オフィス内の電子ファイルは3種類ある-コラボレーション考その1

村田聡一郎(Soichiro Murata) 2011-05-08 23:30:00

4月上旬の石巻市に続いて、ゴールデンウイーク中に3日間、宮城県岩沼市・名取市にもボランティア活動に行ってきました。そちらの話は当ブログとは関係ないので、興味のある方は私のツイッターをご覧いただきたいと思いますが、とにかく被災地の状況はすさまじく、いろいろと考えさせられることも多かったです。今後の投稿の中に、今回の経験が投影されてくることもあるだろう、と感じています。

ともあれ、「仕事を楽にするITお作法」の話に戻ります。

-----

■「どのITの話をされてます?」

これまで「ITお作法」という表現を使ってきているが、これは総称にすぎない。

今やオフィスワークのかなりの部分がITを介して行われている。オフィス内を(いや、自分のPC内を(笑))見渡してみても、メール、ファイルサーバー、ポータル/イントラネット、情報共有ツール、データベース、スケジューラ、ワークフロー、各種専用システム/サイト、などなど多種多様なITが存在しており、使い方も扱っているデータもそれぞれ異なる。

したがって「ITワークの課題と改善策」と十把一絡げで考えていても、不正確あるいは曖昧な考察しかできず、ほとんど意味をなさない。(マクドナルドと銀座・うかい亭をひとくくりにして「外食産業の課題と改善策」を考えても、ほとんど意味をなさないのと同様。)

「どの部分の」ITワークについての話をしているのか?を明確に区切り、その部分にフォーカスして議論していく必要がある。(現実には、フォーカスが絞られないまま話が進み、そのこと自体に参加者が誰も気づいておらず、議論だけが食い違って皆がイライラしている、というケースもしばしば見られるのだが...)

では、どのようにITワークを「区切る」のがよいのだろうか?もちろん区切り方はひとつではなく、いくらでも考えられるのだが、本稿ではITワークで取り扱っている電子ファイルに着目して区切ってみることにする。

■オフィス内の電子ファイルは3レベルある

いきなり結論から言ってしまうと、オフィス内に存在している電子ファイルは、その性質上、大きく「(A)正式文書」、「(B)グループレベルファイル」、「(C)個人レベルファイル」、の3レベルに分けることができる。以下、順に説明していこう。

たとえばあなたが営業部門に所属する社員で、お客様に提出する見積・提案書を作成していくとすると、そのプロセスはざっと以下のようなイメージになるだろう。(図1)

図1: 典型的なオフィスワークのイメージ(正式文書作成プロセス)



①見積・提案書のドラフト版を作成し、主任に送る
②主任がチェックしコメントする
③2人でディスカッションしてさらに修正する
④課長が確認し、指摘事項を追記して差し戻される
⑤指摘事項を修正して再度主任に送る。主任がOKし、課長に送る
⑥課長がOK、部長に承認を求める
⑦部長が承認する
⑧お客様に提出すると同時に、見積管理システムに蓄積される

業種や職種の違いこそあれ、オフィスワークではたいていの文書(電子ファイル)が上記のような過程を経て作成されていき、仕事が進んでいるであろう。

この図1の中で、上段が(A)正式文書、中段が(B)グループレベルファイル、下段が(C)個人レベルファイルである。

■(A)正式文書

正式文書とは、組織(会社あるいは部門)として内容が適正・真正であることを組織外に対して保証した文書のことである。たとえば図2のようなものがその一例である。

図2:正式文書の例



正式文書の第一の特徴は、基本的に自部門の「外」に出すために作成されているということだ。とくにホワイトカラー組織(具体的な商品やサービスを直接生産していない組織)においては、極論すれば正式文書(に込められた内容)こそが組織としての最大の正式アウトプットであり、存在価値を示す媒体である、ということになる。

したがってその組織にとって正式文書とは非常に重要なものであり、その取扱には十分な注意が払われている。具体的には、「正式であるという要件」を満たすために必要なプロセスが定められ、それに必要な手間とコストがすでにかけられていることが多い。たとえば、


  • 所定の手続きが行われる(稟議、レビュー、決裁)

