やり抜く現場力

前川賢治(Kenji Maekawa) 2013-08-27 11:00:00

まだまだ暑い日が続いています。

先日、僕達の会社で主催しました「エグゼクティブ・ユーザカンファレンス」にも、暑い中、多くの方にご来場頂きまして誠にありがとうございました。 

今回のセミナーは、「やり抜く力」ということが一貫したテーマだったと思います。

特別講演として、80歳にしてエベレスト登頂を果たした、「世界一やり抜く男」三浦雄一郎さんにエベレスト登頂という夢を成し遂げるまでの紆余曲折、それでもなお信念を持って夢を追いかけて、遂には本当にエベレスト登頂を成し遂げたお話をして頂きました。
また、ローランド・ベルガー会長の遠藤先生の講演では、知識格差、情報格差で勝負した時代から、知識でも情報でも差が出せなくなった今、未来を創造する企業となるためには、とにかく行動することが必要で、まさに「行動格差」の時代であること。また、「行動する」とは、「やる:do」ではなく「やり切る、やり抜く、やり通す:penetrate」ことであり、何をどうやるかを知ることはそれほど難しいことではなく、やり抜くこと、やり続けることこそが最も困難で、簡単には真似のできないことなのだというお話をして頂きました。

まったくその通りだと納得した反面、自分のこととして考えてみると忸怩たる思いですが、それでも両氏のお話から刺激を受けて、自分自身が思いを新たにしたセミナーでもありました。

僕が最近訪問したお客さんで、まさに「やり続ける、やり抜く力」を実感したことがありましたので、ここで少し紹介します。


そのお客さんは業務のアウトソースを受託するBPOの会社なのですが、単に業務プロセスの一部(手間)を代替するBPOサービスではなく、極めて複雑な業務全体を丸ごと受けて、業務分析からタスク分解を行い、各タスクの実行だけでなく、業務プロセスを改善し効率化を図ることまで守備範囲としているような会社です。


 一般的なBPOサービスは、単一業務の手間を代替することがサービスの主体であるため、どのくらいの作業にどれだけの人数が必要なのでいくらかかるという計算で成り立っており、業務全体のプロセスが最適化され効率化されるかどうかはあまり関係ないと言えます。リソースもそれぞれの受注業務の中だけで管理され稼働率や利益率が計算されますし、業務プロセス全体が効率化されるよりも、むしろ無駄が多く手間が増えた方がBPO会社の商売としては実入りが多くなるという構図です。

ところが、僕が訪問した会社では、単一業務ではなく業務プロセス全体に対して責任を持っているため、各受託業務に対する投下リソース数 X 単価の計算ではなく、業務プロセス全体の効率性や異なる受託業務を跨ったリソースの共有性を高めることを活動の主眼としています。

このため、複雑に分解された各タスクの実行時間や実行数などを極めて正確に記録し、業務プロセス内で不効率なタスク連携を洗い出したり、過去の実績値から季節変動制を含めて投下リソースの予測を正確に行うことで、プロセスの全体最適やリソース全体の共有性を高める活動を行っていました。

理屈としては簡単で誰もが考えることであるとも言えますが、実際には、組織全体であれ程細かい業務計測を愚直なまでに何年も継続することは、簡単に真似できることではありません。何年間も正確な業務計測を継続したことで、初めて机上の計算ではない実態に合った確からしい予測値を算出することができ、全体でリソース配分を調整できるところに到達した訳です。

例えば、僕たちの会社でもプロジェクト毎の作業工数を記録して、プロジェクトの原価や利益率を管理することはしていますが、それとは次元の違う細かさと正確さで、実際に僕たちの会社で同じようなことができるかと言えば、恐らくNoだと思われます。(内容そのものではなく組織としての継続力および頭でっかち度という観点で)

実際に現場で作業している人達の様子を見学させてもらいましたが、これまで見たBPOサービスの現場とは雰囲気も違い、この愚直なまでの継続力は、まさに現場力によって従来のBPOサービスを超えた新しいモデルを創造できるのではないかという可能性を感じました。

恐らく、業務のアウトソースを委託する側の会社としても、自社では同じような業務改善を行うことはなかなかできないだろうと思われ、単純に作業をアウトソースすることによるコストメリット以上のメリットを得られると思います。 

業種業態が違う僕たちの会社でも、参考にして考えさせられる点も多かったです。

やはり、たまにはセミナーに出席して外部の人の話を聞いてみたり、全く業種の異なる会社を実際に見て刺激を受けることも必要ですね。常に自分と同じような環境の人達だけと会話していたのでは、どうもタコツボ化してしまって、発想も貧弱なものになってしまいがちです。
何よりも、エンジニアは現場に行って自分で何か感じなければ、決して良いものを作り出すことはできないという思いをさらに強くしました。

P.S. 8月22日、イチローが日米通算4,000本安打を達成しました。毎年コンスタントに200本打ったとして20年・・・気の遠くなるような数字ですが、結局1本1本の積み上げなのですよね。さらに、イチローはインタビューでうまくいったことよりも、うまくいかなかったことの方を多く記憶しているというようなことを言っていました。いいことだけ覚えていて、悪いことはすぐに忘れてしまう僕とは人間の出来が根本的に違うようです。
やはり偉業を達成する人というのは、どこか尋常でない凄みがあります。
偉業といえば、三浦雄一郎さんの80歳でのエベレスト登頂も、一般人の僕からすると最初は「無茶するな~」と思いましたが、全盛期ほど肉体的に万全でないからこそ編み出した「年寄半日仕事作戦」は、これまでの登山の常識を覆す程うまくいったという話は新鮮でちょっと納得しました。

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前川@ドリーム・アーツ

※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

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