営業の本分を取り戻すチャレンジ

前川賢治(Kenji Maekawa) 2013-07-29 17:00:00

やっぱり今回も飛行機の中でブログを書いています。

前回もご紹介しました「IT断食」や「行動格差の時代」にも書かれている通り、僕たちはITベンダーでありながらも、IT技術を駆使して、より便利になることを積み上げることでは、今の時代を生き残るための本質的な問題解決はできないのではないかと思っています。

一般的にパソコンが一人一台(以上)の時代になって約20年、これまで日進月歩で進化するIT技術をより早く取り入れ、もっと便利にすることが、会社組織を強くし、競争力を高めることであると信じてきました。もはや仕事でパソコンを使わないことは想像できませんし、パソコンを使わなかった時代とは仕事のやり方も随分様変わりしました。

しかし、大袈裟に言えば、人類史上初めてコンピュータやインターネットを当たり前に利用し始めた世代として、少なくとも過去の20年を振り返ってみることも必要だと思います。昔を懐かしむノスタルジックな感情はさておき、この間に本当に個人の生産性は向上したのだろうか?社内コミュニケーションが円滑になったのだろうか?その結果として会社の競争力が上がったのだろうか?

勿論、IT技術を利用する分野によって観点が異なりますので、すべてのことを同じ土俵で議論することはできませんが、少なくとも営業職やオフィス勤務の職種について言えば、生産性を上げるためだったはずのパソコンが逆に生産性を低下させる原因になっていたり、人とコミュニケーションをとる手段であったはずのネットワークによって、むしろ人間関係が希薄になっていたりはしないだろうか?パソコンやインターネットは行動しないためのツールになってはいないだろうか?

そんなIT依存による弊害を提起している我々自身も、自分の信じる道を進むため、営業職のスタッフを実験台として、いささか極端かも知れない取り組みを開始しました。

営業職というのは人間を相手に商いを行うという本分からすれば、極めて人間であることを求められる職種だろうと思います。

僕たちの会社の場合、営業にとって最も重要な役割とは、とにかくお客さんに会って興味・好意・期待を持ってもらうことから始まり、なにかの匂いを感じ取り、新しい商売の可能性を探し出してくることであり、それ以降のフェーズはむしろ技術を中心とした営業以外のメンバーで案件のステータスアップを行うべきだと考え、組織構成も営業の活動ノルマやKPIなども、この考え方を踏襲した構成に変更しました。

これまで営業職が行っていた各案件のステータスアップは、元々技術職であったスタッフが担うこととし、営業はとにかく可能性のある案件化前の新規の話(テーマ)を探しだしてくることに集中することになりました。

そして、なんと営業職については、これまで一人一台配布されていたパソコンおよび通信カードを回収し、パソコンの使用を原則禁止するという挑戦的な取り組みも始めました。

パソコンを取り上げた替わりに、営業マンにはiPadを一人一台配布し、「感性に訴えるプレゼンテーション」ができるコンテンツや、営業レポートの作成・共有、メールやスケジュールの確認、営業資料の検索・閲覧、問合せデータベースの検索、顧客情報の検索など、外出先で必要と思われる機能は一通り用意しました。

このため、営業マンがオフィス内でパソコンに向かって何か作業している光景を一切見ることはなくなりました。なにしろパソコンがないので、営業会議や営業勉強会をやる以外に社内で自分の席に座っていてもやることもなく、とにかく外に出て新しい商売の芽を探し出すしかない状況になった訳です。

しかし、営業としての役割分担の変更はともかくとして、パソコンの使用禁止については、予想通り営業マンからの評判は良くありませんでした。個人の利便性という意味では、一人一台パソコンを配布されていた時よりも劣化したと感じるでしょう。

確かにそうなのです。利便性を追求することに対するアンチテーゼでもあるのですから、今までと全く同じ内容の仕事をしようとすると、これまでより不便になって当然な訳で、当初は「これじゃ仕事ができない!」と思った営業マンも少なからずいたのではないかと思います。

しかし、僕たちは営業という職種を全うする上で、むしろ邪魔になっている可能性もあるIT技術の使い方を捨て、自分たちの信じる価値観をより表現できる営業スタイルを確立し、本質的かつ継続的に組織としての営業力を強化するために、強引にでも変わらざるを得ない状況を作り出した訳で、これは完全に会社トップの判断です。

パソコンの使用禁止などという暴挙?は、普通に考えて現場主導で考えられる訳はなく、現場とは視点の異なる経営レベルの指示なしに実行されることはあり得ません。

なにしろ現場では、現状の課題・問題を少しでも改善しようと努力している訳で、どうしても、よりミスを少なくすることや、より利便性を高めることに目が向けられます。このカイゼン精神は日本の現場力の源泉でもあると思うのですが、根本的な経営テーマとは全く次元も時間軸も違う話であり、両者をある瞬間だけで切り取ってしまうと、たとえ理解を得ようと説明を尽くしたとしても、それぞれの話が噛み合わない場合もあるかも知れません。

しかしながら、畏れ多くも、経営レベルの方々を経営職という職種として考えるならば、会社の根本的かつ継続的なテーマについて、自分の信じる道を覚悟を持って実行(後押し)し、次の世代に引き渡すことが、経営職の本分といえるのかも知れません。(冷汗三斗…)

機中にて。

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前川@ドリーム・アーツ

※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

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