  • ハンコが押される/PDF化される

  • 所定の場所に収められる(見積書DB、イントラの「通知通達」欄、外部Webサイトの「プレスリリース」欄)

  • 履歴管理、バージョン管理が行われている

  • 保管期限が明確に定められている

といったものである。

こうした「正式文書の取り扱い」そのもの(たとえば正式文書を収める「文書管理システムの構築と運用」など)もオフィスワークの生産性の改善においては重要なテーマのひとつである。 

■(B)グループレベルファイル

一方「グループレベルファイル」とは、組織*1として内容が適正・真正であることを組織外に対しては保証しない電子ファイルである。グループレベルファイルは、(ア)正式文書を作成する過程での中間生成物・ドラフトであるか、あるいは(イ)そのグループ自体の運営にのみかかわる組織内文書であるか、のいずれかである。

(ア)、(イ)のいずれであっても、グループレベルファイルは通常、グループ内でのみ共有され、グループの外には出て行かない。組織として内容を外部に対して保証できない文書が一人歩きしては、企業運営全体が混乱しかねないからだ。

みなさんの日常を振り返ってみると、オフィスワークの大半は、このグループレベルファイルの上で行われているはずだ。誰かがスタート地点となる“タタキ台”を作り、グループ*2内のメンバー間のやりとりを通じて、内容を求める品質にまで改善していく、という作業、まさに上記図1である。

こうしたグループワークは一般に「コラボレーション」と呼ばれているが、オフィスワークの大半を占めるだけに、非常に重要なテーマである。このコラボレーションについては、次回でさらに詳しくみていく。


*1 :ここでいう組織やグループは、職制としての組織(全社-事業部-本部-部-課など)に固定されているとは限らない。文書の内容や目的により「組織」や「グループ」の広さは柔軟に変わりうる。

*2 :メンバー間のやりとりには、ITを介したやりとり(例:メール、掲示板、チャットなど)とITを介さないやりとり(対面、会議、電話、紙資料など)があるが、その成果(アウトプット)がグループレベルファイルに反映されるという点では同列に扱うことができる。

■(C)個人レベルファイル

「個人レベルファイル」とは、基本的に自分の個人PCのローカルHDD(またはファイルサーバー等の個人用領域)に入っている電子ファイルのことである。

オフィスワーカーの場合、「自分の中だけで完結し、自分の外に出ていかない仕事」というのはほぼ考えられない。自分がやっているワークは、ほぼ100%、何らかの形で自分のPCから「外」に出ていくはずだ。結局のところ、自分のワーク=付加価値をファイルに託して、それを誰かに渡すことで食っているのだから、当然といえば当然であろう。

個人レベルファイルの取り扱い、つまりPC内でのファイルの管理・整理、もまた業務生産性の観点から大きなテーマである。「個人」レベルであるがゆえに各人任せにされていることが多いが、各人が見よう見まねあるいは自己流であれこれと試すよりも、効果的なやり方を社員全員に教えてその通りにやらせたほうが効率がよいに決まっている。


※なお、上記の3レベルは文書の「公式度」によって分けているが、「公式度」と「機密度(機密保持レベル)」とは関係がないことに注意。機密度の高い情報であれば、たとえ(B)グループレベルあるいは(C)個人レベルであっても、高い情報セキュリティレベルが求められる。

※また、ファイルそのものの「内容」によるものではないことに注意。まったく同一内容のファイルが、承認プロセスを経ることによって「(C)個人レベル」→「(B)グループレベル」→「(A)正式」となっていく。

-----

冒頭で「区切り方はいくらでもある」と述べたが、その中からこの3分類をまず取り上げたのは、この3つは扱われるITワークの場がきれいに切り分けられるため、議論の整理の第一歩として役立つからだ(下記図3)。次回はこの中から「(B)グループレベルファイル」を扱うITワークの場である「コラボレーション」を取り上げる。

図3:電子ファイルの3レベルと、それぞれが扱われるITワークの場所


-----

村田聡一郎@リアルコム お問い合わせはこちら
(■Twitter始めました。よろしければフォローお願いします)

(本稿は、ビジネス・プロダクティビティ研究会 会報誌『Vision』2010年5月号に掲載した文章をもとに加筆修正したものです)

※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]