四十にして惑わず――「ナレッジ系」ビジネスはまだまだアリ

村田聡一郎(Soichiro Murata) 2010-10-18 22:19:00


本日は自己紹介を。。。

2002年夏。ビジネススクールを卒業した私は、東京で就職活動をしていた。キーワードは「コンサル」「ベンチャー」「ナレッジ」の3つ。エージェントにはこのいずれかの分野で仕事をしたい、と伝えていた。

最初の2つは、まあよかろう。「コンサル」は、当時MBAを取った人間なら誰でも考える選択肢であったし、「ベンチャー」もまた、その当時であればごく普通の選択肢だったと思う。シリコンバレーのバブルは弾けていたものの、まだまだベンチャー隆盛。eBayやAmazonを筆頭に新しい「ビジネスモデル」が日々ニュースを賑わしていた頃だった。そうした話を、学校でさんざんに叩き込まれてもいた。

では、なぜ「ナレッジ」か?それはナレッジあるいはナレッジマネジメントというものに、潜在的だが根源的な価値とおもしろさを感じたからである。

ひとくちにナレッジと言ってもそうとう幅広い。ましてや当時の私のイメージでは、eBayAmazonAsk JeevesLinuxの開発、Wikipediaの編纂、国内で言えばYahooオークションやカカクコム、教えてgoo、窓の杜(Vector)、あたりまでが「ナレッジ系ビジネス」として括られていたのだから、今思えばそうとういい加減なものだが()、とにかくこのあたりのビジネスモデルが「おもしろい」と思っていた。

ナレッジ系ビジネスには他にないいくつかの特徴がある。上記の例も、どれをとっても下記の特徴がほぼあてはまることがわかるだろう。その意味ではやはり「ナレッジ系」なのである。

  • ナレッジは使っても減らない。むしろ、活発に使われればそれだけ精度や質が上がり、ますます価値も上がる傾向にある。
  • ナレッジの価値は100倍にも、100万倍にもなりうる。使っても減らないということは、1つの役立つナレッジが100人、あるいは100万人の役に立つ可能性がある。
  • ナレッジには必ず非対称性がある。2人以上の人間がいる限り、その知識には必ず差があり、したがって知識の非対称性が存在する。つまりAさんが知らないことをBさんは知っている可能性があり、そこに経済的価値が発生しうる。
  • ナレッジは、元手はタダであることも多い。上述の例で言えば、Bさんが知っている「知識」は、すでに持っているものなので、Bさんにとってはタダである。しかしAさんにとっては、その知識は値千金である可能性がある。
  • ナレッジには、単体の知識そのものとは別に、「集合知」と呼ばれるものもある。Wikipediaが典型例だが、並みの人間でも多数が各々の得意分野を持ち寄れば、ブリタニカを圧倒するほどの質と量を持った辞典を作ることができる。
  • さらに、データ分析から生まれるナレッジ(data derived knowledge)もある。ひとつひとつの単体では意味も価値も持たないデータが、多数まとまると独自の価値を持ち始めるケースである。Amazonの、「この商品を買った人は、こんな商品も買っています」というレコメンデーションなどが典型だ。あなたがこの本とこの本を買った、という情報そのものは単なる個別事象にすぎない。しかしそうした人が何万人も、何百万人も居ることによって「傾向値」が生まれるわけだ。
  • ナレッジには「ひとり勝ち」の傾向がある。数が多いことそのものがパワーになるため、いったんリードするとますます強くなり、ひとり勝ちになる傾向がある。いったん地歩を築けば、雪ダルマ式に成功できる可能性があるわけだ。ポータルとしてのYahoo Japanや検索およびAdWordsでのGoogleはまさにこの独り勝ちの例であろう。(WindowsMS Officeも同様。)
  • そして、ナレッジは新しい領域である。インターネット(ブロードバンド)とブラウザをはじめとするITが普及して、コミュニケーションコストが限りなくゼロに近づいたがゆえに初めて可能になったビジネスモデルだけに、歴史はない。したがって徒手空拳のベンチャーであっても知恵と工夫次第ではリーダーになれる可能性がある。

ああ、なんとすばらしいナレッジ系ビジネス(笑)。もちろん、「ビジネス」としての本当の勝負は、この「潜在的/根源的価値」を現金化できるか、つまり「もうけ」につなげられるか?なのだが、当時はベンチャーキャピタルも活発で、”先行投資”が普通だった。まずは地歩を築くことだ、利益はあとからついてくる、といった空気が支配的だった。 ・・・うん、まさに、こんなに面白そうなビジネスはないではないか!いざ、ナレッジの世界へ!

ナレッジ系コンサルがやれるベンチャー、で検索すれば、リアルコムが引っかからないわけがない(笑)。こうして私はリアルコムに参画したのである。 

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それからあっという間に、約8年がたった。時代は移り変わり、私もすでに不惑を超えたが、それでも依然として私はナレッジに根源的なおもしろさを感じている。なぜなら、まだ未開拓、というより「未着手」な分野がいまそこにあるからだ。 

実のところ、コンシューマ側では、ナレッジ系ビジネスモデルには「ひとり勝ちの大成功」例がいくつも出てきた。Googleやアマゾンを筆頭に、カカクコム、Yahoo知恵袋、Mixi、食べログ、YouTube、、、

必ずしもすべてのモデルが「現金化」に成功しているとはいえない。少額課金か、エンタープライズ課金か、はたまた広告収入モデルか、フリーミアムか???などまだまだ試行錯誤は続いている。単体では現金化できなくとも「Googleに買収してもらえれば大成功」というExitモデルもあるが、これはビジネスモデルそのものの尺度としては微妙か(笑)。 

そして現在もまた、新しいビジネスモデルが次々に出てきている。FacebookやMySpace、エバーノート、グルーポンあたりは日本でも定着しそうな気配だが、今後も新規ビジネスの隆盛は続くだろう。

ところが。 

コンシューマではなくオフィスワーカー、つまりBtoCでなくBtoE分野を見ると、「ナレッジ系」の成功例は驚くほど少ない。というより、皆無と言ってよいのではないだろうか。あなたにとって、「忙しい仕事を楽に」してくれているものがあるだろうか?

いくつか思いつくものも、実態はBtoCサービスをビジネスマンが“流用”しているものがほとんどだ。私の例で言えば、Googleなど検索系、マップ系、乗り換え案内系、RSSフィード、Skype、Wikipedia。要するにコンシューマでは成功例があるのに、それがオフィスワークとなると、ナレッジ系ビジネスはほとんど成功していないのだ。 

むろん、成功しない、のには理由がある。(この点については別途。)しかし、だからといって、未来永劫そうだとは限らない。いつか誰かが最初のその突破口を見つけて、大成功を収めるに違いない。

そして私の野望は、もちろん...(笑)

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※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

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