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それは無理な要求というものです――なぜ企業内検索では求める文書が見つからないのか?

村田聡一郎(Soichiro Murata)

2010-10-24 22:03

最近は企業内ポータルやイントラネットのトップページに検索機能を備える企業も多くなった。

しかし企業内検索(エンタープライズサーチ)に対する満足度は概して低い。ポータルそのものに対する不満としてユーザー(社員)が真っ先に挙げるのは、たいてい「検索がヒットしない」である。

ユーザーはGoogle、Yahoo、Bingなどインターネット検索での経験と比べて、「ウチのポータルでは、検索しても期待するような結果が返ってこない」と感じている。中には「なぜGoogleを社内にも入れないのか」などと主張する人さえいる。

しかし実際には、どの検索エンジンを導入したところで、満足度は向上しない。検索結果に差があるのは、検索エンジンの機能差ではなく、インターネット検索と企業内検索の検索対象(コンテンツ)の違いおよび期待値の違いによるものであるからだ。

■インターネット検索の場合。

(1) インターネット上のコンテンツは、すべてが「誰かに見てもらう」ためにアップされている。見てもらうためにはまず検索にヒットしなくてはならないから、SEOつまり検索エンジンからの引っかかりやすさを強く意識して作成されているのが普通だ。

(2) またアップされている情報は基本すべて“オリジナル”であるため、日付はさほど重要ではない。逆に、日付が重要であるコンテンツの場合(ニュース記事とか時刻表とか)は、日付がまっさきに明記されている。

(3) さらにインターネット検索では、「何かあるかな」「あったらいいな」程度に検索することが多く、もともと期待値が低いので、見つかれば「タダでこんな情報が手に入ってラッキー」と感じてしまう。

■一方、企業内検索の場合。

(1) 企業内にある情報はSEOを意識していないことが多い。大分類>小分類とカテゴリづけされていたり、トップページからリンクをたどれば辿り着けるような考慮はされていても、検索エンジンという“飛び道具”への対応が考慮されている例はまだ少ない。

さらに、SharePointやHTML等で作成されている「ページ」ならともかく、WordやExcelなどの「ファイル」となると、そもそもSEOの概念などあろうはずもなく、したがって求めるファイルがヒットする可能性は低い。これはファイルサーバーを検索対象にしている場合にとくに顕著だ。

(2) 次に、企業内ではひとつのコンテンツをコピーし内容を一部更新して使うこと(使い回し)が多いため、内容がほとんど同じで違うのは日付だけ、という“類似コンテンツ”が非常に多い。その場合、「最新版であるか否か」が決定的に重要になるのだが、検索エンジンは「新しさ」については関知しないことが多い。

その結果、たとえば「○○製品価格表」で検索すると数百件がヒットし、しかもトップに来ているのは2002年のもの、などということが頻繁に起きる。「コノヤロー!何でこんな古いのがヒットするんじゃ!(怒)」という経験はみなさんもお持ちだろう。

#しかし検索エンジン君の立場からすれば、「ワタシは検索語の含有率が高い順に(あるいはその他のアルゴリズムの規定に従って)表示せよ、とプログラムされているだけで、それ以外のことを要求されても、それはご無体というもので...」と嘆くであろう(笑)

(3) さらに企業内検索では、「過去に見たことがある情報、存在していることは分かっている情報」へすばやくリーチすることを目的として検索することが多いので、すぐにヒットしないとイライラする。つまりもともと期待値が高いのである。

コンテンツ提供者は正規ルートつまり大分類>小分類とたどって来てもらうことしか考えていないが、その正規ルート自体が分かりにくいため、ユーザーはキーワード一発で到達することを期待する。実際インターネット検索であれば、頭に浮かんだキーワードをいくつか並べるだけでたいていGoogleさんがそこへ一発で連れていってくれるという経験をしているだけに、余計に不満が募るのである。

インターネット検索      企業内検索
(エンタープライズサーチ)
検索対象(コンテンツ)はSEOを強く意識している SEO 検索対象(コンテンツ)はSEOが全く意識されていないことが多い
日付はさほど重視されない 新しさ 日付(最新の文書であるか否か)が決定的に重要/日付でしか見分けられないことも多い
未知の情報を、「あったらいいな」程度に検索することが多いため、「見つかったらラッキー」 期待値

「過去に見たことがある情報、存在していることは分かっている情報」へすばやくリーチすることが目的なので、すぐにリーチできないとイライラする

この差異は根源的なものなので簡単には埋められない。少なくとも、現在の検索エンジン技術(インターネット検索用に開発されたものをイントラに流用しているものが大半)が大幅に進歩してこうした課題をテクノロジーが解決してくれるその日まで、当面はITお作法による工夫で対応せざるをえない。

