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Eメール、この不可思議なるもの

村田聡一郎(Soichiro Murata)

2010-10-05 01:28

Eメールは、世にも不思議な存在である。

アドレスさえ知っていれば、世界中の誰にでも瞬時にメッセージを届けることができる。しかも費用はふつうタダだ。(メールを使えるようにするためのハードウェアやプロバイダ契約には費用がかかっているが、メールを1本余分に送るための追加コストはほぼタダ。)国際電話や郵便の値段を考えると、こんなに便利なものが無料で使えるなんて信じられない。まさに「ITが世界を変えた」代表例と言ってよいだろう。

この10年で、メールはビジネス上の連絡手段としてもすっかり定着した。若手の方には信じられないかもしれないが、10年前は業界によっては「お客様にメールで連絡を差し上げるなんて失礼だ」という感覚もまだあったのだ。お客様の名刺にメールアドレスが印刷されていないこともしばしばあった。(15年前であれば、メールアドレスがあるほうが珍しかったし、たまに名刺に載っているとNifty.ne.jpのアドレスだったりした!)

時は過ぎ、今や「メール」と書けば電子メールのことであり、郵便と間違える人はいない。名刺にアドレスが載っていないのは、お偉いセンセイ方くらいだ。(いや、最近は首相ですらツイッターでつぶやいておられるのだった。)筆者のころは新人研修ではFAXのカバーレターの書き方を教わったものだが、今の新人さんはまっ先にメールのビジネスマナーを教わっているのであろう...

ところが。早く一人前になろうという新人さんたちの努力とは裏腹に、”ありえない”ビジネスマナーが、なぜかメールの上では堂々とまかり通っているのだ。

試しに、以下の質問に「はい/いいえ」で答えてみてほしい。あなたのチームには、いくつあてはまるだろうか?

  1. CCに上司を含めたことで怒られることはまずない。CCを入れないことで怒られることはあっても。
  2. 長いメールがそのまま(何のコメントも注釈も付けずに)転送されてくることがよくある。
  3. メールは「送られたら読むもの」と決め付けられている。ともすると「え、メールで送りましたよ。読んでないんですか?」なんて言われる。
  4. サイズが5MB(あるいは10MB)のファイルをメールに添付して送ることに抵抗感はない。
  5. メールを送ることそのものは「正統な仕事の一部」であると認識されている。つまりメールをたくさん送っているからと言って責められることはない。
  6. 部門全体あるいは全社員など、数百人〜数万人に同報メールを送ることが許されている。
  7. あまりに多いメールにまぎれて、本当に重要な情報まで見落とすことがある。
  8. 全社員が、メールの処理(読む、保存する/捨てる、書く/返信する)に毎日2時間以上費やしている。
  9. 私やチームメンバーに毎日届くメールの数は多すぎると思う。

いかがであろう。すべて「いいえ」であれば、あなたのチームはすでにITお作法をマスターしているので、これ以上このブログを読んでいただく必要はない(笑)。しかし「はい」が4つ以上であれば、あなたのチームのメール洪水は深刻なはずだ。忙しいのも無理はない。

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さて、メールのどこが不思議か?それは上記が、もしメール以外のコミュニケーション手段であればたちまち糾弾されるであろう「ビジネスマナー違反」であることだ。上記1〜6を、「紙」あるいは「口頭」でのコミュニケーションに置き換えて想像してみてほしい。たとえば、KYな新人クンが、、、

  1. 社内や取引先とやりとりするたびにその都度「課長、ちょっといいですか?」と報告に行く。
  2. 取引先から入手した長い文書に何の解説も付箋も付けずに、上司の机の未決箱に放り込んでおく。
  3. 上司に「おい、あの件どうなった?」と聞かれ、「未決箱に置きましたよ、読んでないんですか?」

・・・怖い上司なら「ビジネスマナーをわきまえろ!」と怒鳴るところだろう。ところがこれがメールとなると、なぜか黙認される。「俺にCCなんか入れるな!」とは決して言わない。実に不思議なことではなかろうか?

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よく考えてみると、上記の問題はすべて、以下の2つの思い込みに起因していることに気付く。

  • メールを送信するコストはタダだ。(だから何本送ってもとくに問題はない。)
  • 受信する相手にとっても、メールは都合のよい時間に読んでもらえばよいし、読まずに捨てたってよいのだから、コストはタダだ。(だから何本送ってもとくに問題はない。)

だが、本当に、タダだろうか?もちろん否である。今も昔も、忙しい社会人の最も貴重な資源は「時間」である。そしてメールを送信する作業も、受信したメールを処理する作業も、時間あるいは人件費を消費する。100人に一斉同報すれば100人の労働時間を少しずつ奪う。

「読まずに捨てる」にも、捨てていいかをタイトルと送信者から瞬時に判断する、という高度な頭脳労働をこなす必要がある。それが毎日50本〜100本と積み重なれば消費される時間とエネルギーは相当なものだ。そしてあなたのチーム、あなたの会社の全社員が、それを毎日毎日くりかえしている...

 メールは断じてタダではない、のである。

現実には、メール洪水の退治は簡単ではない。メールの話は今後も繰り返し登場すると思う。しかし「正しいITお作法」の第一歩、それは、時間はタダではない、というあまりにも当たり前の事実に気づくことから始まるのである。

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※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

2件のコメント

zae
会社すらも民主化されて上司が日常的なことであまり権力を持たなくなったのもあるのではないでしょうか
学校の先生も名前で読んだり、親も友達感覚のひとが増えたように
上司が一歩降りてきたということか
2010-10-05
god_in_the_sun
必要なメール以上に、迷惑メールも来るので、それ以上、問題ではないのでしょうか。
たまに、ウイルスも、紛れていることを考えれば、メールの対策だけでも、大変そうです。
2010-10-05

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