アジャイルな回り道とワクワク感

前川賢治(Kenji Maekawa) 2012-09-26 09:30:00


前回、最近アップルな感じの僕のモバイル環境のことについて書きましたが、調子に乗って、さらに先月はBenQの持ち運び用のミニプロジェクタも買ってしまった。普通に鞄に入れて持ち運べる大きさだし、解像度もWXGAなので、MacBook Airの画面を投影するには十分だし、iPhoneのドックが付いているのでiPhone/iPadのアプリをデモする場合にもスマートでカッコイイ。


僕の外出用の鞄には、常にMacBook Air, Wifiルータ, iPhone, iPad, プロジェクタ, 各種ケーブルがセットで入っているので、いつでもすぐにプレゼンやデモができるのだ。


どこの会社でもプロジェクタはあるので借りれば良いのであるが、セッティングに時間がかかって微妙な雰囲気の時間が流れたり、解像度の悪い古いプロジェクタのちんちくりんな画面でデモをしなければならないようなことを避けられるので、この外出セットに僕はかなりご満悦なのである。



僕たちがお客さんのシステムを開発する場合、週次でミーティングを行って、その週に出された要望や意見やアイディアは、翌週のミーティングまでには一通りすべて実装した上で、お互いに実物を見ながらフィードバックを受けるというやり方を取るケースが多い。(アジャイル開発では1週間単位で「イテレーションを回す」というような表現がされる)


そのため、僕の外出目的も定期的なミーティングが多く、実際のところは新戦力のミニプロジェクタが活躍した場面はまだ極めて少ないが、自分の鞄の中に必要な機材がすべて揃っているということで、なんとなく安心するのである。



ところで、アジャイル開発でイテレーションを回すプロセスの中で、最近少し考えることがある。


ひとつは、人間は何かを決める際に、必ず過去の実体験を判断基準として意思決定を行うために、新しいシステムを構築するにあたっても、お客さんが持っている現状のシステムや他の社内システムなどのイメージが強すぎ、多少の回り道だと分かっていても、関係者の納得を得るために、紆余曲折プロセスが必要な場合もあるということ。


僕たちとしては、自分の体験として過去の類似案件で試行錯誤した結果を伝えて提案しているつもりなのだが、お客さんにはピンと来てもらえず、納得を得られないということも少なくない。


このような場合、うちの会社は現状がこうなっているのだから、それは自分たちには当てはまらないということを説明されるか、会社組織内の役割分担論として、それは他の部署が考えるべきことだから…というような場合も少なくない。


そうすると、結局、すべての関係部署の人がミーティングに参加している訳ではないし、役割や立場によって視点も関心も違うのであるから、ミーティングに参加しているメンバーだけでは要件は決められないことになる。


だからこそ、当初の要件定義フェーズで決まった机上の要件を、ウォーターフォール型でドキュメントをベースに開発フェーズ、テストフェーズに進めていくのは無理があるし、特に情報系のシステムでは、ドキュメント主義のウォーターフォール型開発ではなく、現物・対話主義のアジャイル開発が有効とされるのであるが、現実には、分かっていても回り道をしなければならないような場面では、少しもどかしい思いをすることもある。


僕たちとしては、過去の案件でも同じような紆余曲折を体験しているので、かなりの高い確率で過去案件と同じような意見が出て、結果的には、当初、我々が考えていた方向に進むであろうと思いながらも、関係者の納得を得るには、お客さん自身の体験として同じような紆余曲折のプロセスが必要な場合もあるのである。



もう一つは、毎週のイテレーション発表では、前週に出た意見や要望が、どのような形で今週実装されて来るのかという、ワクワク感が絶対に必要だということ。


アジャイル開発のイテレーション発表の場では、お客さんから「え?もうできてるの?」とか「これ、いいじゃない」というような言葉が出るようなスピード感と驚きが必要で、多少のボツネタや手戻りがあるとしても、自分の意見がどんどん現物として実装されてくることへの期待感を持ってもらえれば、関係者がみんな自分がシステム開発に参加している意識が高くなり、より前向きな意見が活発に出てくるようになる。


関係者みんなの当事者意識が高くなった結果として、これは他の部署の仕事だからというような守りの感覚よりも、他部署からの反応が積極的・前向きな意味で気になってくると思う。


こうなれば、イテレーションの中で発生するかも知れない多少のボツネタ、回り道、手戻りを差し引いたとしても、お客さんも我々も満足度の高い結果を出すことができるはずである。


そのためにも、過去にお客さんが経験したシステム開発の常識的なスピード感覚とは別次元のスピード感でイテレーションの実装を回せなければ、アジャイル開発は手戻りや回り道が多く、みんなが混乱するだけで、品質の悪いシステムができてしまうという最悪の結果に終ってしまう危険性もあるのだ。


実際、イテレーションを回している間に、当初の要件定義は影も形もなくなったようなケースもあるが、逆に、そのような場合の方が、満足度の高いシステムになっていると思う。しかし、これらのアジャイル開発が成功したケースでも、とにかくお客さんの言ったことをきっちり僕たちがプログラムとして実装したということではない。


僕たちはプロフェッショナルとして、お客さんよりも経験が多い訳だから、自分の経験を元にした To Be を持ちながらも、関係者が自分もイテレーション開発に参加したいと思う状況(ワクワク感や驚き)を作りだすことが必要だと思う。



解像度の悪いプロジェクタで画面を投影したら、せっかくの成果物も魅力的に映らないので自分用のプロジェクタを持って歩いている訳であるが、実際には活躍の機会は少なく、現在のところ、自宅で接続などを試して投影テストをした際に、カミさんに自慢したぐらいのことである…


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前川@ドリーム・アーツ

※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

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