという意味では悪くないものだと思いました。
最近は電車の中でも、食事をしている時でも、オフィスビルのエレベータの中でもスマホに向かっている若い人がやたらと目につく。大抵はメールか、FacebookやTwitterなどで友達とコミュニケーションを取っているのであろう。そんなに頻繁にやりとりが必要なほどの緊急な連絡があるとは思えないので、ほとんどの場合は暇つぶし的なやりとりだと思われる。
きっと、自分のデスクでも横に置いたスマホをチェックしながらパソコンに向かって仕事(むしろ作業と言うべきか)をしているんだろうなぁと、ちょっと説教オヤジのような意地悪な想像してみる。君たち集中していこうぜ。それと手を止めてじっくり考える時間も貴重なのだよ。
ん?そんな会話を想像していると、子供の頃に同じようなことを親から言われたことが完全にプレイバックしてきた。
僕の生まれた昭和40年は東京オリンピックが終わった直後で、日本は高度経済成長の真只中。テレビが一般家庭に普及した時代で、僕が生まれたときから家にテレビはあった。
学校から家に帰ると、まずテレビのスイッチを入れるのが毎日の習慣で、常にテレビがついているのが当たり前であった。(これは大人になった今でも変わらず、寝る時でさえもテレビをつけたまま寝たりするので、カミさんに怒られたりしている。テレビをつけたまま寝るとなぜかぐっすり寝むれるのだ...)
自他共に認めるまさにテレビっ子である僕からすると、テレビのなかった時代は家に帰ってみんな何をしていたのだろうと思うぐらいであるが、テレビのなかった時代の人達(僕の両親)は、テレビについて訳の分からないルールをいろいろと考え出したのである。
まず、テレビを見ると目が悪くなるという理由で、テレビから2mのところに線が引いてあった。この線より中ではテレビを見てはいけないというのである。今考えると科学的根拠に乏しいルールである。
次に、テレビを見ながら食事するのは行儀が悪いという理由で、食事中はテレビを消すというルールが作られた。なぜ食事中にテレビを見ることが行儀の悪いことなのか全く理解できなかったが、そのうちテレビが家族の会話のきっかけになることが増えて、このルールはなんとなく撤廃された。
さらに、テレビを見すぎると馬鹿になるということで、テレビを見るのは1日2時間以内というルールも作られたが、これは僕が完全に無視した。
僕の両親はテレビを見ながら勉強するなど絶対にあり得ない、集中できるはずがないと言うのであるが、僕にとってテレビは単なるBGMであり、今でも家ではテレビをつけたまま本を読んだり仕事をしたりするのは普通である。第一、修行僧じゃあるまいし、机にかじりついてねじり鉢巻きで勉強するより、リラックスして勉強した方が余程頭に入るというものである。実際、最近の統計では、自分の部屋で勉強机に向かってひとりで勉強するよりも、家族がいるリビングで勉強している子供の方が、むしろ集中力が高くなり成績優秀な子供が多いそうだ。
これは典型的なテレビっ子である僕の一方的な意見であるが、いずれにしても当時の僕の両親には全く理解できない感覚であったと思われる。テレビを見るよりもやるべきことがあるだろうと...テレビがついていたら何も集中できないでしょ。本を読んだり、家族と会話したり、じっくり考えたりする時間を大切にしなさいと。
どこかで聞いたような話である。そして今考えると親の言っていたことにも一理ある。
携帯もスマホもなかった時代に育った僕らには、最初から携帯やスマホやネットが当たり前である世代とは感覚が違うのかも知れない。彼らにとってFacebookやTwitterは単なるBGM的な存在で、特別何か集中力を阻害するようなものではないのかも知れない。
それにしても、誰かと食事している最中でさえ、携帯やスマホばかり触っているというのは、いくらなんでも品がないというか、行儀の悪いことに思えるのだが...
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前川@ドリーム・アーツ
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