「長期的にはすべてゴミ」――コラボレーションの3要件とは

村田聡一郎(Soichiro Murata) 2011-05-16 00:00:00


 前回は大きく「(A)正式文書」、「(B)グループレベルファイル」、「(C)個人レベルファイル」、の3レベルに分けることができる、という整理をした。今回はその中から「(B)グループレベルファイル」を扱うITワークの場である「コラボレーション」を取り上げる。

■コラボレーションって、そもそも、何?

一般に、ITを介して仕事を進めていくやり方のことを、かなり幅広に「コラボレーション」と総称している。たとえば「IT用語辞典」では、コラボレーションについて以下のように解説している。


コラボレーションとは、コンピュータシステムを活用した多人数の共同作業。特に、ネットワークを利用したデータの共有や、遠隔地での意思の疎通などが重要な要素となる。ネットワーク上にデータを設置することによって、データの共有が容易になるため、ネットワーク利用者同士での連携による共同作業がスムーズに行える。「コラボレーション」という用語は非常に幅広い範囲で用いられており、全世界的な大規模プロジェクトから、企業のある部署内での簡単な連携作業まで、広くコラボレーションと呼ばれている。

(出展:IT用語辞典「コラボレーション」)

このブログをご覧いただいている方であれば、日常の仕事のかなりの部分がコラボレーションに含まれる、という方も多いだろう。「仕事を楽にするITお作法」の中で、「コラボレーションを円滑に、効果的に進めるためのテクニックや考え方」が大きな割合を占めるのも当然であろう。

■コラボレーションの3要件

では、コラボレーションの要件(つまりコラボレーションシステムに求められる特性)を見てみよう。

またもや結論から言ってしまうと、コラボレーションの要件は、「(1)ファイルや情報の再利用性が高い」 「(2)面倒なことはできない、させられない」「(3)長期的にはすべてゴミ」の3点である。

■(1)ファイルや情報の「再利用性」が高い

ITワークの最大の特徴、それは「情報・ファイルの再利用が容易なこと」である。今やオフィスで、ゼロから(白紙の状態から)文書を作りはじめるというケースのほうが少ないのではないだろうか。自分が過去に作ったレターや他人が作ったプレゼン、あるいは既存のテンプレートを”使い回し”して、そこから新たなファイルを作り始めるのが普通であろう。今となっては当たり前のように感じるが、10年ちょっと前の「紙」の時代には考えられなかった再利用度の高さである。

かつ当然ながら、仕事では似たような文書を繰り返し作ることが多いため、この再利用性の効果は大きい。

再利用が当たり前になった結果、ITワークの生産性は、第一に「再利用のうまさ」によって決まるようになった。つまり、自分や他人の過去の成果物を上手に取り入れて自分の役に立てられるかどうか、が仕事の「速さ」や「できばえ」に直結するのである。営業資料などでは、他人が作ったパワーポイントのスライドのつなぎ合わせだけで完成することも多いはずだ。

しかし一方で、再利用によって誰でも簡単に資料が作れるようになった結果、資料の「量」が爆発的に増大している。しかも完成ファイルだけでなく、それを作成する過程での中間生成物である「仕掛品」も多数存在する。つまり使い回しの「モトネタ候補」が、IT空間内に山ほど存在するようになったのだ。

また中間生成物がたくさんあるために、取り違えなども起きる。たとえば「○○さんが改良を加えた最新バージョンがメールで送られていることに気づかずに、古いバージョンを使ってしまい、大幅な手戻りが発生した」といった経験は誰にでもあるだろう。

したがってコラボレーションでの作業効率=再利用の効率を上げるためには、そのファイルを「いつ」「誰が」「どういう文脈で」「何のために」作ったものなのか、が容易にわかることが極めて重要になる。

このようにコラボレーションの場は、「現在の仕事」を進めながら、同時に将来の再利用に備えた「モトネタ倉庫」になっており、かつそのインデックスである「作業履歴」が見える化されている必要があるのだ。

