「ソリューション」という言葉の本当の意味

斎藤昌義(さいとう まさのり) 2009-10-15 11:24:32

 ソリューション・ベンダー主催のセミナーに参加すると、彼らから「わが社のソリューションは・・・」という話しを必ず聞かされる。 

 さて、いかなるソリューションかと聞き耳を立てていると、結局は、彼らの商品の紹介だ。「何が、ソリューションだ!」。そんな思いにいらだちつつも、やはり彼らもまたソリューションの本当の意味を分らずに、この言葉を使っているんだなぁと、ため息が出てしまう。

  「ソリューション」という言葉。実は、IT業界では、ちゃんと歴史的な背景に裏打ちされた定義がある。今日は、このあたりについて話しをしよう。 

 このブログの読者にもかつてのメインフレーム時代をご存知の方も多いのではないかと思う。1964年にIBMが、システム360という「汎用機」を初めて世の中に出した。 

 従来は、事務計算や科学技術計算、オンライン・リアルタイム系とバッチ系では、処理の特性が異なるため、同じコンピューターを同時に使うことができなかった。そのため、別々の専用コンピューターを使っていた。 

 当時、コンピューターは非常に高価で、専門的なスキルを持った人材も必要だったので、コンピューターは、とても高くついたのである。 

 この状況を解決しようということで、処理特性の異なる計算処理を、同じ一台のコンピューターで、しかも同時に処理しても一定のサービス水準を維持できるようにと開発されたのが、「汎用機=メインフレーム」だ。 

 当時のコンピューターは、単一のメーカーが、プロセッサー本体、I/O装置、OSやミドルウェア、あるいは、アプリケーション・パッケージまでも、自前で提供していた。 

 すべてが、同じメーカーから提供されていたから、それらの接続や組み合わせは保証され、保守サポートについても、一切そのメーカーに任せることができた。だから、システム部門は、開発やシステムの運用に専念することができた。 

 しかし、メインフレームは、高くつく。使える人間も限られている。そのため、エンド・ユーザーから、ちょっとした帳票の出力を頼まれても、数週間、数ヶ月かかることもまれではない。これではとてもやっていられないということで、部門コンピューターが、普及し始めたのである。 

 半導体製造技術の進化と共に、オフコン、ミニコン、パソコンといった、低価格で、使い勝手のいいコンピューターが、システム部門が管理するメインフレームとは別に、自己増殖的にどんどん導入されていった。1990年代に始まるダウンサイジングだ。 

 同時に、UNIXやTCP/IPといった、オープン・スタンダードが普及し、このスタンダードに準拠すれば、メーカーの異なる、どんな機器やソフトの組み合わせも大丈夫!を宣伝文句に、その種類や量が、急激に拡大していった。

  しかし、ご存知の通り、「組み合わせは、大丈夫!」というのは、真っ赤な嘘で、実はつながらないことも多い。これは、今でも同じようなことがおきるが、メーカーにそれを問いただすと、「それは、相性の問題ですね。」、「仕様の問題ですから、しかたありません。」と責任を回避される。 

 仕方がない。結局は、ユーザー側で、その組み合わせや接続に責任をもたなくてはならない。 

 メインフレームの時代は、このような問題は、すべてメーカーに任せることができた。しかし、ダウンサイジング、オープン・システムの時代は、この「組み合わせと接続」の問題を自分の責任で解決しなければならない。自ずとユーザー企業の負担も増していったのである。 

 私は、1995年まで、日本IBMに営業として勤めていたが、当時、他社製品との組み合わせは、お客様の責任であり、組合わせや保守でトラブルになるので、すべてIBM製品でそろえることを、強くお客様に勧めていた。 

 しかし、それでもお客様、特にユーザー部門は、安くて、速くて、使いやすいコンピューターとして、どんどん個別に導入。結局、システム部門も、その対応から逃れることはできず、ますます大きな負担を背負うようになっていったのである。

  そんな時期に、IBMの会長になったのが、ガースナーである。彼は、ナビスコからやってきたIBMとしては、初めての外様CEOである。「ポテトチップは、分っても、シリコン・チップなど、分るはずがない」と内部では陰口をいわれた人物である。 

 そんな、彼が言い出したことは、「他社製品の組み合わせや接続で、お客様が苦労しているなら、その問題を解決するのは当然。IBMが、それら一切の組み合わせに責任を持って対応します。」と宣言し、それを「ソリューション」と言うことにした。 ソリューションという言葉は、それ以前から使われていた言葉であるが、ここに彼なりの、新しい、そして、時代の要請にこたえた定義を持ち込んだのである。

 そして、その「ソリューション」を提供する手段として、「システム・インテグレーション」というサービス・ビジネスを始めたのである。

  自社他社を問わず、その組み合わせそのものを請け負うビジネス。つまり、ソリューションをビジネスにしたのが、システム・インテグレーションということになる。

 これは、IBM純粋主義の伝道師たるIBMの営業にとっては、実に青天の霹靂だった。しかし、結果はご存知の通り、青息吐息のIBMを超優良企業に、復活させたのである。

  クラウドの時代が、始まろうとしている。ますます、システム構築や利用の選択肢は広がり、その組合わせや接続の複雑さは、増大するだろう。 

 この現実を正しく理解し、しっかりと向き合い、ガースナーの意図した「ソリューション」を実行してくれる企業こそが、本当の「ソリューション・ベンダー」ではないだろうか。 

 あなたの付き合っているベンダーは、そういう対応をしてくれているだろうか。その点をしっかり見極め、付き合う相手を選ばれてはいかがだろうか。

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※このエントリはZDNetブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および ZDNet編集部の見解・意向を示すものではありません。

2件のコメント
  • 斎藤昌義

    イッコウさん
    コメントありがとうございました。

    「1988年当時からソリューションという言葉があったので、これは勘違いではないか」というご指摘。ちょっと説明が不十分だったかもしれません。失礼いたしました。補足させて頂きます。

    ご指摘の通り、ソリューションという言葉は、ガースナーが作り出した言葉ではなりません。1980年代、多くのIT企業が、お客様に対して、自らを差別化するための言葉として、夫々に自分なりの意味で、言い出した言葉です。まあ、自社を差別化するキャッチフレーズとして使われていました。

    例えば、あるソフトウェア・メーカーは、自社のパッケージ・ソフトウェアを称して「ソリューション」という言葉を使い、また、あるネットワーク機器メーカーは、「わが社は、ネットワーク・ソリューション・プロバイダーです。」と宣言したのです。

     このように「ソリューション」という言葉は、様々に使われ、ユーザーにいろいろと混乱を与えることになったのです。

     そのような混乱の中で、IBMは、改めて、この「ソリューション」という言葉に、「自社他社を問わずその組み合わせによる解決策」という定義を与えたのです。

     ご指摘の通り、「ソリューション」という言葉は、1980年代から今に至るまで、いろいろな意味で使われています。それらが間違っているというつもりなどありません。ただ、このIBMの示した定義は大変分りやすいし、まさにいまの時代に求められる定義ではないかと思い、紹介させていただきました。

     説明が、十分ではなく、誤解を招いてしまいましたことをお詫び申し上げますと共に、以上の通り、補足させて頂きます。

    2009年10月15日

  • イッコウ

    私がメインフレームメーカーに入社した1988年にはすでにソリューションという言葉があり、それぞれ金融・流通・製造と行った分野で使われていたのですが、勘違いされていないでしょうか?

    2009年10月15日

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