魔法の言葉「クラウド」との正しいつき合い方

斎藤昌義(さいとう まさのり) 2009-10-11 12:34:46

 クラウドとどのように付き合えばいいのだろうか。今回は、これについて考えてみよう。 

 クラウドという言葉は、買う側、売る側の両者にとって、魔法の言葉となっている。魔法であるから、それは夢であり、希望である。難しいこの現実を解決してくれる呪文であり、こうなればいいなぁという理想の姿でもある。しかし、その実態は、はっきりとは分らない。 

 経済指標に明るい兆しが見え始めてはいるが、ITの現場は、まだまだ厳しい。むしろ、コスト削減の要求は、ますます厳しさを増している。しかし、どこのIT部門も既にやれることはやっている。いまさら、何をすればいいのか。 

 もはや「改善」では、埒(らち)が明かない。今までの当たり前を否定し、根本的な構造改革に取り組まない限り、これ以上のコスト削減は、無理。それが、現実だろう。 

 こんな時代だからこそ、クラウドは、魔法の言葉に聞こえる。その実態が、良く見えないが故に、魔法なのであって、望みをかなえてくれるのではないかと、夢だけが膨らむ。それが、クラウドへの想いではないだろうか。 

 売る側にしても、モノやヒトを買ってもらうことが厳しいことは、十分に承知している。だから、クラウドという呪文を唱え、買う側に魔法をかけようとしている。クラウドという新しい言葉を使えば、きらきらと輝いて見える。たとえ今までと同じものでも・・・。 

 彼らの魔法にかかってはいけない。表を飾る言葉に惑わされることなく、その実態を冷静に評価しなければ、夢に投資することとなり、結局は、これまでと何も変わらない結果となるだろう。 

 いままでのASPと何が違うのか?今使っている外部のデータセンターを利用したサービスと何が違うのか? 

 メリットは、いろいろと教えてくれる。では、どのような課題があり、何がリスクなのか? 

 「プライベート・クラウド」という言葉がある。インターネットのむこう側にある「パブリック・クラウド」ではなく、ファイヤーウォールのこちら側にクラウドを構築し、社内で利用する仕組み。それはいったい、今の社内システムを仮想化して使うこととどう違うのだろうか? 

 もし、こういう質問にソリューション・ベンダーの営業が、10分以内に納得できる説明してくれるのなら、じっくりと話しを聞く価値があるだろう。「ああ、それは仮想化のことですよ。」というようでれば、彼は何も分ってはいない。 

 ただ、魔法といえでも必ず一部の真実がある。可能性がある。だからヒトはそれを信じ、期待する。 

 かつて月旅行や宇宙ステーションは、魔法の世界の出来事でしかなかった。鉄腕アトムも夢の話である。しかし、その一部は、既に現実となり、私たちは、その恩恵を受けている。また、将来に向けた具体的なロードマップも示されている。だから、魔法だといっても、まったく意味のないことでもない。本質を正しく理解し、課題を見据えることができれば、大きな変革に役立てることができる。 

 IT部門にとって、クラウドがもたらす最大の変革とは何か。それは、IT部門のユーザー化であろうと思う。 

 システムを所有し、それを運用する役割は、縮小する。アプリケーションの導入や開発も少なくなるだろう。 

 IT部門は、クラウドから提供される計算能力、ストレージ容量、アプリケーション機能を使用し、その使用量に応じて代金を支払えばいい。 

 かつて、製造業は、自分の工場で必要な電力を、工場内の発電設備でまかなっていた。そうでもしなければ、安定した電力を確保できなかったからだ。しかし、現在そんなところは、ほとんどない。電力会社から安定して電力の供給を受けることができるからだ。今では、安全を担保するためのAVRや最低限の自家発電設備を持っているに過ぎない。 

 下の図をご覧いただきたい。 

 

 クラウドを利用すれば、こんなにも簡単にシステム資源を利用できる。見方を変えれば、ハードウェアやパッケージ・ソフトウェアの技術的な検討やそれに続く、導入や設定、パックアップ・リカバリー、システム監視といった運用管理に関わる技術力や力仕事からIT部門は、開放されることになる。 

 とすると、自分達のレゾンデートル(存在することの意義)は、どうなるのか。 

 IT部門のユーザー化は、いままで以上に戦略や業務への見識が求められることを意味する。企業の成長や体質を強化するために、ITをどのように活用するか。ユーザー部門のニーズに応えるだけではなく、経営や業務に対して、ITの活用を提言できなければ、存在意義はない。

  実現する手段が、ITであるとすれば、それを所有するか、使用するかは、本質的な問題ではない。所有することが前提にあるから、そういう人材の育成や確保を考える。使用するならば、また違う人材育成が必要になるだろう。

  経営者やユーザー部門にも、クラウドという言葉は、届いている。しかも、何度も何度も、その呪文を聞かされているので、その実態のいかんに関わらず、何かできるはずだ、もっと大きな変革がもたらされるはずだと、期待ばかりが膨らんでいる。 

 それに応えなければならないIT部門は、大いに困惑しているだろう。「いやいや、まだまだ実態はありません。慎重に考えなければ、結局は高いものにつきますよ。」という説明で、果たして納得してくれるだろうか。もし、私が経営者なら、「こいつは、できない奴だ!」と評価するだろう。

  ソリューション・ベンダーの甘言に惑わされてはいけない。現実を冷静に見極めなければいけない。

  それは、クラウドを否定することではない。クラウドのユーザーとして、本質と課題を整理すること。システムの所有者としての役割を捨て、使用者の視点から、ITの戦略的活用と業務改革のイニシアテイブをとること。 

 クラウドとは、IT部門にとって、構造を改革する以上に、意識を改革する武器となる。この認識を持つことが、クラウドとうまくつき合う前提となるだろう。

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※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

1件のコメント
  • tomkimu

    うーん。。まだわかりにくい説明ですね。抽象的にしか描けないところがやはり雲をつかむ話なのかもしれない。

    2009年10月12日

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