バージョンアップは大変なのである

前川賢治(Kenji Maekawa)

2015-08-26 10:00

前回、Windows 8のアップグレード祭りは2012年の10月だったと思いますが、あれから早三年、Windows 10の無償アップグレードが開始されたので、僕も早速手持ちのパソコン3台を Windows 10にアップグレードする作業を行いました。

一台は Surface Pro 3 なので何の問題もなくあっさりアップグレード終了。ただし、Surface Pro 3 を何に使うかという問題は依然として残る。
Surface Pro 3 の発売時には、とにかく無性に欲しくなってしまい、結構な値段であったが、そんなことは気にせず思い切って購入したのであった。当初は、エース・パソコンの座を示す背番号18を用意する程の期待の大型新人であったのだが、結局、実戦ではベテランの MacBook Airからレギュラーの座を奪うことはできず、現在はブルペン・パソコンの座に甘んじているのである。最近では、一歳半の娘が Youtube で「おかあさんといっしょ」を見るための専用端末として使用されており、契約金は高かったがすっかり二軍に定着してしまった元ドラフト一位指名のピッチャーのような存在である。

残り2台は、いずれも Mac OS の上で VMware Fusion 7を使用した仮想環境で Windowsを動かしているので、すんなりとは Windows 10にアップグレードすることはできるはずもなく、なんだかんだと半日を費やしてしまったが、何とか Windows 10 へのアップグレードは終了した。ただし、エースの MacBook Air はかなりガタがきており、いつまで現役を続けられるかという問題は依然として残る。
MacBook Air はディスプレイの調子が悪く、必ず微妙な角度で何度か叩かないとディスプレイが映らない。さらに機嫌の悪いときには、片手でディスプレイを触っていると画面が映るが、手を放すと画面が消えるという、昭和のアナログ・テレビのような状態で、だましだまし現役を続行しているものの、限界が来るのは時間の問題である。

しかし、何のために苦労して Windows 10 にアップグレードする必要があるのかと聞かれると少し答えに困る。実際のところ、昨日まで使っていた Windows 8.1 で何か困ったことがあった訳でもなく、特別 Windows 10 の新機能を使いたかった訳でもない。パソコンの使い方は、昨日も今日もさして変わりはないのである。

むしろ、OS のアップグレードには大きなリスクが伴う。毎度のことながら、アップグレードの作業がすんなり終了することは期待できず、何らかゴタゴタが発生するのはお約束であるし、最悪の場合はパソコンが全く動かなくなる危険性すらある。たとえ、無事にアップグレードが完了したとしても、最低でも10回ぐらいは新しい OS の操作性に文句を言わなければならないのも決まり事である。
強いて言うなら、とにかく最新にしておかないと気が済まないということだろうか…

個人のパソコンならば、この程度の理由でソフトウェアのバージョンアップを行うが、企業のシステムにおいては、そんな簡単にバージョンアップを実施する訳にはいかない。

ソフトウェアを開発している側の僕達からすれば、可能な限り古いバージョンを引きずりたくないので、できるだけ速やかに新しいバージョンを使って頂きたいと思うのであるが、何しろ使用しているユーザ数が多いので何かあった場合の業務影響も大きく、情報システム部としては、おとなしく動いているシステムにはできるだけ手を入れたくないと思うのは当然である。

ソフトウェアのバージョンアップ作業そのものでゴタゴタを起こしてはいけないので入念な準備が必要だし、バージョンアップ後に現状の業務に影響がないかの検証は必要だし、使い勝手が少しでも変わると現場のユーザを混乱させることになるし、もしもバージョンアップが原因で何かシステム障害が発生したら…とにかくバージョンアップは、とてもストレスフルな作業なのである。

結局、バージョンアップすることのメリットとデメリットを天秤にかけると、少々のメリットではデメリットを上回ることはできないので、とにかく現状をそのまま変えたくないという引力にはなかなか勝てない。

その結果、ソフトウェアを提供する側も、何も設定を変更しなければ現状のままで動作するようにするために、バージョンアップの度に機能のON/OFF を設定するパラメータ(デフォルト:OFF)が年輪のように増えていってしまう上に、お客さんに新しい機能が追加されたことも知らされていないということにもなりがちなので、我々はバージョンアップにおける影響範囲や追加された機能について、きちんと分かりやすく訴求することにもっと気を使うべきで、今後改善が必要である。

一方で、Googleのような世界規模のサービスを利用するのであればある程度の割り切りが必要であろう。ある日突然使い方や仕様が変更されたり、サービスそのものが無くなったりするというデメリットがある反面、世界中のユーザが使用しているツールが常に最新の状態で使用できるというメリットも大きい。ただし、個人ツールとしてサービスを利用する範囲でのデメリットとは別に、これが業務フローに組み込まれる場合のデメリットの大きさについては冷静に判断する必要はあるとは思う。

いずれにしても、現状、我々は多くのお客さんにオンプレ環境でシステムを運用してもらっている。オンプレ環境で運用される企業システムのバージョンアップをしてもらうには、お客さんに使ってみたいと思わせるぐらい魅力的な機能拡張を出していくしかない。
もっとも、過去を振り返ってみると機能拡張のアイディアは、僕たちの開発したソフトウェアを実際の業務で使ってもらっているお客さんから教えて頂くことが圧倒的に多いのが事実なので、僕らはお客さんから上がってくるちょっとした要望から、その業務背景を理解して、汎用的かつ効果的な機能として実現する感度と実装能力をもっともっと磨いていかないと、結果的に古いバージョンをいつまでも引きずり、パッケージ・ソフトウェアとしての寿命をどんどん縮めることになってしまう。

現在、製品開発部では僕らの製品であるSm@rtDB に対して大きい機能エンハンスの開発を行っています。今回のエンハンスはSm@rtDBの業務適用率を飛躍的に向上するものだと信じているし、Sm@rtDBを使ってもらっているお客さんにも十分バージョンアップのメリットを感じて頂けるものになると思っています。

まだまだ乗り越えなければならない課題もありますが、お客さんにバージョンアップをして頂いた上で、Sm@rtDB の守備範囲を大きく広げるような魅力的な製品になるように頑張ります!

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前川@ドリーム・アーツ

※このエントリはZDNETブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNET編集部の見解・意向を示すものではありません。

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