--◇--

(1) SEOについては、まずコンテンツ側がSEOを考慮しない限り、キーワード検索による検索性が改善することはほぼ望めない。したがって、以下のようなお作法をルール化し、コンテンツ側を改良していく必要がある。

  • コンテンツに「キーワード」や「タグ」というフィールドを設け、コンテンツ作成時に検索キーワードを登録させるようにするのが第一歩。作成者にSEOを意識させるという効果も見込める。
  • タイトルの命名ルールを策定し、タイトルだけで(実コンテンツを開く前に)内容がおおむね理解できるようにする。「開いてからガッカリ」が減るのでストレスが軽減される。
  • (2)とも関連するが、日付を目立つところに明記させることの効果は大きい。
  • ヒットしてほしくないゴミコンテンツをそもそも検索対象から外すため、コンテンツを定期的に棚卸(整理整頓)させる。これは本来SEOとは関係なくやるべきことではあるが、「古い情報は誰も気にしないだろう」と考えて放置しがち。しかし検索エンジンは放置してくれないのである...

コンテンツ以外にできる工夫は、検索エンジンへの同義語の登録だ。Googleなどでは「もしかして:〜〜」という形で同義語の候補を提示したり、さらにこちらの表記を無視して勝手に同義語検索してくれたりするが、社内検索の場合はシステム管理者が登録しなくてはならない。社内用語あるいは業界用語だと、もはやユーザーが無意識に使っていることも多いから、これを救ってあげるとストレスがやわらぐ可能性もある。

--◇--

(2) 新しさについては、検索エンジンが日付への重みづけ(最近のものほどより上位に行くようウエイトをかける)に対応してくれるまでは、基本的にコンテンツ側で「最新版だけを表示させる」「古いものは隠す/捨てる/検索対象から外す」といった対処をするしかない。

ことに、定期的に(毎日、毎週、毎月など)発信している情報については、新規投稿でなく更新投稿とすれば、ゴミ(過去コンテンツ)を増やさずに最新コンテンツだけが残るため一石二鳥である。

なおFASTやGoogleなど最近の検索エンジンでは「過去○か月以内」といった更新日時での絞り込みや、「更新日順」のソートができるものも出てきた。企業内検索において日付が占める重要性を考えると、大いに期待できる傾向ではある。今後は、たとえば「特定日から1か月前まで」などの範囲指定もできるようになってほしい。

ちなみに、リアルコムの自社製品であるKnowledgeMarket EnterpriseSuiteの最新版、V4.3では、検索結果のソート順を日付順としている。デフォルトで日付順に対応した検索エンジンは筆者の知る限り業界初だと思うが、社内利用でその効果は日々実感している。追随する製品が出てくるのも時間の問題であろう。

※10月25日 筆者追記: 読者の方から、ビジネスサーチテクノロジ社の検索エンジンであるWiSEがすでに日付順ソートに対応している、 とのご指摘をいただきました。筆者の不勉強で申し訳ありません。H様、ご指摘ありがとうございました。
※10月26日 筆者追記: さらに、ジップインフォブリッジ社の検索エンジン SAVVY/EWAPも日付順ソートが可能である、とのご指摘をいただきました。製造元に確認しましたので追記させていただきます。ご指摘ありがとうございました。

--◇--

(3) 期待値については、上記(1)(2)を改善すればおのずと「一発ヒット」率も上がるであろうから、自然に改善していくだろう。しかしこの(3)は、そもそも「正規ルート」のナビゲーションさえ分かりやすければさほど問題にはならないはずだから、本来はそちらの改善で解決すべき課題ともいえる。このイントラネット内のナビゲーションについては、いずれ日を改めて考えてみたい。

-----

とにかく「インターネット検索と比べて、ウチの社内検索はヒットしない」のは必然だ、ということはご理解いただけたであろうか。しかし、検索エンジンとハサミは使いよう、とも言う(笑)。そういうものだと理解し割り切って使えば、それはそれで使い出もある。あなたも今日からはイライラ指数が5%減り、5分早く帰れるだろう。

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(本日の原稿は、ビジネス・プロダクティビティ研究会 会報誌『Vision』2009年12月号に掲載した文章をもとに加筆修正したものです)

 

※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

2件のコメント

筆者
通りすがりの技術者 様、
ご指摘ありがとうございました。製造元に確認いたしましたので、追記させていただきました。
今後ともよろしくお願いいたします。
村田
2010-10-26
通りすがりの技術者
インターネット検索と企業内検索の違いがわかり易く解説されていて、勉強になりました。ありがとうございます。
なお、日付順のソートはジップインフォブリッジ社のSAVVYも対応していますので、お知らせいたします。
2010-10-25

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