■(2)面倒なことはできない、させられない

コラボレーションそのものは単なる手段であり、目的ではない。ここは他の情報共有分野、たとえば「ポータル」や「文書管理」とは大きく異なるところだ。

ポータルでは、ポータルに情報を掲載することそのものが仕事の一部であることが多く、したがってそこに一定のコスト(手間)をかけることが容認される。情報発信の型がある程度決まっているため、統制も取りやすい。また通常、発信者は限られているので、そのメンバーにだけトレーニングを行いリテラシを上げることも可能だ。

それに対しコラボレーションそのものは仕事ではなく、コラボレーションを通じて成果物が出来上がることが目的である。したがって、コラボレーションにかかるコストは最小限である必要がある。一方でポータルのように「枠」が決まっておらず、毎回パターンが変わるので、IT面で「型をはめる」こともむずかしい。全社員が発信者となりうるので、トレーニングするにも大きなコストがかかる。

したがって、コラボレーションツールは、シンプルで簡単、手間いらず、トレーニングいらず、である必要がある。面倒なことはどうせできないし、させられないからだ。簡単でないと、使ってもらうことすらできないのが実情である。

■(3)長期的にはすべてゴミ

(A)正式文書と違って、(B)グループレベルファイルの99%は、長期的にはゴミ、つまり捨ててしまって構わないものだ。

正式文書はふつう保存期間が明確に定められており、その期間はきちんと保管されて、それが過ぎると捨てられる。(一部「永久保存」も存在し、これらは永久に保管される。)

またグループレベルファイルの中にも、組織の外には出て行かないが、組織内では正式である、という“組織内正式文書”も存在しており、これらは正式文書に準じた扱いを受ける(これが1%)。

しかしそれ以外の、99%のグループレベルファイルは、要するに中間生成物であり、「再利用あるいは参照する可能性がほぼなくなった」ときにゴミになる。部門・職種によっても異なるが、作成から2年~3年も経過すれば、グループレベルファイルが再利用あるいは参照される可能性は事実上ゼロに近い、という組織が多いのではないだろうか。(繰り返すが、中間生成物が正式になった「正式文書」は別途保管されており参照・再利用も可能、というのが前提。)

ということは、一定期間が経過したグループレベルファイルなら、捨ててしまってもほとんど実害は出ないはずだ。どうせ使わないのだから。

ところが実際には、ユーザーがファイルを自発的に捨ててくれることはほとんどない。「ファイルサーバーが一杯になってしまったので捨ててくれ」とIT部門からアナウンスしても、ほとんど効果はない、という企業も多いだろう。なぜか?

それは第一に「捨てる」という作業が面倒だからであり、第二に「捨ててしまっても大丈夫だと自己の責任では言いきれない」からであり、第三に「自発的に捨てることによる見返りがとくにない」からだ。IT部門泣かせではあるが、いずれも人間心理としてはもっともである。

したがって、「ウチの社員はファイルを捨ててくれない」と嘆いてもムダだ。仕組みで対応する必要がある。たとえば2~3年が経過したら自動的に削除するという仕組みをつくり、かつそれを社内規定で裏打ちして、定期的に自動削除を行う、などだ。

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図1:コラボレーションの特徴と、コラボレーションシステムに求められる要件 


上記図1のように、コラボレーションでは


(1)再利用性(タイムスタンプ、人、検索性、など)があること

(2)シンプル、簡単、手間いらず

(3)有効期間にあわせて「ゴミを捨てるしくみ」があること

の3要件を備えることが必要なのである。


「コラボレーション」はみなさんの日常業務の大きな割合を占めている。この3要素を満たすようなコラボレーション基盤を備え、使いこなしていけば、徐々に効率もあがり、早く帰ることができるようになるであろう。

みなさんが、日頃使っているコラボレーションシステムの見直しを検討されることがあれば、このコラボレーションの3要件」を思い出していただければ幸いである。

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(本稿は、ビジネス・プロダクティビティ研究会 会報誌『Vision』2010年5月号に掲載した文章をもとに加筆修正したものです)


※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

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